【ドイツ ミドルクラスセダン徹底比較】装備で見る5シリーズ、A6、そしてEクラス

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【ドイツ ミドルクラスセダン徹底比較】装備で見る5シリーズ、A6、そしてEクラス
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ドイツ製ミドルクラスセダンの比較から見えてくるのは、「駆けぬける歓び」というブランドフィロソフィーに象徴される『5シリーズ』のブレのなさだ。エンジンやシャシーといった「素材」にこだわり、磨き抜くクルマ作りは、装備や車種設定の分野でも当然のように反復されている。 

◆Eクラスはダイレクトセレクト、5シリーズはフロアシフト

新型『Eクラス』を語る上で欠かせないのが、新しい操作系や装備に関する項目だ。まず運転操作に直結するものでは、ステアリングコラム右側の電子制御シフトレバー「ダイレクトセレクト」が挙げられる。この言わば「21世紀型コラムシフト」は現行『Sクラス』(2005年)と同じもので、レバー先端をプッシュすれば「P」(パーキング)、上げると「R」(リバース)、下げると「D」(ドライブ)となる。加えてステアリングにはパドルシフトが装備される。

一方、BMWはこれと似たセレクターレバーを早くも2001年に『7シリーズ』に採用しているが、他のモデルには今のところ展開していない。5シリーズに関しても2007年のマイナーチェンジでレバーの形状や操作スイッチを一新したが、位置そのものはフロアのままだ。あくまで5シリーズはスポーツセダンであるというBMWのメッセージがここからも読み取れる。

なお現在、欧州の高級車ではパーキングブレーキが電子制御化される方向にあるが、新型Eクラスと5シリーズのパーキングブレーキは従来通りの機械式となっている。すなわち新型Eクラスは足で踏んでオン、手で引いて解除というもので、5シリーズはセンターコンソールにハンドブレーキを配したタイプだ。『A6』だけが電子制御パーキングブレーキを採用している。

◆ギア比可変ステアリングはEクラスと5シリーズに標準

走行状況に応じてパワーアシスト量を調整する「パラメーターステアリング」は先に『Cクラス』等で採用されているもの。さらに新型Eクラスではステアリング舵角に応じてギア比を変化させる「ダイレクトステアリング」を全車標準としている。

これは言うまでもなく、BMWが2003年に5シリーズで採用した「アクティブステアリング」(こちらも全車標準)で先行したもの。いずれも高い直進安定性、シャープなハンドリング、低速時における取り回しの良さの両立を狙ったステアリングシステムだ。挙動が乱れた際にはカウンターステア制御をおこなうなど、安全装備としての機能を併せ持つことも特徴だ。

◆新型Eクラスの運転支援システム「アテンションアシスト」

新型Eクラスには様々な運転支援システムが採用されている。注目の装備はドライバーの注意力低下を監視する「アテンションアシスト」だ。

この手の装備としてはトヨタが実用化している「ドライバーモニターカメラ」がよく知られる。これはドライバーの顔を赤外線カメラで捉え、その画像解析によって居眠りやよそ見を検知するものだ。

それに対してEクラスの「アテンションアシスト」はステアリング操作などからドライバーの運転特性を解析し、居眠りなどに特有の操作を読み取って注意力の低下を検知するというもの。これは画像解析によるものに比べて、より早い段階での警告が可能という。ドライバーへの注意の促し方は「ピー」という電子音だが、メルセデス・ベンツの説明員によれば「これだけでも十分にドキッとする」そうだ。これは新型Eクラスに全車標準となっている。

さらにオプションとなるが、新型Eクラスには走行中に居眠りなどで車線を逸脱しそうになると警告する「レーンキーピングアシスト」も用意されている。これはフロントウインドウに設置されたカメラで走行車線を読み取り、車線を逸脱しそうになるとステアリングホイールのスポーク部に組み込んだバイブレーターを振動させてドライバーに警告するものだ。振動の程度は、ちょうど携帯電話のバイブレーターを想像してもらえばいいだろう。

一方、5シリーズにも同じくバイブレーターをステアリングに内蔵した車線逸脱警告システムが「レーンディパーチャーウォーニング」の名でオプション設定されている。またアウディA6にも同様の機能を持った「アウディレーンアシスト」が2009年以降、マイナーチェンジモデルからセットオプションで用意されている。

◆ミリ波レーダーを使ったクルーズコントロール

運転支援系の先端装備を今や代表するのが、ミリ波レーダーによる車間調整機能を備えたクルーズコントロールだろう。メルセデス・ベンツでは「ディストロニック」の名称で知られるが、新型Eクラスでは電波法をクリアする関係で日本への導入はしばらく遅れる模様だ。

一方、5シリーズにはその一種である「ACC(アクティブクルーズコントロール)」が全グレードにオプション設定されており、またアウディA6にも「ACC(アダプティブクルーズコントロール)」の名称で用意されている。いずれにしても輸入車の場合は、設定速度が国内の自主規制(おおよそ115km/hまで)に縛られず、例えばアウディA6の場合は200km/hまでの速度設定が可能だ。

なお、5シリーズに標準装備される通常のクルーズコントロールはブレーキ制御機能を備えるため、従来のクルーズコントロールに比べればより使いやすいものとなっている。

◆今やAFSは当然。新型Eクラスはハイ/ロー切替を自動化

夜間視認性の確保は安全に直結するものだけに、ライティングシステムはいずれも力の入った内容となっている。

新型Eクラスは新機軸としてハイビームの上下照射範囲を自動で調整する「アダプティブハイビームアシスト」(全車標準)を採用している。これはフロントウインドウ上部に配置したマルチファンクションカメラで対向車や先行車を検知し、ハイビーム側の照射範囲を自動でシームレスに可変するというものだ。対向車もしくは近くに先行車がいない場合には光軸を上げ、逆に接近してくる場合には相手がまぶしくないように光軸を徐々に下げる。その照射範囲は65 - 300mと、かなり遠方まで効くのが特徴だ。

なおEクラスのヘッドライトは、ロービームとハイビームを一つのキセノンライトで切り替えるバイキセノンタイプ。もちろん横方向の光軸可変を行う通常のAFS機能も備えている。

一方、5シリーズとA6も光軸を左右に可変する「アダプティブヘッドライト」は全車に標準装備している。なお5シリーズのヘッドライトは、ロービームがキセノン、ハイビームがハロゲンだが、ハイビーム時にはキセノンのロービームも上向きに配光される。

またEクラス、5シリーズ、A6のいずれも、電子制御式のコーナリングライトを標準装備する。これはステアリング操作やウインカーに連動して、主に低速時(だいたい40km/h以下)にコーナー内側を照らすものだ。

◆夜間視認装置「ナイトビジョン」「ナイトビューアシストプラス」

さらに高度なライティングシステムとしては、Eクラス、5シリーズ共に、赤外線を使った夜間視認装置をオプション設定している。

新型Eクラスのものは「ナイトビューアシストプラス」(25万円のオプション)と呼ばれるシステム。これはヘッドライトの光を赤外線フィルターに通して前方約70 - 90mの範囲に照射し、その反射光を赤外線カメラで捉えて7インチディスプレイに表示するものだ。またさらに歩行者を画像認識技術によって検知し、モニター内に強調表示する機能も備えている。ちなみに近赤外線を使う点、そして歩行者の強調表示をする点では、トヨタが現行『クラウンハイブリッド』(2008年)や『クラウンマジェスタ』(2009年)に採用した最新型の「ナイトビュー」に近い。

対する5シリーズの「BMWナイトビジョン」(27万5000円のオプション)は遠赤外線カメラ、すなわち温度感知カメラを使い、自ら熱を放射する対象を捉えるため、最大300m先の歩行者や動物をモニター内に表示することが可能だ。ちなみにこれは熱感知型という点で、GM(キャデラック)の「ナイトビジョン」やホンダ『レジェンド』(2004年)の「インテリジェントナイトビジョン」に近いものと言える。

◆ナビゲーションシステムは独自の操作UIを使用

新型Eクラスは40GBのハードディスクを備えたHDDナビを全車に標準装備する。その操作はオーディオ・ビジュアル関係を含めて、センターコンソールにある「COMANDコントローラー」を使って行う。

一方、5シリーズのHDDナビゲーションシステムは、おなじみ「iDrive」コントローラーを使って操作する。2007年のマイナーチェンジでは、メニューガイドの方法やグラフィックの改良、「お気に入りボタン」の新設などが行われ、さらに直感的な操作が行えるようになった。表示には8.8インチの大型TFTワイドモニターを用いるが、さらに車速やナビゲーション情報をフロントガラスに表示するヘッドアップディスプレイもオプションで用意されている。

またアウディA6のナビゲーションシステムはDVDタイプだが、性能的にはHDDに劣らない最新タイプ。車両設定等を含めて操作は『MMI』(マルチメディアインターフェイス)と呼ばれるインターフェイスで行う。

◆トランク:容量は十分でトランクスルーも可能。5シリーズとA6にはワゴンも

トランク容量はEクラスセダンの場合、スペアタイヤを標準で備えて531リットル。ゴルフバッグが4セット載るように、形状も工夫されている。

一方、全車ランフラットタイヤ(スペアタイヤ非装備)の5シリーズは540リットルと少し大きめ。さらにトランクの広さで定評のあるアウディA6(スペアタイヤレスでパンク修理キットを搭載)はこの中でトップの546リットルを誇る。とはいえいずれのモデルも容量は十分で、さらに後席の背もたれを倒すことによるトランクスルーも可能だ。

なお、5シリーズの「ツーリング」なら後席の背もたれを倒すことで最大1650リットルまで拡大が可能。A6の「アバント」なら最大1660リットルだ。この中では今のところ新型Eクラスだけステーションワゴンモデルがないため、その登場が待たれるところだ。

◆新型Eクラスは歩行者保護へ一歩踏み込む

パッシブセーフティ装備は各車いずれも最高水準の内容となっている。例えばエアバッグに関しては、Eクラスが運転席ニーエアバッグを含む計9個、5シリーズとA6が計8個を装備。またクラッシュの際にハザードを点滅させる機能やドアロックの自動解除といった機能も、おおむね共通する部分だ。

なお、新型Eクラスは歩行者保護対策としてアクティブボンネットをメルセデス・ベンツとして初めて採用している。これは歩行者の衝撃を検知すると、瞬時にボンネットをバネ仕掛けで50mmほど跳ね上げ、エンジンとの間隔をあけて歩行者の衝撃を和らげるものだ。

◆比較を終えて…各車の本質が見えてくる

ここでは装備やラインナップという点から、3台のドイツ製ミドルクラスセダンを比較してきたわけだが、そこからも各車の本質のようなものが見えてくる。

例えば新型Eクラスはさすがにブランニューモデルらしく最先端の装備を投入することで快適性や安全性を確保しようという、高級車の王道とも言うべきクルマ作りが感じられる。またA6では、新型エンジンの投入に代表される旺盛な技術開発力が印象的だ。もちろんクワトロをはじめとする全天候型オンロードカーという提案にも強い説得力がある。

一方で5シリーズから受けるのは「駆けぬける歓び」というブランドフィロソフィーに象徴されるブレのなさだ。エンジンやシャシーといった「素材」にこだわり、磨き抜くクルマ作りは、装備や車種設定の分野でも当然のように反復されている。時代を経ても変わらないことで、いつの時代も新鮮な感動を呼び覚ます。その独自のエンジニアリングは、5シリーズのどの部分を切っても存在すると言えるだろう。

《丹羽圭@DAYS》

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