【神尾寿のアンプラグド 試乗編】ホンダの良心が詰まった…オデッセイ

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2008-2009 日本カー・オブ・ザ・イヤーにおいて、トヨタ『iQ』と並んで筆者が一押ししたクルマがある。本田技術研究所(ホンダ)の新型『オデッセイ』だ。筆者はこのクルマに、10ベストカー選考で1票を投じ、最終選考でも特別賞「MOST ADVANCED TECHNOLOGY」として推した。

クルマのコンセプトとしては、特別賞 BEST VALUEを獲得した『フリード』の方が、確かにエポックメイキングなのかもしれないが、筆者はオデッセイにホンダの良心のようなものを感じたのだ。

そこで今回のアンプラグド試乗編では、オデッセイの試乗レポートから、その魅力や可能性について述べたいと思う。


◆走りの上質感・新しさはノーマルグレードにあり

周知のとおり、ホンダのオデッセイといえば乗用車ライクなミニバンの草分けであり、このセグメントの覇者だ。初代から先代である3代目オデッセイまでホンダを支えるヒット作となり、「走りが楽しめるミニバン」という新しい価値を生み出した。特に「Absolute(アブソルート)」は、ミニバンでもスポーツカーのような雰囲気で走れるため、オデッセイのスポーティなイメージを高めるのに役立っている。

4代目オデッセイは、3代目で構築した低床・低重心コンセプトを踏襲し、スポーティでパーソナルなイメージと、都市部での使い勝手のよさを訴求ポイントにしている。先代からキープコンセプトを貫く一方で、Aピラーのスリム化による前方視認性の向上や、後席のV字型配置による視界確保など居住性の改良など、細部までじっくりと熟成させたのが、今回の新型オデッセイと言える。

しかし、何といっても進化したのは「走り」の性能だと思う。

だが、筆者が評価したのは、Absoluteのスポーティで力強い走りの方ではない。確かにAbsoluteの走りは、反応のよいアクセルレスポンスや、回転数が高まるほどに躍動感がでてくるエンジン音など、ホンダファンやスポーツカー好きならば“そそられる”要素が満載だった。しかし、その一方で、スポーツカーを意識したAbsoluteの味付けは少し演出過剰であり、万人向けのコンセプトではないのも事実だろう。

筆者がとても好印象を持ち、「すばらしい」と膝を打ったのは、2.4L i-VTECエンジンにCVTが組み合わされたノーマルグレードの方である。こちらはDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)とCVTの協調制御がとても滑らかで、ナチュラルな感覚で乗れる。

さらにこのノーマルグレードには、特筆すべき機能がある。省燃費運転支援システム「ECON」だ。これはエンジンとCVT、DBWの動作を協調制御し、ドライビングフィールを損なわずに燃料消費のムダを抑える働きをするものだ。新型オデッセイでは、この協調制御プログラムが先代から大きく改修されて、実用燃費向上効果が引き上げられただけでなく、ドライバーが受ける印象が大きく改善されている。ECONをONにすると、確かにエンジンの鋭さにはフィルターがかかるが、それは「パワーが抑えられた」というよりも、パワー感を秘めながら「クルマの動きが上質になった」という感触なのだ。

ホンダは以前から、i-VTECや気筒休止システムを筆頭に、パワートレインのソフトウェア制御技術の向上に努めていたが、ECONもまた「省燃費支援と上質な運転感覚の両立」という点で、優れた制御技術に仕上がっている。ソフトウェアによる走行支援・制御を前向きに捉えて、積極的に実用燃費向上に活用しようという姿勢は、高く評価すべきポイントだろう。

筆者は新型オデッセイの「走りの新しさ」や「上質感」は、このノーマルグレード+ECON作動時にあると感じている。特に街乗りや高速巡航ならば、むしろ積極的にECONを使った方がいい。スムーズかつ快適に乗れて、なおかつ実用燃費も向上する。逆に高低差や加減速の激しい都市高速や、ワインディングロードではECONをOFFにすれば、ホンダ車ならではの鋭さが戻ってくる。

オデッセイの開発者によると、現在のECONシステムはCVT用で、5速ATを使うAbsoluteでは使えないという。だが、日常域でジェントルかつ実用燃費のいい走りは、むしろAbsoluteの方が必要性が高い。ここは是非とも、Absoluteでも使えるECONシステムが欲しいところだ。

さらに将来を見越せば、カーナビの「位置情報と地図」と連動し、道路状況に応じてECONの制御内容を変えたり、ON/OFFを自動で切り替える機能が欲しいところだ。また、先の新型レジェンドで投入され、この新型オデッセイも採用する新世代「インターナビ」では、クルマ側から収集するフローティング情報のひとつとして、走行時のリアルタイム燃料噴射量データも集めている。これを道路別に統計処理し、活用すれば、“走行中の道路にあわせて最適なECON制御を行う”ことも可能になるはずだ。

環境性能・燃費性能がクルマの魅力として重要な位置を占める時代の中で、ECONには大きな発展の可能性がある。新型オデッセイの「走り」はノーマルグレードの方が上質で新しく、21世紀のホンダらしいと思う。


◆VSA標準装備、新型ACCなど、充実のハイテク装備

パワートレインの先進性、それだけでも十分に魅力的であるが、新型オデッセイの見どころは他にも数多くある。安全装備から快適装備まで、先進技術・ハイテク装備のオンパレードなのだ。

まず、高く評価したいポイントが、横滑り防止装置「VSA」の標準装備だ。ESC(Electronic Stability Control)と総称される横滑り防止装置は、メーカーごとに名称の違いはあるが、2010年以降には世界的に装着義務化が進むと見られている。小型車やミニバンでは、特に安全面での貢献度が高い。筆者は、日本の自動車買い換えサイクルが5年以上であることを鑑みれば、「2008年段階で新型車に横滑り防止装置を標準装備していないメーカーは、ユーザーに対して良心的ではない」とまで考えている。

オデッセイは、このVSAを全グレードで標準装備。緊急時の車両安定・安全性能を底上げするだけでなく、EPS(電動パワーステアリング)と協調して、車両安定化のために操舵力アシスト制御する「Motion Adaptive EPS」まで実現している。この機能はコーナリングで操舵力をアシストして走行安定性を高めるほか、トンネル出口や橋架道上での突風・強風でもクルマの動きが乱されにくくなるなど、幅広い範囲で走行安定性の向上に貢献する。オデッセイというホンダの“売れ筋モデル”にVSAを標準装備し、その機能の発展・拡張まで取り組むことは、とても意義のあることだ。

また、ホンダが以前から開発・進化に注力する「ACC (アダプティブ・クルーズ・アシスト)」と「LKAS (レーンキープ・アシストシステム)」の動作も、さらに優れたものになっている。このふたつの機能はノーマルグレードのLiに標準装備、Absoluteではオプション装備だが、お奨めは前者のLiだ。今回のACCはノーマルグレードのECONと協調するようになっており、ECONとACCをあわせて使うと、従来よりもさらに実用燃費が向上し、加減速制御がマイルドになる。クルマ旅行や帰省で長距離ドライブが多いならば、この組み合わせは検討する価値がある。より多くを望むならば、Li以外のすべてのグレードでもACCを選択可能にし、もう一段の値下げに期待したいところだ。

一方、新型オデッセイ用に新たに開発され、話題性・注目度も高かった「マルチビューカメラシステム」については、筆者は“熟成不足”だと感じている。確かに魚眼CCDカメラによる全周囲映像は、見切りが悪い場所での運転支援として効果がある。立体駐車場などでの利用を想定し、「ドアミラーを立たんでも使える左右サイドビュー」カメラなど、使いやすさへの配慮も好感が持てるところだ。

しかし、カメラ機能が豊富になったことでスイッチ操作が煩雑になり、UI(ユーザーインターフェイス)部分に使いにくさを感じたのも事実だ。先述したECONの発展と同様に、カーナビの位置情報と地図と連動し、各カメラ機能が“必要な場所で自動的に起動する”モードを作ってほしいと思う。


◆新世代インターナビで情報性能もプラス

そして、もうひとつ忘れてはならない新型オデッセイの魅力が、インターナビ・ルートに対応した新世代インターナビが装着できるということだ。

本誌でも多くのレポート記事やインタビューで紹介したとおり、新世代インターナビはルート計算をサーバー側で行い、高精度なナビゲーション性能によって、実用燃費の向上や目的地到着時間の短縮に大きく貢献する。その一方で、世界初となる新機能「シーニック・ルート」では、景色のいい道や走ると楽しい場所をめぐるようにルート案内し、“クルマでドライブする楽しさ”を提供する。

テレマティクス対応カーナビは、トヨタ自動車や日産自動車も提供しており、それぞれ独自の魅力があるが、クルマの基本である「運転・移動の質」を情報力で高めるという点では、ホンダのインターナビが1〜2世代分は性能・機能面で先行している。世界中を見渡しても、インターナビ以上に「クルマの性能」を底上げするカーナビ/テレマティクスは存在しないだろう。その最新バージョンが選べるのは、新型オデッセイの特権と言える。新世代インターナビのクオリティや有用性を考えるならば、全グレードで標準装備にしてもよかったのではないだろうか。

このように新型オデッセイは、このクラスのミニバンとして高い素地を持つだけでなく、“21世紀のクルマ”として着実な前進をしている。スポーティなイメージと運転感覚、ミニバンとしてのユーティリティは確かに魅力だ。だが、それ以上に、環境性能と安全性能の向上のために多くの先進技術を投入し、その普及に前向きに取り組んでいるところに、今回のオデッセイの真価がある。

そして、それは「ホンダの良心」でもあると、筆者は思うのだ。
《神尾寿》

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