【池原照雄の単眼複眼】東日本大地震、自動車産業に第3の衝撃波

自動車 ビジネス 企業動向
トヨタ自動車は、関連メーカーを含む従業員の無事を確認(写真:1月から操業を開始したセントラル自動車宮城工場)
  • トヨタ自動車は、関連メーカーを含む従業員の無事を確認(写真:1月から操業を開始したセントラル自動車宮城工場)
  • トヨタ自動車は、関連メーカーを含む従業員の無事を確認(写真:1月から操業を開始したセントラル自動車宮城工場)
◆原油価格上昇で新興市場に異変も

東日本大地震は、自動車産業にとって2008年の金融危機、昨年来の急激かつ大幅な円高に次ぐ、第3の衝撃波となる。短期的には東北や関東地域での自動車生産に多大な影響が出る一方、中長期的には東京電力・福島第1原発1号機事故に伴う世界のエネルギー事情の悪化が想定されるからだ。

原発の信頼不安は、世界での原発立地の見直しにつながり、相対して化石燃料への依存度を高める。恐らく、週明けからは原油価格が上昇へと向かうだろう。

ハイブリッド車(HV)が先進諸国で本格普及段階に入ったといっても、自動車の脱化石燃料化は緒に就いたばかり。自動車需要を牽引する新興諸国では石油を燃料とする在来車が主流だ。原油価格の上昇が、牽引役の新興諸国での自動車市場に異変を来す懸念が膨らむ。

福島第1原発1号機の建屋の外壁が吹き飛ぶ様は、多くの犠牲者を出した今回の大津波同様に衝撃的だ。米国のスリーマイル島原発(1973年)、旧ソ連のチェルノブイリ原発(86年)の事故に次ぐ、原発史上の重大事故として記録されることになろう。


◆原発見直し機運に冷水

福島原発が、世界でもトップ級の運転実績や人材を誇る東電の発電所であるだけに、事態はより深刻となる。原発は過去2つの大事故により80年代半ばから一気に見直しが進み、脱原発や新設凍結が世界の潮流となった。

しかし、近年は新興諸国の経済発展による化石燃料の需給ひっ迫懸念や地球温暖化問題から、運転中はCO2(二酸化炭素)を排出しない原発の見直しが急速に進んでいる。

米国では昨年、約30年ぶりに新設計画が動き出した。新興諸国でも中国が当面16基もの建設を計画するなど、開発が活発化している。だが、原発の技術開発や運転実績で世界のリーダー役であった日本での深刻な事故が、そうした見直し機運に冷水を浴びせるのは必至だ。


◆従来に増して環境車開発加速を

その影響として、原油価格が今後継続的に上昇することとなれば、自動車需要への影響も避けられない。燃費性能の良い日本車や、日本メーカーが先行するHVなどの環境車の需要が高まるなどと喜んではいられない。

それ以上に、金融危機後の自動車需要回復を引っ張ってきた新興諸国での需要減退が世界の自動車産業に深刻な影響を及ぼすからだ。とりわけ日本メーカーは金融危機、円高に続く第3の衝撃波への備えを急がねばならない。

短期的には国内生産・販売への影響を軽微にするための部品産業や販売会社を含む業界あげての迅速な復興への取り組みである。中長期では、HVから燃料電池車に至るまでの環境対応車の開発を従来に増して加速させることだろう。
《池原照雄》

編集部おすすめのニュース

特集