アウディ『A6』がマイナーチェンジでV8をなくし、過給機付きの3リットルV6エンジン搭載車をトップモデルとして据えたことに驚いた。これはひたすら拡大指向で進んできたプレミアムカー界では異例のアプローチである。
それでも、このところアウディは軒並み変更時に従来比20%近くの燃費向上を達成しているし、それも好調な販売の一因になっているはず。この大胆な手法はライバルにも波及するかもしれない。
また、モデル末期とはいえ、まさか月販台数でA6がBMW『5シリーズ』を上回ることはないだろうと思っていたが、2008年の一時期、ついにそれをやったと聞いて驚いた。これはひとえに、ブランド力の上昇と、実車の商品力が結実したことの表れといえるだろう。
前記のトップモデルのエンジンは、3リットルV6直噴のスーパーチャージャー付きとなったわけだが、これで充分。とても力強く、トルクの出方が素直で、ピックアップもよく扱いやすい。V8と同等とはいかないが、音質面での高級感もある。
さらにフットワークについて、初期モデルよりも乗り心地がよくなっている。従来あった細かな上下動が払拭され、しなやかでフラットな感覚が増して、上質感が向上していた。これもまた大きな進化である。
欲をいうと、A6はアウディならではの「味」というべき感覚が薄い。『Eクラス』や『5リシーズ』が少なからずそれを持ち合わせているのに対し、A6はやや薄味かと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
ビデオマガジン『ベストモータリング』の制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスに転身。新車から中古車、カスタマイズ事情からモータースポーツ、軽自動車から輸入高級車まで、幅広い守備範囲を誇る。「プロのクルマ好き!」を自負し、常にユーザー目線に立った執筆を心がけている。