【ドイツ EV 取材】電気自動車 MINI E に乗る…アクセルオフで強制回生

エコカー EV
ベルリンで実証実験が行われているMINI E
  • ベルリンで実証実験が行われているMINI E
  • ベルリンの街を走るMINI E
  • Vattenfall社が開発した急速充電器。この実験期間中、ベルリン市内に50箇所以上の充電器が設置される見通し
  • 給油口の部分に充電器のソケットが配置される
  • グリルにはコンセントの形を模したエンブレムが。
  • サイドターンシグナルの横に書かれた数字はシリアル番号。米国での実験車両500台は1から500、ベルリンでの実験車両は500から550の数字が割り当てられるという。
  • BMWとMINI Eを共同開発したVattenfall社の欧州法人本社。
  • BMWとともにMINI Eの開発に当たったVattenfall社のイノベーションマネージャー、Clemens Fischer氏。MINI Eでは後席部分にバッテリーが搭載されているため、2人乗りだ。

ベルリンで50台のMINI Eをモニター貸与

BMWは、ベルリンで『MINI』ベースの電気自動車(EV)『MINI E』をモニターに50台貸与する実証実験を6月からおこなっている。BMWと組んで充電ステーションの開発と設置を受け持つのは、スウェーデンの電力会社Vattenfall(ヴァッテンファル)だ。同社の欧州法人のVattenfall Europe AGは、2010年までの期限付きでBMWと契約を結びMINI Eと充電ステーションを共同で開発。ドイツ環境省の助成金を受けて実証実験に当たっている。今回、ベルリンのVattenfall Europe AGの本社を取材。MINI Eに同乗できる機会を得られたので、インプレッションをお届けしよう。

◆加速性能はクーパー以上

実証実験のモニターに貸し出されているMINI Eのアウトラインを紹介しよう。ボディサイズは標準車のMINIと同寸の全長3700mm・全幅1685mm。車重は1465kgで、MINI クーパーの6MT仕様(1170kg)に比べて300kg近くも重くなっている。後部座席は取り払われ、そのかわりに大容量35KWhのリチウムイオンバッテリーが搭載される。

動力性能は、最大出力204PS/最大トルク220Nmの高出力モーターを搭載、馬力の上では「クーパーS」(175PS)を上回る。0-100km/h加速は8.5秒で、クーパーSの7.3秒には及ばないが、クーパーの9.1秒を凌ぐ俊足だ。最高速はリミッターにより153km/hに制限される。充電時間は、50A/230Vの急速充電で2.4時間、家庭用コンセントからの通常充電230V/16Aでは10.1時間。航続距離は最大250kmと、電気自動車としては非常に長い部類に入る。

BMWとともにMINI Eの開発に当たったVattenfall社のイノベーションマネージャー、Clemens Fischer氏は「MINI Eでは長距離の利用を考慮して、35kWhという大容量バッテリーを搭載した。エアコンONでも200km弱の走行が可能だ」とのことだ。

◆アクセルをオフでブレーキ

計器回りはタコメーター部分がチャージ容量計になっているほか、インパネ中央の速度計内にモーターの出力レベルを表示するパワーメーターが追加されている程度で、ベース車両から大きな変更はない。シフトポジションはP・R・N・Dとシンプルだ。

50名のモニターには、クレジットカード情報とヒモづけられたICカードを配布する。ICカードは急速充電器の開閉キーを兼ねており、カードリーダーにかざすと充電口が開く仕組みになっている。このICカードにはいわゆるインテリジェントキー的な機能はなく、ドアの開閉やシステムの起動には通常のキーを利用する。

普通のクルマと同じようにキーを差し、イグニッションを捻ってシステムを起動。もちろんエンジン音はない。シフトレバーをDに入れ、アクセルと踏めばスルスルと走り出す。204psを発生するモーターはさすがに力強い。ごく低速からでも一気に加速する感覚はEVならでは。他のEVと同様、エンジン音がないので走行中はモーターの駆動音がかすかに聞こえるくらいで非常に静かだ。ベース車であるMINIは、現行モデルとなって遮音性がかなり向上していることもあり、ロードノイズも気にならない。

MINI E最大の特徴は、減速時の回生だ。通常のクルマとかなり異なるペダル操作が必要で、アクセルペダルから足を離すと惰性走行はせず、エネルギー回生をともなうブレーキが自動的にかかる。この制動力はかなり強く、停止直前までブレーキがかかる。一般的なクルマと同様フットブレーキもあるが、街乗りでは完全に止まるために利用する程度。Fischer氏によれば「積極的に回生することで、電池の消耗を可能な限り抑えるねらいがある」という。

現状の課題について、Fischer氏は「本格的な市販に向けては、4人乗れるだけの居住スペースを作ることが必要。その意味でバッテリーの配置を工夫して4人乗りを実現した三菱の『i-MiEV』はパッケージング的に評価できる」と述べる。

◆加速する充電ステーション建設

なお、Vattenfall Europe AGとBMWの契約は2010年までとのことで、それ以降は他の自動車メーカーとのアライアンスも視野に入れているという。EVの普及をビジネスチャンスと見る電力会社は多く、フランスのEDFやドイツのRWEなども複数の自動車メーカーと組んで実証実験に参画している。それら実験の多くは、政府の支援のもとでおこなわれている。

日本では、ガソリンスタンドや電力会社、道路事業者など民間事業者による設置がほとんど。政府は具体的な充電ステーションの設置目標を立てていない。i-MiEVの販売本格化や来年に控える日産『リーフ』の発売など、EVの大幅増加が見込まれるだけに充電ステーションの拡充は急務だ。

《北島友和》

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