【レスポンスカンファレンス2026】日米欧中のトッププレーヤーが集結…自動運転の現在地とクルマの知能化が描く未来

「レスポンス カンファレンス2026」
  • 「レスポンス カンファレンス2026」
  • レスポンス編集長 三浦和也氏
  • 国土交通省 大臣官房 技術総括審議官 久保田秀暢氏
  • ニューモ 代表取締役CEO 青柳直樹氏
  • 自動車ジャーナリスト 清水和夫氏(左)と住商アビーム自動車総合研究所 鈴沖陽子氏(右)
  • 自動車ジャーナリスト 清水和夫氏
  • 住商アビーム自動車総合研究所 鈴沖陽子氏
  • 日産 ソフトウエアデファインドビークル開発本部 吉澤隆氏

イードが主催する「レスポンス カンファレンス2026」が6月30日、都内において開かれた。

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世界の自動運転市場が急速に拡大しさらなる成長が見込まれる中、自動車メーカーやサプライヤーによる競争は激化の一途を辿っている。さらに、日本政府も自動運転の実用化を推進するなど、産業界の連携強化や技術標準化への取り組みは急務となっている。「レスポンス カンファレンス2026」では、「グローバルに進むクルマの知能化:日米欧中TOPプレーヤーの現在地と今後~」をテーマに、自動運転関連企業や自動車メーカーのセッション、展示ブース、参加者らによるアフターパーティを通じて、業界関係者が一堂に会した。

開会に先立ち、レスポンス編集長の三浦和也氏は開会挨拶の中で「2016年は自動車業界が一気に未来へと舵を切った年でした。1月のCESでは、各社が競って自動運転技術を披露し、秋のパリサロンではメルセデス・ベンツがCASEを世界へ向けて宣言しました。あの年に描かれた未来像が10年を経て、今まさに社会実装という現実の段階へと到達しつつあります」と10年前の出来事を紹介。その上で、「これから2030年までのステップ、そしてその先に描くリアルなモビリティ。この時代に仕事ができる幸運に感謝しつつ、本日のひとときをご一緒できればと思います」と挨拶をした。

◆自動運転を巡る動き~国土交通省の考え方

国土交通省 大臣官房 技術総括審議官 久保田秀暢氏国土交通省 大臣官房 技術総括審議官 久保田秀暢氏

その後、国土交通省 大臣官房 技術総括審議官の久保田秀暢氏による基調講演で、カンファレンスがスタートした。久保田氏は冒頭、「2ヶ月ほど前に資料を作ったんですけれども、今日もう1回振り返ってみると、だいぶ古くなったと思います。それぐらいこの分野は進むのが早い」と述べる。そのような状況の中、久保田氏は日本が国連において自動運転の基準づくりに積極的に携わっている事例を紹介。「国連の中で、日本が主導して自動運転レベル4の基準を作りました」とアピールした。

数年前までは高精細な3Dデジタルマップを必要としたルールベースの自動運転技術が盛んに研究されていたが、久保田氏は近年はAIベースに移行しつつあることを指摘し「AIに学習させることで、短期間かつ安価な開発が進んでいます。これまでのルールベースにAIを組み合わせた『ハイブリッド』で開発を進めるのが主流」と述べる。さらに「AIベースで開発費が抑えられるということで、当初1台1億円以上かかっていたクルマが、『レベル2++』であれば、数十万の費用で済むと思っています。指数関数的に車両価格の低廉化が進み、それに合わせて自動運転の普及が進んでいくことを期待しています」といい、このような背景から「自動運転サービスの車両数を2030年に1万台(普及させる)」という1月の政府の閣議決定の事例を紹介した。

この野心的な目標を達成するために「(政府として)優良認定制度を作ったり、技術開発の支援、あるいは国際的なデファクトスタンダードを抑える活動を通じて支援していきます。(中略)自動運転社会の早期実現を目指していきたいと考えています」と結んだ。

◆進化するタクシーと自動運転の未来~タクシー事業者としての挑戦

ニューモ 代表取締役CEO 青柳直樹氏ニューモ 代表取締役CEO 青柳直樹氏

続いて登壇したのは、全国1400台以上のタクシー車両を運行させるニューモ(newmo)の代表取締役CEOである青柳直樹氏だ。青柳氏は、政府の掲げる「2030年1万台」という目標に対し、スタートアップでありながら日本の移動インフラを支えるタクシー事業者という立場として、どのように自動運転技術に貢献できるかを説明した。

まず青柳氏は、ニューモがタクシー事業者のAI活用やDX支援を行いながら、自らAIの運転モデルを開発、評価している事例を紹介。自動車メーカーではなくタクシー事業者が自動運転技術を開発する意義について「先行しているプレーヤーは、いくつかの都市で1000台以上の車両を投入しています。これが(AIの)学習量に効いてきて、色々なエッジケースをカバーしながら、データ収集のボリュームも増やすことができます」と話す。

青柳氏は「2030年1万台」の目標について「バスやトラックではなく、タクシー車両が、大部分を占めるだろう」と推測する。その上で「タクシーは昼も夜も週末も走っているので必要なデータ量が伴っていく」として、タクシー事業者としてのメリットを紹介した。その上で、今後については「今は特別に改造した車両でデータ収集をしています。タクシー車両を今1000台以上保有しており、今後、事業承継を増やすことで数千台規模で所有することになります。タクシーをそれだけの規模で運行すると色々なケースに遭遇するので、来年以降、データ収集をプロのドライバーにやってもらおうと思っています」と話す。

青柳氏は最後に「データ量という意味では我々はかなりユニークなポジションを作れるのではないかと思っています。(中略)まずは都市部でしっかりデータを収集して、雪国も含めて、今後自動運転タクシーの拡大を段階的に進めていきたい」と展望を述べた。

◆米国:テスラの自動運転・現在地と今後

自動車ジャーナリスト 清水和夫氏(左)と住商アビーム自動車総合研究所 鈴沖陽子氏(右)自動車ジャーナリスト 清水和夫氏(左)と住商アビーム自動車総合研究所 鈴沖陽子氏(右)

政府や事業者からの視点に加え、続いては自動車ジャーナリストの清水和夫氏と住商アビーム自動車総合研究所の鈴沖陽子氏が「米国:テスラの自動運転・現在地と今後」というテーマで、実際に取材を通じて感じた米国テスラ社の現状を紹介した。清水氏はまず、近年日本でも実証実験が進む一般道におけるハンズオフの取り組みを紹介。その上で、テスラはAIを使ったレベル2のE2E技術でレベル4のロボタクシー事業にまで技術を引き上げる考えを披露した。「(競合する)ウェイモはルールベースやLiDAR、ミリ波レーダー、カメラなど、多くのセンサーを使う考え方ですが、テスラは以前から『人間は目で見て走っているんだからカメラだけでいいよね』というのがポリシー」(清水氏)

鈴沖氏からは、3月にアメリカ・テキサス州のオースティンでテスラとウェイモのロボタクシーを実際に体験した際の現地の状況が明らかにされた。鈴沖氏は「現在米国では、自動運転タクシーが実証ではなく商業サービスとして、すでに市民の移動の一端を担い始めています」と述べる。「ウェイモは完全無人でカリフォルニア州やテキサスなど6州11都市で商業化済みです。今後21都市への拡大を準備中ということで東京でもデータ収集をしています。一方テスラは、2026年にテキサス州の3都市で自動運転の商業運行を開始しています」(鈴沖氏)

鈴沖氏はテスラの配車アプリの使用感にも言及。「使い心地は他の配車アプリと全く変わりません」といい、「現地に2泊滞在していた間では、市内での利用においては全く問題がありませんでした」と述べた。しかし一方で、「一度ロボタクシー利用の後、何らかのトラブルが発生したのか、スタッフが手動運転をしていくということがありました」と現地でのトラブルの様子も紹介した。鈴沖氏によると、テスラとウェイモでは、所要時間やルートに特筆すべき差はないそうだが、金額差が大きいという。

「ウェイモが8マイルを23分で走行したのに対して、テスラは7.95マイルを26分で走行しました。ウェイモが34.99ドルをウーバー経由で請求したのに対し、テスラは14.13ドルと非常に安価です」(鈴沖氏)

この違いについて鈴沖氏は、テスラが量産車を活用して低コストで運用していることを挙げる。「テスラは、より低価格なサイバーキャブの量産を予定しており、シートやハンドルなどを搭載しないことで部品点数を削減し、3万ドル以下でサービスに活用する展望を示しています」(鈴沖氏)

また鈴沖氏は、「(現地でも)自動運転に関する事故やトラブルはやはり一定数発生しています」と自動運転の課題を述べる。その対策として、「自治体や連邦政府が事故情報や市民からの苦情の状況を公開して透明性を確保することで社会受容を支えています」と話し、透明性の確保が必要であると訴えた。

◆交通事故ゼロの実現に向けた三位一体の先進安全・自動運転の取り組み

トヨタ デジタルソフト開発センター チーフプロジェクトリーダー 鯉渕健氏トヨタ デジタルソフト開発センター チーフプロジェクトリーダー 鯉渕健氏

米国における自動運転のリーディングプレイヤーであるテスラの取り組みを紹介した後は、国内メーカーであるトヨタ、日産、いすゞの取り組みが披露された。トヨタで自動運転技術の研究に従事する鯉渕健氏は、同社が交通事故ゼロの実現に向け、自律システムの性能向上、インフラ協調、人との協調を組み合わせた「三位一体」の安全技術の開発を進めていることを紹介した。

まず鯉渕氏は、同社の予防安全パッケージである「トヨタ・セーフティ・センス(TSS)」が、事故被害を大きく減らしていることに言及。その上で、すでにTSSが世界中で展開されていることをアピールする。鯉渕氏によると、日本では自動車の保有台数が増えたにも関わらず交通事故死者数は減少したそうで、その要因について「クルマだけではなくて道路環境やインフラ、ルールなど、皆さんの意識も含めて(社会全体の)安全性が高まった」と考察する。しかし近年は死者数が横ばいになっているといい、その理由としてドライバーが予測できない急な人の動きなど、回避するのが難しいケースが濃縮されたものが今なお残っていると話す。その上で鯉渕氏は、AIの学習環境を構築することの重要性を次のように述べる。

「試験車やお客様のクルマからデータを集めて、その中から重要なシーンを抜き出して、データセットを作って学習させる。それをシミュレーションにかけて効果を見て、実車で試験をして、OKとなったらお客様のクルマに提供する。そんなループを、いかに人手を介さずに自動でものすごいスピードでやる、効率よくやるか。それが、AIアルゴリズムの進化のスピードを左右すると考えています」(鯉渕氏)

◆AI Defined Vehicleを支えるソフトウェアプラットフォームの全体像~SDV時代に求められるAIDV基盤アーキテクチャ

日産 ソフトウエアデファインドビークル開発本部 吉澤隆氏日産 ソフトウエアデファインドビークル開発本部 吉澤隆氏

一方、2025年9月に、「次世代プロパイロット」搭載車両を2027年度に発売すると発表した日産からは、ソフトウエアデファインドビークル開発本部の吉澤隆氏が壇上に登った。「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」という長期ビジョンを発表した日産だが、吉澤氏によると、モビリティの知能化において日産は「AIディファインド・ヴィークル(AIDV)」という考えを中心に据えていると明かす。「(日産は)3つの領域でAIを活用していきたいと思っています。自動運転としてのAI、コックピットの中のエージェントAI、そして開発プロセスそのものを革新していくAI。プロダクトとそのプロダクトを作る開発プロセスそのものをAIを活用し一体運用することで、お客さまへの提供価値を拡大していくと考えています」(吉澤氏)

中国勢が圧倒的な開発スピードを武器に世界を席巻する中、吉澤氏は「ソフトウェア開発の期間を低減することでコストを低減する。それによって、新しい技術を廉価にして、できるだけ多くのお客さまに届けたい」と語る。「(高速道路だけでなく)自動運転のシーンが拡張することによって、日産は最終的にドアツードアで自動運転を提供すること目指していきます」(吉澤氏)

その一方で、吉澤氏は中国メーカーを念頭にクルマづくりにおいて忘れてはいけない大切なことがあると釘を刺す。「AIだけでクルマが動くわけではないし、動いたとしてもお客さまが何を感じるか(が重要)。やはり安定したドライバビリティや真っ直ぐ走る、心地よくスムーズに加速するなど、そういったものは絶対になくせないと思うんですね。それは日産であり日本の自動車メーカーがずっと大事にしてきた技術なので、対中国という意味で戦いが激しくなるのは間違いないんですけれども、日本の自動車メーカーとしての勝ち筋はやはりここにあると考えています」(吉澤氏)

◆商用車のL4自動運転の展開について

いすゞ 開発部門シニア・ヴァイス・プレジデント 佐藤浩至氏いすゞ 開発部門シニア・ヴァイス・プレジデント 佐藤浩至氏

一般向けの乗用車をメインに手掛けるトヨタや日産と違い、商用車メーカーであるいすゞは異なる視点から自動運転の未来について検討を重ねている。同社で自動運転の開発や事業化を担当する、開発部門シニア・ヴァイス・プレジデントの佐藤浩至氏は、まず商用車を取り巻く社会課題を2つ指摘する。「(課題の1つは)ドライバー不足。全職種の有効求人倍率がおよそ1.14倍なのに対して、ドライバー職は2.61倍と人が集まりにくくなっています。また、大型免許の保有者は15年で50万人減っており、特に大型トラックのドライバーが減ってきています」(佐藤氏)

ドライバー不足に加え、人々の行動変化によって表面化した課題もあると佐藤氏は説明する。「平成15年ごろは積載効率が48パーセントだったのに対し、現在41パーセントまで落ちてきている。eコマースの発展で小口配送が増えたことと、定時配送(時間指定)が増えたことで、満載になる前にトラックが出発しなければならいため、積載効率が下がってきています」(佐藤氏)

これらの課題を解決するための手段として、いすゞは自動運転レベル4の開発を進めているという。「ドライバー不足への対応なので、ドライバーがいなくてもクルマが動いてほしい。そこで我々はレベル4、限定的な条件下ですが、ドライバーなしで運転の責任主体は自動運転システムというものを目指しています」(佐藤氏)

佐藤氏によると、いすゞは車両制御に関しては長年の知見があるものの、いまはAI関連技術をキャッチアップするために日米のスタートアップと組んで技術開発を行っているそうだ。現在のところ、2027年度の事業化に向けた車両開発を行っているといい、高速道路だけでなく一般道での走行も想定していることから、一般道・市街地をカバーした自動運転のテストコースを建設中だという。「自動運転はいすゞだけではできないので、いろいろな方に(テストコースを)使っていただきたい。技術・制度・社会受容性を一体で進める自動運転のインキュベーションハブとして、このテストコースを育てていきたいと思っています」(佐藤氏)

佐藤氏によると、将来はシャシーの供給だけでなく、TaaS(トラック・アズ・ア・サービス)やDaaS(デリバリー・アズ・ア・サービス)といったビジネスモデルの提供を想定しており、最後に「自動運転はゴールではありません。社会課題を解決するための手段です」と結んだ。

◆ロケーションインテリジェンスが拓く新たなイノベーションステージ

ヒア・テクノロジーズのシャム・シャンカール・ラマン氏ヒア・テクノロジーズのシャム・シャンカール・ラマン氏

続いては、会場でブースも出展したヒア・テクノロジーズ(HERE Technologies)のシャム・シャンカール・ラマン氏が、ロケーションインテリジェンスとAIの役割について講演した。

ラマン氏はまず、同社の地図と技術を搭載した車両が世界で2億3800万台、ADASマップを搭載した車両は6300万台以上走行していることを紹介。さらに、90以上のOEMブランドが同社の「ISA(インテリジェント・スピード・アシスト)」を搭載し、最近では中国の自動車輸出業者トップ10社すべてが同社の技術を採用していると述べる。「これは、我々が中国勢や新技術への対応という点で大きな意味を持ちます」(ラマン氏)

さらにラマン氏は、ロケーションインテリジェンスとAIが自動車業界に与える影響について、次のように述べる。「自動車にもエージェントAIが定着しつつあります。エージェントAIはもはや単なるレコメンデーション機能ではなく、さまざまなパラメータにもとづき、推論・意思決定・行動まで行うのが近年のトレンドです」(ラマン氏)

ラマン氏は、近年の自動車業界のトレンドに関し、「自律型モビリティ」と「UX(ユーザーエクスペリエンス)」の重要性が高まっていると指摘する。「エージェントAIは、スマートなルート選択やルートの最適化といった面で進化しており、これらの分野でのさらなるコストの最適化が進んでいます。双方向の会話が可能となり、状況を理解するコ・パイロット(副操縦士)へと変わりつつあるため、UXもこれに最適化する必要があります」(ラマン氏)

その上でラマン氏は「地図は実環境からクラウド上まであらゆる場所に存在し、ナビやオートパイロット、センサーフュージョンなど、自動運転やADAS向けの革新的なツールが多数登場しています。ロケーションインテリジェンスは自動運転やADAS、SDVに必要不可欠なツールです」と語った。さらにラマン氏は、同社のシミュレーションツールを「自然言語処理に対応し誰もがアクセスできる強力なツール」とアピール。コストや作業効率が向上すると話す。「より迅速なテストが可能となり、より早く構築でき、簡単に展開でき、R&Dのコスト削減に繋がります」(ラマン氏)

続いてラマン氏は「インテリジェンス・ディファインド・ヴィークル(IDV)」という考えを披露した。ラマン氏によると、IDVには次の3つに分類できるという。

(1)言語インテリジェンス
(2)空間インテリジェンス
(3)運転インテリジェンス

言語インテリジェンスは、ユーザーの意図を理解し、空間インテリジェンスを活用することで周囲の環境を理解するものだという。そして運転インテリジェンスは、最終的を決定を下し必要な行動を取ることだそうだ。「ロケーションが自律的な意思決定レイヤーになりつつあります。さらにロケーションインテリジェンスは、自律運転、ADAS、SDVの開発において不可欠な戦略的なインフラとなります。私たちは、登場するすべての新しい技術の交差点にいます」(ラマン氏)

最後にラマン氏は、アジア太平洋地域(APAC)における2400人以上の二輪ライダーを対象とした調査結果を報告した。「回答者の82%がナビゲーションの問題、ルーティングの問題を経験していました。ギグライダーの50%が、乗車や配達などにおいてこうした問題が収入の損失につながっていると述べています」(ラマン氏)

ラマン氏は、これらは「不十分なGPS信号」が最大の課題だと話す。「二輪車ライダーも軽視することはできません。彼らは、より良いライディング体験のためのソリューションを必要としているのです」(ラマン氏)

ラマン氏によると、乗用車と二輪車で求められるADAS機能が異なるそうだ。「ライダーは、道路状況の警告、事故多発地点の警告、最も安全なルート情報、そして制限速度の警告を求めています。さらに日本と中国では天候や急カーブに関する警告の要求も高まっていました。ライダーでさえ、信頼性と予測可能性を求めていることが分かっていただけると思います。大事なのは、ユーザーのアフォーダビリティが成長しているということです。アフォーダビリティが高まるにつれ、新しい安全機能が求められ、要求されるレベルも高まります。二輪車も、車両の安全性とインテリジェンスへの期待が高まっているのです」(ラマン氏)

◆中国:自動運転に向けたスケーラブルな成長パス~中国からグローバルへ

モメンタ社 グローバル・チーフ・ソリューション・アーキテクト チン・ラオ博士モメンタ社 グローバル・チーフ・ソリューション・アーキテクト チン・ラオ博士

一方、自動運転技術の先端を走りながら、なかなか日本からではその実態が見えにくい中国の自動運転市場について、中国モメンタ社のグローバル・チーフ・ソリューション・アーキテクトを務めるチン・ラオ博士が講演を行った。2016年に設立されたモメンタは、2022年に最初の量産プロダクトをローンチし、上海汽車の子会社であるIMモータースの車両に採用された。これまで累計で100万台以上の車両に搭載され、現在は上海汽車やBYDといった中国メーカーだけでなく、GMやメルセデス、トヨタやヒョンデなども戦略的パートナーとして名を連ねているという。

ラオ氏によると、レベル4の自動運転が安全に走行するためには、1000億km以上にもなる膨大な走行データ量が必要になるという。そのために、「現実世界のデータを収集して、データドリブン式のAIモデルをどんどん進化させて、その全てのロングテールの課題(※稀な事象)を解決することこそ正解」と述べる。その上で、ロボタクシーといったフリート需要だけでは膨大な走行データを集めきれないことから、同社では量産ADASとロボタクシーを両立する「二本足」戦略を始めたという。

ラオ氏は、クラウド上のデータからAIのトレーニングに役立つデータを抜き出し、クローズドの環境内で学習させることで性能を向上させる「クローズド・ループ・オートメーション」という概念を紹介しながら、自動運転の未来に関して「ワールドモデル」を使ったシミュレーション、強化学習を通じてAIモデルをどんどんと進化させることで、運転の上手なドライバーを自動運転が超える日がくると予想する。「(テスト中)前のクルマからリンゴの箱が1つ落ちました。リンゴの箱が落ちると、箱の中のリンゴが散乱しますよね。R7ワールドモデル(※強化学習と取り入れたモメンタの製品)は、箱だけでなく落ちたリンゴの動きも予測して回避することで、リンゴを1つも踏まなかったのです」(ラオ氏)

ラオ氏は「トレーニング時に(りんごが散乱するような)データは入れていなかった」といい、現実世界でそのようなケースが発生しても対応できるのがこれからの自動運転だと述べた。

◆欧州:MOIAによる自動運転オンデマンドシャトル~日本のモビリティ課題解決に向けて

最後は、独モイア社でビジネス・ディベロップメント・ディレクターを務めるレイナー・ベッカー氏が講演を行った。ベッカー氏はまず、ドイツ・ハンブルクにて乗合型シャトルを1200万回以上運行した実績をもとに、自動運転領域の事業を展開するモイアの事業を紹介した。

モイアは、フォルクスワーゲン製のバンを活用したライドプーリング(乗り合い)事業を提供する。ライドプーリングは、自家用車と公共交通機関の中間的な役割として、様々な乗客と移動経路を束ね運行車両を削減することで、渋滞に悩む欧州の都市部におけるサービスの有効性をアピールする。モイアの主な顧客は、バスや鉄道などの公共交通事業者だそうで、既存サービスを補完し利便性を高められるほか、乗り合いによる運用効率の向上を目指すタクシー会社にもサービスを提供しているそうだ。なおベッカー氏によると、同社が自動運転領域へと事業を拡大した背景には、欧州におけるドライバーの制約があるという。「ドライバーのシフトは事前に組まなければいけませんし、法律に従って上限内での運転時間と休憩時間の確保も必要です。もし需要のピークが休憩時間と重なってしまうと、車両が空いているのに乗客を乗せることができません」(ベッカー氏)

ベッカー氏は、自動運転技術はこれらの課題を解決し、柔軟で効率的な車両の利用を促進できると話す。ドライバー不足は日本でも深刻な課題だが、欧州でもバスの減便や廃線など影響が表面化しているそうだ。「同じ台数でより多くの乗客を運べるようになるため、ドライバーにかかるコストも減少させることができます」(ベッカー氏)

モイアは現在、海外の事業者自らが自動運転モビリティサービスを提供するための「ターンキー・ソリューション」を提供している。ターンキー・ソリューションの内訳は、「自動運転車両」と「車両・サービスを管理運営するためのソフトウェアプラットフォーム」、「導入支援」で構成されている。特徴はシステムといったソフト面だけでなく「車両」というハードもセットで提供する点だろう。モイアの自動運転車両はフォルクスワーゲン「ID.Buzz」をベースにしており、自動運転レベル4に対応しているそうだ。13のカメラや9つのLiDAR、5つのレーダーにコンピュータユニットを搭載し、高精度3Dマップも事前に用意され、車内にはドライバーやスタッフが同乗しないため、「SOSボタン」や、遠隔監視センターとビデオ通話が可能な「サポートボタン」も設置されていることを紹介した。

ベッカー氏によると、この車両はフォルクスワーゲンの量産ラインで製造されており、自動運転のハードウェアもソフトウェアも、ベース車両と高度に統合されているという。サービスの安全性に関してベッカー氏によると、すべての乗員がシートベルトを締めないと運行できない仕組みとなっており、AIベースの乗客マネージメントシステム(キャビンAI)がカメラでキャビン内の状況を認識。AIが判断できない場合は、オペレーターに通知がいくシステムだそうだ。最後にベッカー氏は、自動運転サービスを社会実装させるための重要な点を3つ紹介した。1つ目が、安全性と信頼性。2つ目がスケーラビリティ、3つ目が信頼とコンプライアンスだそうだ。

「モイアは常に行政当局との対話を重ね、行政側が安心感を持ち、取り組みに納得してもらえることを大切にしています。そのためには法令遵守と信頼の確立は必要不可欠です。このアプローチは日本でも同様で、同じ考え方で進めていくべきものだと考えています」(ベッカー氏)

◆ブースで出展者と来場者が積極的に交流

「レスポンス カンファレンス2026」「レスポンス カンファレンス2026」

行政、事業者、OEMメーカーの異なる視点、さらには日本だけでなく、技術で先行する米国・中国や欧州での取り組みなど、多角的かつ網羅的に知り得る貴重な機会となった今回の「レスポンス カンファレンス 2026」。会場では、位置情報を中心としたソリューション開発などを行うHEREテクノロジーや、クラウドや通信技術、AI技術を融合させたOut-Car領域のエンジニアリングのデジタル化をリードするAstemo Cypremosがブースを出展した。

位置情報・地図データサービスのグローバルリーダーであるHEREテクノロジー。同社のサービスを搭載した車両は2億3800万台にも達し、自動運転マップ搭載車も6300万台以上が走行する。HEREテクノロジーは、2025年の中国における輸出台数上位10社すべてと取引があることから、来場者が積極的な情報交換を行なっていた姿が印象的だった。

「レスポンス カンファレンス2026」「レスポンス カンファレンス2026」

一方、Astemoが100%出資するSDVのソフトウェア・クラウドサービス企業であるAstemo Cypremosは、2025年にインドのウィプロ・リミテッドと提携しSDV時代のデジタルエンジニアリングを支援するIoVプラットフォームの構築と運用を開始している。近年の自動車開発に欠かせないデータ分析やデジタルツインによる開発支援、シミュレーターなどの機能を有していることから、こちらも多くの問い合わせを受けていた。

レスポンスを運営するイード オートモーティブ事業部の部長である山本ちひろ氏によると、来年の開催だけでなく、今後はウェブメディアのコンテンツ展開以外にもさらなるイベントの開催などを予定しているという。

《橋本 隆志》

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