2025年夏シーズンのカロッツェリアの新商品の発表会が東京有明で開催された。楽ナビ、ディスプレイオーディオ、さらにはデジタルプロセッサーと盛りだくさんの内容および車両展示も実施され、充実の発表内容となったので注目点を中心に紹介してみよう。
◆楽ナビの大幅進化とスマホ連携

今回の新商品発表会の目玉となったのは、「楽ナビ」「ディスプレイオーディオ」「デジタルプロセッサー」の3カテゴリーだ。いずれも時代の流れに合わせた進化と集約が込められ、カーナビやオーディオに興味のある既存ユーザーはもちろん、スマホ世代の新しいユーザー層にも刺さる商品になっているのも大きな特徴となった。
真っ先に注目したのは、新しくなった楽ナビだ。今回の進化で最大の目玉となったのはApple CarPlay、 Android Autoへの対応だ(いずれもワイヤレス接続可能)。インダッシュ9V型、フローティングモデルから8V型、7V型まで、機能や画面サイズで幅広いバリエーションを誇る楽ナビだが、そのすべてのモデルにApple CarPlayやAndroid Autoへの対応が盛り込まれている点も注目だ。
従来は、スマホ接続を前提とした場合にはディスプレイオーディオを選ぶケースが多かったのだが、新しい楽ナビは、カーナビは使い勝手の良い楽ナビ内蔵のナビ機能を使いつつ、オーディオや映像環境はスマホのアプリをフル活用する両刀の使いが可能になった。従来型のカーナビの使い勝手の良さを知っているベテランユーザーはもちろん、スマホ接続を基本とする若いユーザー層にも響く、新しいタイプのカーナビになったのも注目点だろう。

Apple CarPlayやAndroid Autoを利用することによるメリットのひとつは、カーナビの大きな画面でスマホのアプリを利用できる点、さらにカーナビのマイクを使ってiPhoneやAndroidの音声操作も可能になることも同モデルの魅力で、楽曲の選曲なども音声操作で完結するのも車内で使いやすく、何と言っても現代風だ。スマホの音楽再生だけなら従来から備わっているBluetooth接続でも可能(トラックチェンジまではできる)が、フォルダやプレイリストの切り替えなども含めてすべての操作をカーナビ画面で行えるのも、Apple CarPlayやAndroid Autoを利用するメリットとなっている。また映像アプリをカーナビ画面で使いこなすのもスマホを接続する上での欠かせない要因になっている。
楽ナビはこれまでもユーザーの使いやすさを徹底追求してきたカーナビだが、その現代的な進化はスマホ連携だった。車内でスマホをシームレスに使いたいという若いユーザーも納得できる新しいタイプのカーナビになった新しい楽ナビ、これは実はカーナビとしても大きな進化と言えるんじゃないだろうか。
◆ディスプレイオーディオの新モデル「DMH-SF600」

次に、今や車載センターユニットの中心的存在となっているディスプレイオーディオの新作、「DMH-SF600」。すでに10インチのフラッグシップモデルである「DMH-SF900」やハイレゾ対応の「DMH-SF700」「DMH-SZ700」などの多彩なバリエーションを用意するカロッツェリアだが、そこに加わったのが9V型フローティングディスプレイを備えた「DMH-SF600」だ。ディスプレイオーディオに対する近年の大きなニーズであるApple CarPlay、Android Autoのワイヤレス接続にも対応するのも特徴。さらに車内オーディオのセンターユニットとしての役目が重要視されるディスプレイオーディオなので高音質であることも大きな魅力となった。

会場には「DMH-SF600」を搭載したデモカーとしてハスラーが用意され、スピーカーには同社の中核モデルであるCシリーズ(TS-C1740S)を用い、サブウーファーにはTS-WX140DAを搭載する仕様だった。「DMH-SF600」内蔵のタイムアライメントなどの調整機能を駆使したサウンドは心地良く空間表現も豊かだ。またTS-C1740Sによるサウンドは華やかで立体的な音像が浮かび上がる仕上がり。このサウンドを体感すると車内で音楽を楽しむ環境としては抜群のコスパだと感じさせるものだった。
◆新世代デジタルプロセッサーの登場とその実力の紹介

筆者が個人的に大注目したのは、新作のデジタルプロセッサーだ。巷ではDSPアンプと呼ばれるとおり、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)とパワーアンプを一体化したユニットだ。その働きは近年の純正ディスプレイオーディオなどにサウンド的に“もの足りなさ”を感じているユーザーにぴったりで、音場や音を大きくグレードアップすることができるユニットだ。しかも純正システムに割り込ませる形で接続するのでディスプレイオーディオやスピーカーは純正を使うことが可能なのもハードルが低い。その上で、詳細な調整機能と内蔵する質の高いパワーアンプによって車内のオーディオ環境を高音質化することができるのだ。

今シーズンに発売が予定されているのは、8チャンネル入力/10チャンネル出力のDEQ-7000Aと、4チャンネル入力/6チャンネル出力のDEQ-2000Aの2モデル。純正に取り付けるケースを考えればスタンダードモデルのDEQ-2000Aが適当だろう。実際に当日デモカーとして用意されたアルファードには純正ディスプレイオーディオ/純正スピーカー(フロント&リア)をそのまま使った状態でDEQ-2000Aを割り込ませて設置(手元のボタン操作でデジタルプロセッサーの有無を切り替えられる仕様)した試聴環境が用意された。

フロント左右/リア左右のタイムアライメント、イコライザー、レベル調整などを駆使したサウンドは、純正サウンドに対して大きく音像が広がり、横方向/奥行き方向に豊かな空間を感じさせる音に進化しているのが好印象だ。しかも音の響きにもツヤ感が加わり、平板だったサウンドが粒立ってくる感覚も、デジタルプロセッサーによる効果だろう。また帯域のバランスも大きく改善され、特に低域の豊かさや中高域の音の厚みもアップ。躍動感が感じられる音楽に変貌していたのも素晴らしかった。
上位モデルのDEQ-7000Aは8チャンネルの出力を持つため、例えばツイーター/ミッドバスやリアスピーカーをすべて個別にコントロールするマルチシステムへの発展も可能だ。本格的な高音質オーディオへの可能性も秘める同ユニットの登場が待たれる。
カーナビやディスプレイオーディオの機能性の高さはもちろんだが、すべてのユニットで“サウンドの良さ”をアピールしたのも、カロッツェリアらしい取り組みだと感じた、今回の新商品発表会。実は密かにオーディオレス仕様が増えている昨今、車内で好きな音楽を高音質で聴くことの醍醐味を味わうことを条件に、カーナビ、ディスプレイオーディオ(さらにはデジタルプロセッサー)選びを実践してみると、新しいクルマの楽しみがきっと見つかるはずだ。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後、出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティングを中心に活動中。