学生を中心とする「純新規契約者」がターゲットの春商戦
KDDI(au)とソフトバンクモバイルが1月28日、2008年春商戦向けの新ラインアップおよびサービスの発表を行った。KDDIの新端末は11機種38色、ソフトバンクモバイルは16機種57色の新端末を発表。一方、最大手のNTTドコモはすでに春商戦向けの705iシリーズを先行発表しており、13機種34色が春商戦に投入される。
携帯電話の春商戦市場は、業界内では“15歳の春”と呼ばれており、新入学を控えた学生がターゲットになる。このユーザーは過去にどのキャリアとも携帯電話契約を持たない「純新規契約者」であり、総契約者数が1億を超えて市場全体が飽和する中で、携帯電話各社が是が非でも獲得したい垂涎の的になっている。
◆話題作りと「学割」で攻めるソフトバンクモバイル
この春商戦に向けて、話題性という点で飛び抜けた存在になったのがソフトバンクモバイルだ。同社の投入する新モデルは16機種57色と業界2位のauはもちろん、最大手のドコモより多い。
ラインアップの内容も多種多様であり、携帯電話の使いやすさはそのままにキーボードを搭載してネット接続機能を強化した「922SH」、ドコモで“品切れ続出”となったVIERAケータイのソフトバンクモバイル版「920P」、有機EL液晶搭載の「REGZAケータイ 921T」、8.9mmの薄型モデル「822P」、防水ケータイの「822T」、素材感でデザイン性を高めた「THE PREMIUM TEXTURE 823SH」、スマートフォンの「X02NK」や「X03HT」などを投入。ラインアップ全体のバリエーション感では今期No.1だ。
さらにソフトバンクモバイルは、今回の春商戦に予想外な“隠し球”を用意した。それが販売価格1000万円、10台限定で発売されるティファニーとのコラボレーションモデルだ。これはティファニーの職人が手作りでダイヤ400個を飾り付けるというもの。ソフトバンクモバイル社長の孫正義氏は「ティファニーが携帯電話を作ることはもちろん、他の企業とコラボレーションするのも異例なこと」と、その希少性の高さをアピールした。なお、この“ティファニーケータイ”の10台のうちの1台は、同社のイメージキャラクターである上戸彩さんにプレゼントされるという。
ティファニーほどの超高額ではないが、他にも高級路線のモデルとして「THE PREMIUM TEXTURE 823SH」が発表された。これは着せ替えパネルに対応した携帯電話で、本物の牛革や木、カーボンのパネルにまじって、京友禅の木村染匠や京漆器の象彦が手がける限定パネル「JAPAN TEXTURE 友禅」「JAPAN TEXTURE 漆」も発売される。これらはクルマで例えるならば、BMWのインディビジュアル仕様のような位置づけだ。
このように多種多様なラインアップで注目を集めつつ、"料金"の部分で訴求力が高い直球を投げるのも最近のソフトバンク流だ。
ソフトバンクモバイルは春商戦に向けて期間限定キャンペーン「ホワイト学割」を投入。これは2月1日から5月31日までの期間に新規加入した学生が対象になり、同社の「ホワイトプラン」(月額980円)の基本料が3年間無料になるというもの。ホワイト学割は、パケット料金定額制の「パケットし放題」(月額0円 - 4410円)、「S!ベーシックパック」(月額315円)、専用ポータルサイト「コンテンツ学割クラブ」の利用がセットになるので、厳密に言えば“3年間の完全無料”はありえないが、それでも春商戦の主役である学生たちの目に魅力的に写るのは間違いないだろう。
◆auは「スポーツ」と「Bluetooth活用」でサービスを訴求
一方、ソフトバンクモバイルと対称的なポジションになるのが、KDDIの携帯電話ブランド auである。auの端末ラインアップは11機種38色と3キャリア中もっとも少なく、さらに昨年冬から「KCP+」と呼ばれる新プラットフォームを採用するハイエンドモデルは開発の遅れが続いている。個々の新モデルを見渡しても、デザインや性能・機能面、質感などで、ドコモやソフトバンクモバイルより見劣りするのが実情だ。
端末ラインアップだけみれば劣勢のau。同社が春商戦で武器にするのが「サービス」である。
まず、以前からauが注力していたGPS機能をいかし、これを利用したランニング/ウォーキング支援の新サービス「au Smart Sports Run&Walk」を投入する。これはランニングやウォーキングのルート記録や消費カロリー計算を携帯電話が自動で行ってくれるだけでなく、地図サービスをいかしたコース提案や、走り方をアドバイスするトレーナーモードなどが用意されている。さらにauの音楽配信サービスLISMOに対応し、“音楽を楽しみながらランニング/ウォーキングする”ことも可能だ。
また、Bluetooth機能の訴求も、今期のauの特徴だ。自動車業界からみると、Bluetoothは「ハンズフリー」というイメージがあるが、auはそれを「ワイヤレスミュージック」で訴求。ワイヤレスヘッドフォンやワイヤレススピーカーなど、音楽のワイヤレス接続方式としてBluetoothを推す方針だ。今後は、ソニーエリクソンなどが海外で発売中のBluetooth周辺機器も「日本での発売や訴求について、auとしても積極的に支援していきたい」(KDDI)という。クルマでのハンズフリー利用は二の次といった印象だが、それでも今後、Bluetooth対応携帯電話のラインアップを増やしてくるのは自動車業界にとっても歓迎すべき傾向だろう。
そして、もうひとつ、今期のauには隠し球がある。それが「端末価格の安さ」だ。同社は以前から端末コストの削減に注力しており、最近はドコモやソフトバンクモバイルに比べて“端末の販売価格が安い”ことが店頭での強みになっている。春商戦ではこの傾向がさらに強くなり、発売直後の端末が1万円以下、場合によっては割賦支払いなしの「1円販売」といったケースも見られそうだ。
ケータイ春商戦が本格化するのは2月中旬から。正念場は「学生の合格発表後2週間」(ドコモ幹部)という短期決戦だ。昨年の段階で新端末を発表済みのドコモは春商戦モデルが出そろってきており、2月10日頃から春商戦のキャンペーンを開始する模様だ。一方、auとソフトバンクモバイルの春商戦モデルが出そろうのは2月中旬以降になりそうであり、特にauは主力のKCP+対応機まで出そろうのが3月になりそうだ。この“タイミングの差”も春商戦では重要になる。
今年の春一番は、どのキャリアに吹くのか。注目である。