VW『トゥアレグ』のスタイリングだけを見るなら、例えばメルセデスベンツ『Mクラス』、BMW『X5』、ボルボ『XC90』あたりに真っ向勝負を挑んだクルマのように見える。北米市場ならレクサス『RX330』(日本名『ハリアー』)、アキュラ『MDX』あたりも入るだろう。
ところが実情は違うようだ。フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン(VGJ)のマーケットプランニング部・商品企画課の大出哲夫さんは「スタイリングはたしかに最近流行のSUVです。しかし、走行性能では『ランドクルーザー100』や『サファリ』、『レンジローバー』が直接のライバルになります」と語る。
トゥアレグはVW初の高級車だけに「妥協は許さない。妥協するぐらいなら発表しない」というスタンスで開発されてきた。スタイルこそライバル車と似ているが、悪路走行性能に関しては完全にライバルを凌駕している。
「他社のSUVでは“悪路走行も可能です”といったレベルでしかありません。ちょっとした山道程度しか想定していないように思えます。しかし、トゥアレグは傾斜角45度までの勾配なら登れてしまいますし、深さ50cmまでの川ならキャビンに浸水することなく渡れる。性能から言うなら本格オフローダーです。ランクルやサファリ、そして『レンジローバー』のようなゴツゴツとしたスタイリングが苦手な人にもお勧めできるクルマですね」と大出さん。
スタイルはあくまでもカッコ良く、性能的にはかなりハードなこともできるという“能ある鷹は爪を隠す”状態。「さりげないけど凄い」というのは日本人が理想とするヒーロー、ヒロイン的なものを具現化したとも言えるだろう。3.2リットルのV6エンジン搭載モデルであれば495万円という現実的な価格で買うこともできるので、意外に売れてしまうのではないだろうか。