新型VW『ポロ』はいたってベーシックで、よくできたコンパクトカーだが、欧州や日本のBセグのライバル車に対して、何か圧倒的なアドバンテージを持っているわけではないと思う。
これが『ゴルフ』であれば、クラスのベンチマークに相応しい完成度や先進性がいろいろな部分に見て取れるのだが、ポロはそれほどでもない。走りはそこそこだし、静粛性はむしろあまりよろしくない。
それでもこのクルマは、「欲しい!」と思わせる力を持っている。それは、VWブランドへの信頼感という強みも大前提にあるが、その上、ゴルフ似のフロントマスク、ボディパネルの造形、インテリアの質感、ダブルフォールディングが可能となった後席などにより、訴求力が確実に上がったからだ。
さらに、クラス初となる「DSG」デュアルクラッチトランスミッションが搭載されたので、これを味わわんがために、このクルマを買うというのもアリだろう。けっしてDSGが万能とはいわないが、扱いやすさはまずまずだ。
また、同セグメントの日本車がまだ立ち遅れている安全装備について、ESPや6エアバッグなどがそつなく標準装備されているところもよい。
「203万円」という価格は、従来モデルから据え置かれたというよりも、実質的な大幅値下げに相当するといえる。ましてやエコカー購入補助金の対象だし。これだけのバリューがこの価格で提供されることを素直に歓迎しようじゃないか。
ただし、エンジンパワーは物足りない。これでも十分と確信した人は即決してもいいだろうが、筆者は後に控えたモデルのほうが気になる。2010年に発売という1.2リットル「TSI」搭載車や、どんな仕様になるのか興味津々のGTIなどが、どういうクルマかを確認してからのほうが、最終的にどれを選ぶとしても、後悔せずに済むんじゃないかな。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県生まれ。学習院大学卒業後、自動車メディアの世界へ。自動車情報ビデオマガジン、自動車専門誌の記者を経て、フリーランスとして活動を開始。最新モデルからヒストリックカー、カスタマイズ事情からモータースポーツ、軽自動車から輸入高級車まで、幅広い守備範囲を自負する。現在は WEB媒体を中心に執筆中。「プロのクルマ好き」とし ての見地から、読者にとって役に立つ情報を提供できるよう心がけている。