スズキ初の軽EV『eスカイ』発売へ、その使命とは…開発責任者「アルトのように“時代に残る”1台に」

スズキ初の軽EV『eスカイ』
  • スズキ初の軽EV『eスカイ』
  • スズキ e SKY(eスカイ)開発責任者の津幡和幸さん
  • スズキ e SKY(eスカイ)
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スズキがいよいよ軽乗用EVの『e SKY(eスカイ)』を市場に投入する。8月24日、eスカイに関するティザーサイトがオープン。これに合わせておこなわれたメディア向け取材会で、開発責任者を直撃。

【画像】スズキ初の軽EV『eスカイ』

eスカイとは一体どんなクルマで、何を目指すのか。その開発経緯や戦略について話を聞いた。

◆「軽EV元年にギリギリ間に合いました」

スズキ Vision e-Sky(ジャパンモビリティショー2025)スズキ Vision e-Sky(ジャパンモビリティショー2025)

eスカイは、2025年の「ジャパンモビリティショー」で公開された『Vision e-Sky』の市販版にあたる軽EVで、スズキの軽乗用EV第一弾として発売される。“Easy to Switch!”をコンセプトに、いつもの軽から無理なくEVに乗り換えられるよう、しっかりと日常使いができるクルマを目指した。

一充電あたりの走行距離は310km。交流電力量消費率を97Wh/km(1kmあたり97Whの消費)とし、「少ない電気でたくさん走る」ために、コンパクトで軽量なeアクスル、軽トップをねらった空力性能、軽量で薄型にこだわった安全で長寿命なLFPバッテリーなど、スズキらしい設計思想が盛り込まれたという。

スズキ e SKY(eスカイ)開発責任者の津幡和幸さんスズキ e SKY(eスカイ)開発責任者の津幡和幸さん

開発責任者の津幡和幸さんは、これまで『アルト』などのアシスタントチーフエンジニアを務めてきた経験を生かし、「(eスカイはアルトやワゴンR同様)ベーシックな思想を受け継ぐクルマと位置づけていましたので、その思いをもとに開発しました。同時に絶対にスズキの歴史上、重要なクルマになることは分かっていましたのでそのプレッシャーもありました」と気持ちを吐露する。スズキの市販四輪車の始まりは軽乗用車の『スズライト』であり、同じように軽EVの始まりとして110年のスズキ史にその名を刻む1台といえる。

また、近年軽EVが続々市場に投入されていることを受け、「2026年から27年は軽EV元年になる可能性がありますので、なんとかギリギリ間に合いました」とコメントした。

◆軽を必要とする人のためのベーシックなクルマ

スズキ e SKY(eスカイ)スズキ e SKY(eスカイ)

一方で軽自動車の人気カテゴリーは、『スペーシア』などのスライドドアを持つスーパーハイトワゴン系だ。eスカイはアルトやワゴンRのように、後席ドアはヒンジ式で、特別に背が高いというわけでもない。

津幡さんもそこは認めたうえで、「そのユーザーはある程度利便性や、装備にお金を払っていただけます。しかし、軽が本当に必要な方に向けたベーシックなクルマを求めるユーザーは価格に対して厳しい目を持っています。ですからそこに当てはまるクルマを作ったうえで、そのお客様の声、EVの弱点を聞いて、より良いものを作らないと軽EVを求めるお客様のニーズには応えられないない」と考えた。

ここにはスズキとしての企業背景もある。「ベースを作ってそれをもとに台数を売って利益を出しているのがスズキです。たしかに初期投資はかかりますが、そのベースをしっかりと作り上げれば、あとは横展開して台数を稼げるわけです」とあくまでも将来を見据え、基本をしっかりと作り上げたことを説明した。

◆軽ユーザーが求めているもの

スズキ e SKY(eスカイ)スズキ e SKY(eスカイ)

しかし、軽EVとして何が必要で、何が不要なのかを選択するのは困難だったという。既存車種をベースとしたEVであれば、ベース車のユーザーの声を聞きながら開発ができる。また、開発のスタートは今から3~4年前だったためスズキの乗用EV『eビターラ』も市場に存在しなかった。

ターゲットとなる軽を必要としている人たちから意見を集めるためには、「EVに乗ったことがあるか、EVのイメージはどういうものかなど、もっともベーシックなところから始めなければならなかった」(津幡さん)。

「さらに、例え乗ったことがあっても、私が買うクルマではない、EVは私の生活には必要ないし、そもそもスズキにはないでしょうと情報が集まりにくかったんです」と当時を振り返る。

スズキ e SKY(eスカイ)スズキ e SKY(eスカイ)

そこで発想を変え、「時間をかけて考えても100点の答えは出ませんので、スズキとして何がしたいかを先に決めていきました」。そこから、“Easy to Switch!”というコンセプトが生まれ、ガソリン車から乗り換えても違和感のない、EVである前に軽自動車であることを基本に開発が進められた。

「EVだからすごく静かで、ちょっとアクセルを踏んだらピューンと走ることは求めていないんです。なぜならアルトやワゴンRユーザーは今のクルマに不満がないから」と津幡さん。ただし、ガソリンスタンドの減少や、燃料費の高騰などから、そこに時間やお金を使いたくないという声もある。加えて、「仮に一斉にEVに切り替わったとすると、毎日の生活や仕事で軽が必要としているユーザーは、自分たちが求める軽EVがありませんから生活が止まってしまうんです。我々の使命は、そうしたお客様に向けた商品をいかに作るかということ」だと語った。

◆使命は「軽EVを購入リストに入れてもらうこと」

スズキ e SKY(eスカイ)スズキ e SKY(eスカイ)

では、アルトやワゴンRに不満のないユーザーに対して、軽EVをどう訴求するのか。

それこそが 開発コンセプトでもある、“Easy to Switch!”だ。「ガソリン車から乗り換えても、これまで通りに運転して違和感のないEVだということをアピールしたい」と津幡さん。そのうえで、「高額な商品なのですぐに乗り換えてもらえるとは思ってはいません。しかしいずれは買い替えるタイミングがあるでしょう。そのときに、アルトやワゴンRとともに購入リストに入れてもらいたい。それがこのクルマの役目ともいえるでしょう。点検などの待ち時間や代車として、買う買わないは関係なくまずは乗ってみませんかとお誘いしたい」という。

また津幡さんは「他のEVと比較して良い悪いという声は求めていない」とも。

スズキ e SKY(eスカイ)スズキ e SKY(eスカイ)

「いま乗っているクルマと比較して操作感を含めて普通に使えるかどうか。もちろんスペーシアを買っているお客様がこれに乗ったからといって購入に繋がるとは思っていません。ただ、これのスペーシア版があったら買うか、ハスラーだったらどうか。そこで購入候補に上がるようならスズキとしては大成功なんです。そういう声を聞けば次の車種が決まってきます。とにかく今は市場に出回っていないので、触ってもらわない限り声が我々に届かない。ですからぜひ見て触って運転してもらいたいんです。購入するかどうかはその先です」

「(eスカイは)時代に残る1台。アルトでさえ最初はそこまで売れると思わずに開発し、ユーザーの声を聞いて改良を加えて、売れました。それと同じようなムーブメントを作らないといけないという責任感があります」(津幡さん)

スズキ e SKY(eスカイ)スズキ e SKY(eスカイ)
《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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