同じコンパクトカーでもフィアット500が情感に訴えるタイプだとしたら、up!は理性に問いかけるタイプ。
Bピラーあたりをピークに軽く平面絞りを利かせたボディは、プレーンで小さくとも塊感がある。室内も空気吹き出し口フタの樹脂の肉厚の薄さなど、可能なだけコスト、贅肉を削いでいる跡はあるも、決してチープではない。
後席座面は2ドアのほうがクッションが僅かにふっくらしており、それより硬めの4ドアは、より距離を走った場合を想定してのことか。鉄板に樹脂の型物を左右にビス止めしただけの構造で、床板をストンとワンタッチで落とせ高さを変えられる荷室の仕掛けも秀逸。
走りは3545mmの全長に対しホイールベースが2420mmと長いおかげで、ポロを超えゴルフに迫るイメージの、フラットでタプッ!とカドの立たない乗り味が快適。都市高速の高架の継ぎ目もストッと何なくかわす。3気筒の1リットルエンジン(75ps/9.7kgm)は全域で不快な振動がなく、動力性能は「まあ十分」。シングルクラッチの5速ASGトランスミッションは、アクセルを浅く踏んでいけばよりスムース。都心ならドアが大き過ぎない4ドアのほうが日常使いに便利そう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年より『GOLD CARトップ・ニューカー速報』の取材/執筆を皮切りにフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。