バリエーション拡大の一途を辿り、もはやその機能性の高さ&広がりを乗用車の側から考えた場合に、はたしてこのまま“軽”のくくりの中で優遇していていいものかどうか、と考え込んでしまう近頃のKカー。背の高いモデルが主流をなす中で、基本のセダン系をどうしていくかは、いろんな意味で軽自動車の今後を占うものになるはずだ。
言ってみれば『アルト』は、Kカーの原点である。だからこそ、シンプルさと燃費を追求することで、モダンKカーの課題をズバリ付いてきた。その結果判断は深いテストに任せるとして、コンセプトはいいと思う。
試乗会のあった東京ディズニーランド周辺は、道路環境もよく、よくできたコンパクトカーを試すにはなかなか好条件(運動性能自慢のクルマにとって)。走り出しの充足度と中高速域での安定した走りはリッターカー並で文句ナシだったけれど、問題は(『ワゴンR』同様に)低速域にあった。
市街地での低速域では、妙に節くれ立った走りである。こまかな振動も多く、落ち着いた気分で走れない。中高速域でのスカッとした乗り味とは全く別ものになってしまう。忙しい主婦は、そんな気分でクルマに乗っても仕方ない、というわけだろうか……。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。