今秋にフルモデルチェンジする三菱『デリカミニ』。先代は『eKクロススペース』のマイナーチェンジだったため、エクステリア(外観)と比べるとインテリア(内装)は大きく変更されなかった。新型は一からの開発となったことで、デリカミニらしさを盛り込むことができたという。
「先代はどうしてもインテリアがやりきれなかった部分がありましたので、自分としては“デリカミニバージョン0.8”レベルだったんです。しかし新型ではゼロからエクステリアとインテリアを含めて1台のクルマとして完成させることができました。これまでデリカミニはデリカを追いかけてきたようなところもあるのですが、新型ではデリカというキャラクターと並列してデリカミニという強いキャラクターを表現出来たと思っています」
そう語るのは、デリカミニのインテリアデザインを手がけた、三菱デザイン本部デザイン・戦略部デザインマネージャー(インテリアデザイン担当)の小池矩仁彦さんだ。

◆日産ルークスとは違う、三菱独自のデザイン
新型デリカミニのデザインコンセプトは“開け、冒険のトビラ”だ。小池さんは、「車両全体のコンセプト、“デイリーアドベンチャー”は先代から進化させたので#2になりました。先代デリカミニのコンセプトをエンハンス(強化)したからです」。
これを踏まえてインテリアでは、「このクルマを使ってアウトドアに行ってみよう、デイリーキャンプに行ってみたいなど、新たな扉を開けて、冒険に一歩踏み出してほしいという思いを込めたのがこのワードです」と述べる。
インテリアでこだわりのひとつが“広さ感”だ。「エクステリアからも感じられますが、そこに加えてインテリアではギア感、先進感も大切にしています」と小池さん。そしてもうひとつ、「高品質感の3本柱で、いずれもしっかりとブラッシュアップしています」とのこと。

デリカミニは日産と設立したNMKVでの共同開発車(日産は『ルークス』として販売)でありながら、インパネ周りではデリカミニ専用のデザインが取り入れられた。具体的には、助手席前のグリップ形状のインパネや、走行モードを切り替えるためのテレインダイヤルだ。小池さんは、「エリアとしては少ないんですが、特にグリップ周りのところは機能的ですし、そこはトレイ形状にしただけではなく、底面に特徴的なビードが入っているんです」という。このビードによって、コインなどを入れても取り出しやすくなっている。
また、「ペンなどを置くと当然このビードに引っかかるので転がりにくい。さらに、車両前側にちょっと傾斜し、かつビードの片側を斜面にすることで取り出しやすい工夫もしています。ここで子供がミニカーで遊べたり、車中泊した時にこのビートにiPadなどを立てかけて寝ながら見ることも出来ます。まさにファンクショナルビートとしてデザインしています」とアピールする。

また、ドアトリムのシボも独特だ。「“マクログレイン”と呼んでいるんですが、アウトドア用品の網込みなどからにヒントを得て、剛性感もありながら柔らかく、また質感も高く見せています」と小池さん。「人に近いところに柔らかく質感の高いものを使いたいという考えで、通常はソフトパットなどを配します。ただ、軽自動車なので限られた予算の中ではなかなか難しいことから、柔らかいものに見える表情やパターン、色を使いました」。さらに、「型物なので、汚れた時もスッと拭いてもらえば何の問題もありません。そういった使い勝手もケアも視野に入れてデザインしました」という。
そのドアパネルでは色の切り替えも印象的だ。その理由も、「人に近いところにおしゃれなカラーや柔らかく感じる形状を持ってきたいからです」という。そのカラーは、「アウトドアの大きなトレンドとしてカーキのようなカラーが使われています。またこういう色を使うと本能的に少しアウトドアを感じるので、出かけてみたいなという感情になることも狙いました。ただ、行き過ぎてしまうとミリタリーのようになりますので、そこは注意しています」と小池さん。「ちょうど良い少しカジュアル、少しリラックスした感じを考えながらデザインしています」とのことだった。

◆水平基調と「四角」のモチーフ
インパネ周りは横基調で広がりを感じさせるデザインとなっている。コンセプトは三菱車に共通する「ホリゾンタルアクシス」だ。視界を水平にすることで、車体が傾くような時でも感覚的に姿勢がわかるというものだ。
その上で、「軽自動車では助手席前のベント(エアコンの吹き出し口)などは大きくなりがちで、モダンに見えないネガなポイントになることが多くあります。そこをどう新しく見せるかを突き詰めていくと、(スリットは)細くできませんが、一本スリットを多くすることで細く見えるようにしたのです。またモノリス(ディスプレイ)も横方向ですから、ワイド感は強調できたかなと思います」とコメント。