内外装のあらゆる部分からエッジを取り除いて、ひたすらまんまるな造形で和みを演出する。ベースの『ムーヴ』が思い出せないほど割り切った造形を前にして、なんだかとっても嫌な感じがした。
メインターゲットとなる女性の好みに合わせるために、彼女達の意見を徹底して取り込んだ結果は、俺ら男が逆差別を感じるようなアンタッチャブルな仕上がりになっている。丸くて柔らかいデザインが、すべて女性的かというとそんなことはないはずなのだが、『ムーヴラテ』の場合は考え抜かれたニュアンスで統一されているようだ。
乗降性などの使い勝手から入った背の高いプロポーションを、そのまま自然に受け入れてしまう柔らかいタッチのハンドリングは、タウンユースを基本とする使用パターンを考えると納得が行く。58psのNA3気筒エンジンも多少のロールを許す足まわりも、ほんわかした全体の雰囲気とかみ合っていて、まあこれもありかと思えてくるの。ちょっと参った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★☆
インテリア/居住性:★★★★☆
パワーソース:★★★☆☆
フットワーク:★★★☆☆
オススメ度:★★★☆☆
伏木悦郎| 自動車評論家
70年代にレースを志し富士スピードウェイで参戦。その間偶然知り合った自動車雑誌編集者にスカウトされる形で業界入り。78年から一貫してフリーランス。FRの魅力に傾倒し国産車によるコンパクトFRの再生が宿願。