旧型の、あの生真面目でちょいとばかり野暮なデザインと荷物を沢山積んだら超安定する乗り味がボクは大好きだったものだから、新型のどこかリンカーンっぽいモダンなスタイルと乗用車的なユニボディ構造への変更に、いささか面食らいつつ、試乗会へと出向いた。
やはり、というべきか。ゆるさのない、引き締まった走りは、悪く言えば没個性で運転し始めてから何の感慨も浮かばず、ただただ淡々とキツい山坂道をこなしていく。かなりマトモになったじゃない? フツウのクルマだねえ、などと言ってしまうのはとても簡単で、トラックみたいだった前の感じが好きなわけだから、どうにも気分が締まらず、もどかしい。
以前なら、時間を追う毎にクルマの動きの様子が掴めてきて、“乗ってきた、乗れてきた”というちょっと誇らしい気分になったもの。そういう感情の起伏も最早なく、乗り出して半時間もすると、運転することにさえ飽いてきた。
で、そのあたりでハタと思い直すわけだ。いやあ、それって結局とってもよく出来ているからなんじゃないの、コイツ、なんかハナからずっとけっこう早いペースで峠道を走らせてきて、何の引っ掛かりも不満もなかったんだからさ、と。
とはいえ、形も含めて、だったら別にフォードじゃなくてもなあ、という気にもなったりしたわけなんだけれども…。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。