東芝は、ニオブチタン酸化物(NTO)を負極に用いたリチウムイオン電池「SCiB Nb」の製造を開始し、有償サンプルの提供も開始すると発表した。NTO負極を採用したリチウムイオン電池の販売は世界初となる。
本製品は、電気自動車などに使用されているリン酸鉄リチウム系電池(LFP電池)に匹敵する体積エネルギー密度と、従来のSCiBの特長である急速充電・長寿命の両立を実現している。10分間の充電で約80%の超急速充電が可能で、実用的な部分急速充電と放電を1万5000回以上繰り返しても80%以上の電池容量を維持する長寿命性能を有する。
東芝は、世界一位のニオブ生産量を誇るブラジルのCBMMおよび同社の日本総代理店である双日と連携し、高い稼働率が求められるバスやトラックなどの大型商用電気自動車を中心に本製品の導入を進める。
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、あらゆるモビリティの電動化が世界中で進んでおり、利便性および稼働率向上の観点から急速充電に対する要求が高まっている。本製品は超急速充電が可能で、バスやトラックなど特定ルートを高い稼働率で運行する大型商用電気自動車では、ルート内の特定箇所で高頻度に急速充電することで電池搭載量を減らすことができる。
また、従来のLFP電池は高いエネルギー密度が得られるが、急速充電を繰り返すことで負極で金属リチウムが析出し内部短絡が起こるリスクがある。一方、本製品に搭載している負極材NTOは、SCiBの負極材であるチタン酸リチウム(LTO)と同様、金属リチウムの析出が原理的に起こらないため、急速充電を繰り返しても長期間安心して使うことができる。
東芝は2021年にCBMMおよび双日とNTOを用いた次世代リチウムイオン電池の商業化に向けた共同開発契約を締結し、2024年から約10分で超急速充電が可能な電気バスの試作車をアラシャ鉱山で走行させる実証実験を開始するなど、事業化およびサプライチェーン構築に向けた活動を積極的に推進している。