新型『アルト』でまず評価すべきは、ノンターボでも動力性能的にほぼ不満がなくなったという点だろう。
ターボであればもはや小型車に見劣りしない昨今の軽自動車だが、アルトのような軽量ボディと新型CVTをもってすれば、NAでもよほど速く走ろうとしない限り不満がない。特に動き出しや巡航中の力感は充分。乗り心地や操縦安定性も申し分なく、さすがワゴンRのプラットフォームを使うだけのことはある。軽は本当に素晴らしくなった。
とはいえアクセルにいくら力を込めても力強さはなく、アクセル全開時は「そんな走りをするな」とばかりにうるさい。その意味ではノイズの高まりが大人しく走るための装置になっているとも言える。自然、アクセルを煽らない運転となり、エコ時代の昨今としては、結果として燃費に良いというとても理にかなった乗り方だ。
そういった領域でちょうど良い走りを提供しているアルトは、今の時代の乗り物としてもっと高く評価されるべきだろう。そうした乗り方であれば燃費はハイブリッド並みで、価格は半分程度なのだから。
ただ残念なのは、最上級グレード以外だといきなりチルトステアリングやシートリフター等が無くなってしまう点。また一部のグレードではABSがいまだにオプションであり、バンになるとオプションですら用意されない。本当は商用で酷使されるバンにこそ標準装備して欲しいものだ。
そして残る課題は、クルマのヒエラルキーが崩壊しつつある昨今だからこそ、軽自動車のイメージを刷新する「趣味がいい」「カッコいい」といった新しい軽の価値観の提示だろう。スズキとVWが資本提携した今、まずはVWブランドのカッコいい軽などを出してみたらどうだろうか。それこそ「国民車」として大ヒットしそうな気がする。