3 | テクノロジーの自信がデザインに現れる |
世界で活躍している日本のフアッションデザイナーの多くは、革新的なテイストで、創造的な仕事をしているアーティストなどを魅了している。他方、伝統的な金持ちは、確立されたブランド、或いは実績のあるデザイナーのテイストを好む傾向にある。
革新は強烈なインパクトを身上としながら、短期間のうちに限られた世界を動かして行くのに対して、保守は長い期間を掛けた中身の濃さを武器に、本流として世界を席巻する。このように、ファッションにおけるラグジュアリーの領域でも、革新と保守との両極が相互に影響しあって、新たな創造がなされている。
そう考えると、新型7シリーズから始まるデザインの熟成路線においては、デザインに先立って、保守本流に相応しい信頼される独自のテクノロジーの存在が求められる。確かなテクノロジーの裏づけがあって、始めてデザインに説得性が生まれることになるからだ。
換言すれば、BMWのハイレベルなテクノロジーの自信がデザインに現されてこそ、BMWのデザインが認められることになる。新型7シリーズのテクノロジーが、一貫性を持った提案を積み重ねていくにしたがって、信頼されるブランドとしての位置づけが確実なものになっていくことになるのだ。
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筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』をこのほど上梓した。