超低価格車のナノでお馴染みのインドのタタが、今回ジュネーブで『ピクセル(Pixel)』というコンセプトカーを披露した。垂直に立つように開くドアに目を惹かれて近づいてみると、これがなかなか面白い。
ピクセルは『ナノ』のプラットフォームをベースに、欧州向けシティカーのスタディとして開発された。前輪の転舵角を拡大し、さらに旋回内側の後輪を逆回転させることで、最小回転半径2.6mを実現。これなら欧州の狭い裏道でも縦列駐車やUターンができる。もうひとつの特徴は操作系のインターフェイスで、『iPad』や『Galaxy Tab』のようなタブレット端末をインパネにセットして、エアコンやオーディオなどを画面タッチで操作することを提案している。
デザインを手掛けたのは、欧州テクニカルセンターでデザインを統括するプラタップ・ボーズ氏。タタは本拠地のインドに加えて、イギリス、イタリア、韓国にデザインスタジオを持っている。イギリスは欧州テクニカルセンターの一部門。イタリアでは、かつてデザイン開発会社のIDEAでタタのプロジェクトにも参画していたジュスティン・ノレックが設立したデザイン会社に80%出資し、タタの傘下に収めた。韓国のスタジオは大宇の商用車部門を買収して設立したものだ。
今回のピクセルはイギリスでデザインし、エンジニアリングと製作はイタリアで行った。イギリス駐在のボーズ氏は、タタ・グループのジャガー/ランドローバーとも「密接にコンタクトしている」と告げる。「タタはインドの自動車メーカー」というイメージは、もはや古いのかもしれない。欧州向けシティカーを提案するピクセルは、グローバルに発展するタタの将来ビジョンの一端を示唆しているのだ。