スバル『BRZ』とトヨタ『86』は足まわりが差別化されている。具体的にはスプリングとダンパーが異なるらしい。そして、スバルとトヨタ両社の開発者は、ともに「わずかな差」と述べていたのだが、実際にドライブすると、そのフィーリングの違いは決して小さくないように感じられた。
ざっくりいうと、BRZは86よりもフロントがやや固く、逆にリアがやや柔らかく、ハンドリングも86がオーバーステア傾向であるのに対し、BRZは徹底して弱アンダーステアという印象だ。
コーナリングでは、86はフロントの動きが大きく、ドライバーの操作によりターンインの姿勢を積極的に変えていけるという感じ。これに対しBRZは、よりステアリングにしっかりとした手応えがあり、操舵時のヨーの出方も一定している。キビキビ感があり、リアのグリップ感も高いのだ。
その意味では、86のほうがアプローチの自由度は高いが、BRZは俊敏性と安定性を併せ持ち、ライントレース性にも優れるといえるだろう。また、BRZはスバルの中では異端なクルマに違いないが、こうした走りの味付けこそ、スバル車の一員であることがヒシヒシと伝わってくる部分だと思う。
念のためにいうと、これは勝ち負けの問題ではなく、あえて両車がつくり分けられた意義そのもの。どちらにもそれぞれの良さがあり、ドライブしてとても楽しいクルマであることに違いはない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県滑川市生まれ。学習院大学卒業後、生来のクルマ好きが高じて自動車メディアの世界に身を投じ、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスへ。近年はWEB媒体を中心に活動中。「クルマ好きのプロ」として、ユーザー目線に立った視点と幅広い守備範囲を自負する。