ボッシュが6月のル・マン24時間レースに向けて、水素燃料電池駆動のレーシングカー『H24EVO』を発表した。
モータースポーツの世界は変わりつつある。世界中の現役選手やファンの間で環境意識が高まり、車両開発においても排出ガスや気候保護がますます重要になっている。ボッシュモータースポーツは、水素をモータースポーツで活用するコンセプトを開発し、この変革を積極的に推進している。
ボッシュモータースポーツの水素ポートフォリオには、高性能水素エンジン向けの開発や、車両内で燃料を安全かつ効率的に貯蔵するためのシステムが含まれている。「ボッシュの先駆的なソリューションは、モータースポーツのパワートレインをより環境に優しくし、レースイベントの炭素排出量をさらに削減するのに役立つ」とボッシュモータースポーツのバイスプレジデント、インゴ・マウエル氏は語る。

モータースポーツ分野では現在、貯蔵コンセプトとして液体水素の使用が有力視されている。水素を液化するにはマイナス253度まで冷却し、断熱された低温車両タンクに最大約5バーの圧力で充填する。この形態では、水素はガス状貯蔵の代替方法よりも体積密度が高く、タンクがレースカー内でのスペースを大幅に節約できる。
水素貯蔵は燃料管理と安全コンセプトに高い要求を課す。ボッシュモータースポーツは、水素駆動システムのレースカーへの統合を容易にするため、液体水素貯蔵制御ユニット「L-HSCU」と対応する安全コンセプトを開発した。これにより、給油からタンク内貯蔵、燃料電池や内燃エンジンへの移送まで、車両内の貯蔵チェーン全体を制御・監視できる。

L-HSCUの最初の使用例は、MissionH24プログラムの一環として作られた燃料電池駆動のデモ車両のH24EVOだ。「耐久モータースポーツは新技術のテストに最適な環境。H24Projectの公式パートナーとして、ボッシュは豊富なモータースポーツ経験と水素専門知識をH24EVOの開発に貢献し、水素が世界のモータースポーツにとって実行可能な代替手段であることを実証できる」とマウエル氏は説明している。
H24EVOはル・マン24時間レースの「H2ビレッジ」に展示され、6月12日と14日に行われる水素レーシングカーだけのデモ走行に参加する予定だ。