とても考えさせられた一台。外から見えないところは「ほとんど『ゴルフ』と『ジェッタ』のものを流用」(デザイナーのクリスチャン・レスマナ氏)しつつ、外側のボディパネルをオリジナルのビートルに似せて作られている。このクルマに乗って、ハンドリングが鋭いとか乗り心地が快適だとか、いわゆる試乗記的な言葉がどれだけ意味を持つのだろうか?運転した感じは、ボディが大きくなったゴルフそのもの以上でも以下でもない。頭上空間が広くなったから大きなクルマに乗っているかのような錯覚を覚えるが、優秀な1.2リッターTSIエンジンと7速DSGトランスミッションの効率的な働きはゴルフや弟分の『ポロ』そのものである。オリジナルの『ビートル』は空冷ボクサーエンジンをリアに搭載していた。それを発展させたものが『ザ・ビートル』でも先代の『ニュービートル』でもない。オリジナルの形には機能的な必然性があったが、このクルマにはない。カタチだけをセルフサンプリングしているだけだ。その点は、MINIも「チンクエチェント」も同じ。ザ・ビートルが機能面でゴルフよりも優れているところはない。違うのはカタチだけだ。クルマは機能でなく、カタチだけで選ばれても構わない時代になったと解釈したい。5つ星評価パッケージング:★★インテリア・居住性:★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★オススメ度:★★★金子浩久|モータリングライター1961年、東京生まれ。主な著書に、『10年10万キロストーリー 1〜4』 『セナと日本人』『地球自動車旅行』『ニッポン・ミニ・ストーリー』『レクサスのジレンマ』『力説自動車』(共著)など。