「もう一度ベンチマークになろうという目標を立てました」この言葉は、今回のGTIの試乗会ではなくゴルフの日本での登場時に、開発に携わったエンジニアのユング氏のものである。この言葉からわかるのは、彼らの自信そのもの。考えてみれば国産メーカーのエンジニアからこんな言葉は聞いたことがない。なぜなら普通はあまりにも恐れ多くて、自らが「ベンチマークになろう」とはいえないからだ。
しかし今、『GTI』に乗るとその言葉がカタチだけではないことがひしひしと伝わってくる。一般道を経てサーキット試乗も行なったが、そのスタビリティは「驚異的」という言葉がふさしい。後輪駆動のようなエキサイティングな面は当然ないのだが、そのぶん、後輪駆動では絶対に実現できないスーパーセーフティと呼べるだけの超絶なスタビリティを有するのだ。実際ポールリカールのもっとも大きなコーナーでは、約160km/hからスロットルをワンオフさせて進入したが、GTIは何事もなくクリアしていく。一度ミスしてテールがスライドしたが、そのときですらスライドはスローモーションのようだったのだから感服である。
極めて優れた乗り味・走り味を実現し、ドライブトレーンではVWにこれまでなかった色気すら身につけた。そしてシュアなハンドリングと超絶なスタビリティを誇る…それがゴルフの実用的なパッケージのなかで実現されているのだから、これほど優れたスポーツモデルはほかにない。何となれば家庭用として必要以上の実力を持ち、それでいてスポーツカーと余裕で勝負できるポテンシャルをもつ。
そう考えるとGTIはある意味、究極のマルチパーパスビークルといえるのではないだろうか? これが来春、BMW『120i』より安価で日本導入されるというのだから、もう諸手を挙げてオススメしたい。