イグニッションキーを回すとシステムが立ち上がる。シフトレバーをDレンジに入れて走り出す。これは普通のガソリン車と何ら変わりはない。電気自動車に乗ることの違和感など、何も感じることなく自然にクルマを走らせることができる。
でも、逆にいえばそこに少しばかり不満がある。今どきガソリン車でもエンジンスタートはプッシュボタン式が増えているし、シフトレバーもモーメンタリー式が増えている。『i-MiEV』もこのあたりで電気自動車ならではの儀式を演出して欲しいところだった。
でも走らせると凄く良い。試乗会場まで乗って行った私の『iターボ』よりもずっと静かで力強い加速を見せる。規格は軽自動車だが、圧倒的なトルク性能によってガソリンの軽自動車とは異なる次元の走りを示す。
切れ目のない加速がどこまでも伸びていくような印象で、バッテリーによって200kgも重量が増えたとは思えないような加速が得られる。しかもエンジン音が入ってこないのでとても静かだ。このほか低い位置に重い電池を搭載することで安定感の高い走りを示すなど、i-MiEVの走りはガソリン車を大きく超えている。
航続距離に制約があるので当面は街乗り中心の使い方になるが、夜間に充電して昼間の街乗りに使うような乗り方なら何の問題もない。
残された大きな問題は価格だ。いくら何でも軽自動車に459万9000円を払える人はいないし、お勧めもできない。当面は補助金が受けられるにしても、価格の面でi-MiEVにはまだリアリティがない。電池のコストダウンを強力に進めて欲しい。
●5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。