走らせると即座に6速MTの豊かな感触を実感する。STi用のそれは、『インプレッサ』のキャラクターによるところか、シフト時にゴリッとした感じがあり、ストロークも短く、いかにも「操作」している感覚だが、『3.0RスペックB』のそれは洗練された質感をともなうもので、「操作」というより指揮者がタクトを振っているような感じだ。
シフトしていくと確かにインプレッサよりもゲートが迎えてくれる感覚があり、かつそのあと、シフトを送ったときの引っかかりや底付き感なども見事に払拭されていた。ただ個人的にはシフト方向/セレクト方向ともに、より明確なゲート感があってもよいように思えた。
「シフトリンケージの底付き感改善のためシムのようなものを入れたり、わざとレバー剛性を抑えフィールをよくしたり、音を抑えるなど対策も取っています。ほかにもちろんクラッチの踏力や反力、ストロークなどに関しても徹底して、滑らかさ、節度感、軽快感など微妙な領域で何パターンか試作品を作り、さまざまな場所で多くの人たちに試してもらいました」という、シフトフィールたったそれだけのことにこれほどまでにこだわっているのだ。
「レガシィの車格にふさわしくグランドツーリングカーとして、基本的に操って疲れないものを…」という開発陣の狙いはキッチリ達成されていた。3.0RスペックBには、確実にほかのクルマにはない「豊かさ」が増していると思えた。
「レガシィには、まだまだ可能性が残されています。我々はそれに対して、ことあるごとにアップデートしていくつもりです」
増田さんが語るそんな思いにこそ、ほかとは違うスバルのクルマづくりが顕著に表れている。これならば、レガシィは時間が経つに連れ、我々が理想とするスポーツセダンへと熟成されるに違いない。