【ホンダ CR-Z 開発者対談その2】「乗って、楽しく」をわかりやすく

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鳥飼氏と西川氏
  • 鳥飼氏と西川氏
  • 鳥飼氏と西川氏。徳島県鳴門市で行われたCR-Z試乗会場にて
  • 「まだまだやり足らない、まだまだできることがある」
  • 「小さな操作できっちり動かす」をコンセプトに日常の使い勝手にも注力したという
  • CR-Z
  • 運転して自然と顔がにやけてくる、そこに運転する楽しさが凝縮される
  • CR-Zの“走りの性能”を主に担当した、四輪R&Dセンター第1商品開発室主任研究員の鳥飼輝一氏
  • CR-Zを運転する西川氏。思わずニンマリ

コンセプトは「小さな操作できっちり動かす」

西川淳氏(モータージャーナリスト、以下西川):MTを操作するという楽しさで、目標にしたのはどんなクルマのMTだったのですか?

鳥飼輝一氏(CR-Z開発担当、以下鳥飼):狙ったのは、4ドアの『シビックタイプR』ですね。あれはホンダの中でも特に評判がいい。技術的にみれば構造の問題もあって、できているところとできていないところがありますが、かなりいい線いっていると思います。『S2000』みたいなフィーリングもいいんですけれど、さすがにパッケージングも違うし、あそこまでダイレクトにはできない。

西川:個人的にはもう少し精密に、ガッチリ入る感触が欲しかった。

鳥飼:そういう意見もありますね。ただ、CR-Zに関していえば、基本的には小さな操作でクルマをきっちり動かすということがコンセプトにありました。だからステアリングもクイックですし、シフトストロークも短くてスッと入る。一方で、日常の使い勝手を悪くしたくないので、操舵力はスポーツにしてもそれほど重くはないはずですし、シフトフィールもあまり神経を使わずに操作できるようにしています。軽やかすぎるという方もおられるでしょう。

西川:まずはみんなにMTの存在を思い出してもらわなきゃいけませんしね(笑)。AT限定免許なんて取ってたら、もったいない。

鳥飼:CR-Zからいろんな方向に広がっていけるといいですね。リアルスポーツもあるだろうし、さらなる正常進化だってさせたい。そうやってまた、文化が生まれてくる。そうなってくれれば本当やったかいがあったというものです。

西川:これが最後じゃない。

鳥飼:ええ。スティーブ・ジョブスも次回作が最高傑作だ、ってよく言うじゃないですか。私自身、まだまだやり足らないこともある。このクルマの発展性を考えると、まだまだできることがあると思っています。

西川:ハイブリッドシステムを抜きにしても、クルマとしてよくできていると思います。

鳥飼:動力性能で言えば、もちろん低速トルクはハイブリッドシステムでカバーしているわけですが、ハンドリングやステアリングフィールというあたりはクルマの基本性能じゃないですか。今、クルマ本来の楽しさを体感できるというと高価なスポーツカーしかないわけですから、手の届く範囲で楽しんでもらうために、まずしっかりと作り込んだつもりです。

◆クルマの楽しさは運転中の“ニンマリ”に凝縮される

西川:“楽しい”っていったい何なのでしょうね。

鳥飼:意のままに操れること、だと思います。そのことを開発者みんなに実感してもらおうと、最初に新型『MINI』を買ってもらいました。あのクイックな感じって、すごく分かりやすいじゃないですか。決して同じものを作りたかったわけじゃなく、ああいう乗れば分かる楽しさを実感してもらったうえで、今度はハイブリッドでインテリジェントなクルマとして、乗って楽しいってことをすぐに分かってもらえるようなCR-Zにしましょうよ、と。

西川:ほかには、どんなことを共有されたのですか?

鳥飼:ライトウェイトスポーツとは言いづらい重さなんですけれど、コンパクトスポーツの基本ってライトウェイトでしょう?その良さを実感してもらうためにロータス『エリーゼ』を買いました。これもみんなに乗せてみると、軽いということの大切さや有り難みがとてもよく分かってもらえるわけです。そうすると、担当のパートで1グラムでも軽くしようと思ってくれる。

西川:ひとりでクルマは作れませんからね。

鳥飼:もちろん、誰かが強力に発信しなければできないとも言えるんですが、やってくれる人にコンセプトや考え方をよく分かってもらった方がスムースですよね。今回は、そういう意味ではデザインから走りまで、みんな自発的によくやってくれましたから、まとめる方としてはラクだったかも知れません。

西川:クルマの楽しさって、いっぱいあるんですけれど、曰く言い難いものでもあります。表現が、実はとても難しい。だからボクらもスポーツカーという言葉に頼ってしまいがちです。

鳥飼:そうですね。でも今回、試乗会をここ(徳島県鳴門市)で開いて本当に良かったと思っています。

西川:というと・・・?

鳥飼:みなさんが来られる前に、コースを試走してみたんです。鳴門スカイラインに入って、しばらく走っていると、自然に顔がにやけてきたというか、嬉しくてたまらなくなったというか。ゆっくり走っていてもそうなるんですね。

西川:ああ、分かります。クルマの楽しさって、結局、そういうふとしたときの“ニンマリ”に凝縮されますよね。それって本当に言葉にしづらいというか、伝えづらいというか。でも、よく分かりますよ。それが結局、買った満足度になるのでしょうね。それにしても、素材として面白いクルマに仕上がりました。これからのアイデアもいろいろあるんじゃないですか?

鳥飼:そりゃもう、いっぱいありますよ。さっきも言いましたけれど、2万台売れた暁には正常進化も含めてやりたいことが沢山ある。今はまわりの環境や技術の面で、できてないところもありますが、いろいろアイデアを溜め込んでいる最中です。

西川:今もう8千台近くでしょう?大いに期待できますねえ。楽しみにしています。

《西川淳》

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