営業畑の人たちからは、「こんなにデザインに凝らなくていいからもっと安く作ってくれ」という声もあったという。
それほど新型『アルト』のデザインはレベルが高い。サイドパネルが平板なのを除けば、欧州の小型車にも負けていないと思う。とくに丸基調でベージュ系のインテリアは、シンプルながら表情があり、愛着がわくグッドデザインだ。
でもスズキらしいソロバン勘定はメカでしっかり実践している。5ナンバーと4ナンバーでシャシーが同じなのだ。つまり最大積載量の200kgを積んだ状態でチューニングしている。だからハンドリングはアンダー強め。80扁平13インチのタイヤも共用だから、ちょっとペースを上げると外へふくらみたがる。
ただし軽量ボディに副変速機つきCVTのおかげで加速は軽快で、乗り心地はしっかり乗用車レベル。なによりデザインがいいから、乗りながら「クルマってこれでいいじゃん」と思ってしまったのも事実。自分が地方在住の一般人だったら、愛車候補になっていたかもしれない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
森口将之|モータージャーナリスト
試乗会以外でヨーロッパに足を運ぶことも多く、自動車以外を含めた欧州の交通事情にも精通している。雑誌、インターネット、ラジオなどさまざまなメディアで活動中。著書に『クルマ社会のリ・デザイン』(共著)、『パリ流 環境社会への挑戦』など。