ブリヂストンが進めている空気を使わないタイヤ「 AirFree」の実証実験が富山市で開始。その出発式を取材した。
◆ 空気を使わないタイヤ「 AirFree」とは
「AirFree」外観AirFreeは2008年より「エアフリーコンセプト」として技術開発が進められてきた空気を使わないタイヤ。進化を重ね、現在はブリヂストンの技術センターがある東京都小平市を中心に、奥多摩のワインディングなどで同社によるテストが行われ続けている。
駆動は8輪。操舵は前側6輪で行われる
AirFreeは空気を使わないことでパンクという空気入りタイヤの宿命的なトラブルを完全に回避できることが最大のメリット。中心の黒い部分は金属製のホイール、青い樹脂部分が従来タイヤのケースに相当し、空気が担っていた役割も果たす。路面と接するトレッドの部分は青いケース部分の外周にベルトのように貼り付けられている。
トレッドが減った場合はこのゴム部分を交換するリトレッド(トレッド貼り替え)が行われる。トラックなどのリトレッドではトレッド部分を剥がして新たにベルト状のトレッドを貼り付けるが、AirFreeのリトレッドは乗用車のタイヤ交換に近いリング状のトレッドを交換する方式が採られる。青い樹脂部分は熱可塑性樹脂で、破損が生じた場合や使用限界が訪れたときは破砕したのちに再成形し新しいAirFreeへと再生できる。
◆ 富山市での実証「 Boule BaaS」への装着が決定
歩道を走る「Boule BaaS(ブールバース)」は歩行者信号を守って運行するそうしたAirFreeがついに実証実験の段階に入り、富山市で運行されている次世代モビリティ「Boule BaaS(ブールバース)」への装着が決定した。Boule BaaSは群馬県のシンクトゥギャザーが製造する8輪車の総輪駆動、6輪操舵が大きな特徴の「eCOM-8^2」をベースに、同社が富山市での運行についてマッチングを図ったモデルで、「グリーンスローモビリティ」と呼ばれるジャンルに属し、最高速度は20km/h以下に抑えられている。出発式では所用で欠席を余儀なくされた藤井裕久富山市長の代理として、富山市活力都市創造部長の深山隆氏が市長の挨拶文を読み上げた。
藤井裕久市長のあいさつを読み上げる富山市活力都市創造部長の深山隆氏「本市は、『公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり』を政策の柱に据え、さまざまな施策に取り組んでおります。令和2年度からは持続可能な地域公共交通網の形成を目指し、市民の生活の足の確保や観光地を回遊する新たな移動手段として、環境にやさしく低速で安全なグリーンスローモビリティの活用可能性を検証するため社会実験を実施してまいりました」
「令和5年度からは富山駅北地区において本格運行を実現することとなり、『Boule BaaS』は、公共交通結節点からのファーストワンマイル、ラストワンマイルとして、従来の公共交通を補完する役割を担ってまいりました」
「多様化する市民ニーズ、少子高齢化に伴う労働力不足といった課題が深刻化していく地方都市において、官民連携での取り組みは不可欠なものと考えており、地域社会を支えるモビリティの維持・発展を目指す株式会社ブリヂストンのAirFreeと本事業の協働による公道実証実験が、公共交通が抱えるさまざまな課題への解決の端緒となり、さらには本市の活性化・地域振興などに寄与することを期待しております」
またブリヂストンBSJP直需タイヤ戦略企画/新モビリティ事業部門長の太田正樹氏は、
ブリヂストンBSJP直需タイヤ戦略企画/新モビリティ事業部門長の太田正樹氏「ブリヂストンは、AirFreeを探索事業として、サステナビリティを中核に社会価値の創造を目指す『新たな種まき』と位置付けています。『地域のモビリティを支える』というミッションのもと、AirFreeの開発、実証、価値検証に取り組んでいます。この度、富山市との共創活動が具体化し、全国初の取り組みとして公道での実証実験を開始できることを大変うれしく思います」
「この活動により、『AirFree』の安心・安全、移動を止めない、サステナビリティといった提供価値を検証し、2026年の社会実装に向けてさらなる価値創造につなげていきたいと考えております。ブリヂストンは、この共創を通じて、企業コミットメント『Bridgestone E8 Commitment』で掲げる『Empowerment すべての人が自分らしい毎日を歩める社会づくり』『Extension 人とモノの移動を止めず、さらにその革新を支えていくこと』にコミットしていきます」とスピーチした。
◆走行ルートと乗り心地、実証期間
出発式後に走り出した「AirFree」を履いた「Boule BaaS(ブールバース)」Boule BaaSは富山駅北口広場から富山県美術館富岩水上ライン乗り場前、約1.5kmが走行ルート。循環運用ではなく「富山駅北口広場発」「富山県美術館富岩水上ライン乗り場前発」でそれぞれ100円の料金が必要となる。富山駅北口からKNB前までは、富山駅北口広場発と富山県美術館富岩水上ライン乗り場前発でルートが異なっていて、若干距離の違いがある。
Boule BaaSは車道ではなく歩道を走行、速度も歩行者と同程度。富山駅北口エリアの歩道は非常に広いため、歩道を走っていてもまったく問題ないだろう。交差点で歩行者用信号待ちをしている姿はなんとも印象的であった。筆者はブリヂストンの小平技術センターでAirFreeが装着された同仕様のBoule BaaSの客席に試乗したが、とくに乗り心地が劣るような印象はなく、とても快適に移動ができた。テストコースではなく街並みを散策しながらの乗車はとても楽しいものとなるだろう。
Boule BaaSは雪の降る期間は運用されないので、今季の実証実験は11月24日までとなる。今季はブリヂストンの担当者も富山近郊に待機するが、来期に予定されている実証実験では運行を担当するブールバールエリアマネジメント富山に任せて、本格的な実証実験とする予定とのことだ。










