【アウディ A6 試乗】60年代への憧憬とモダニズムが共存する…千葉匠

試乗記 輸入車
アウディ A6 新型
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現行『A4』と同様に、フロントデフを前進させたパワートレイン・レイアウト。これによりフロント・オーバーハングを短縮すると共に、前輪に対してAピラーの根元を後ろ寄りに引いているから、そのプロポーションは「ほとんどFR車」だ。それはそれで上級セダンとしてオーセンティックな魅力を醸し出すものだが…。

日本導入された新型『A6』は2.8リットルNAまたは3リットルスーパーチャージャーを積み、どちらも4WDのクワトロ(欧州の2.8リットルNAにはFFもある)。近年のクワトロの例にたがわず、イニシャルの駆動力は後輪により多く配分される(前40:後60)。フロントデフの前進配置は前後重量配分の改善ももたらしており、それを最大限に活かす駆動力配分でもある。

しかし、「ほとんどFR車」のプロポーションを頭にインプットしてから走り始めてみると、このクルマが「前輪を駆動している意義」に素朴な疑問が湧いてくる。低μ路を含めた限界領域のスタビリティ? それはわかるが、日常走行の範囲では複雑な駆動系が発するかすかなノイズがむしろ気になってしまう。

フロントマスクは先代A6の“シングルフレーム・グリル”を踏襲しつつ、ヘッドランプの位置が少し高くなった。そこに端を発するショルダーラインはBピラーあたりまで水平に延びた後、リヤに向けてゆっくりと下降。60年代FRセダンへの回帰願望を覗かせる。FFが増えたのも、ウエッジ・シェイプが流行り始めたのも、70年代以降のことだからだ。

そんなにFR車になりたいのなら前輪駆動力を切り捨てればよいのに…と思ったところで気が付いた。A4にはFFのグレードがあるからウッカリしていたけれど、今の縦置きエンジンのアウディはパワートレインも「ほとんどFRベース」。ギアボックス後端から取り出した前輪駆動力を、短いプロペラシャフトを介してフロントデフに伝えている。

パワートレインがFRベースだから、デザインがFR的なプロポーションやバランスを指向するのは当たり前。そこに自動車文化の黄金期だった60年代を思いながら、しかしクリーンで精緻な線と面が織り成すモダンなフォルムに包まれて、自動車の偉大な進化を体感する。新型A6とはそうやって乗るクルマなのかもしれない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

千葉匠│デザインジャーナリスト
1954年東京生まれ。千葉大学で工業デザインを専攻。商用車メーカーのデザイナー、カーデザイン専門誌の編集部を経て88年からフリーのデザインジャーナリスト。COTY選考委員、Auto Color Award 審査委員長、東海大学非常勤講師、AJAJ理事。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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