3.6リッターの『カレラ』は試乗会のチョイ乗りだけだが、新しい3.8リッターの『カレラS』にはしっかり乗った。
パワーは30psアップの355ps。メーカー発表の動力性能を比べると、静止から100km/hに達するまでのフル加速データが、カレラの5.0秒に対して、4.8秒。トップスピードは、285km/hに対して293km/h。日本の交通環境で現実に有意性を持ち得る差ではないが、しかし、こういう僅差の2台を併売して説得性をもたせるのはポルシェならではだろう。
カレラSのエンジンは、アイドリングだとかなりウナる。しかし、走り出せば静かで滑らか。乗ったのは雨の日だったが、ウェット路面での超絶きわまるトラクション性能には驚かされる。もうひとつの驚きは、新しい可変ダンパーで、スポーツ側にすると、ジキルのように乗り心地がレーシーになる。
カレラでもカレラSでも、911はマニュアルに限るという持論は、今回も揺るがず。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★☆
インテリア/居住性:★★★☆☆
パワーソース:★★★★☆
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★☆
下野康史| モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部を経て、モータージャーナリストに転身。現在はクルマ雑誌を始め、週刊誌のコラムなど幅広く執筆活動を行っている。親しみやすい文体のなかに見える、鋭い着眼点や独特の語り口にファンは多い。