エンジンはその排気量に応じて空気を吸い込んでその量に合わせてガソリンを噴射し、爆発させてパワーを得ている。そのため基本的にエンジンパワーは排気量に比例する。そこで排気量以上の空気を押し込む装置として、過給器が開発された。
排気量以上にたくさんの空気を押し込めば、たくさんのガソリンも噴くことができ、より強い爆発力を得られる。小型なエンジンでも大きなパワーとトルクを取り出せるので、クルマを小型化でき、大パワーを得られるというメリットがある。
◆2種の過給器“ターボ”と“スーパーチャージャー”の違いを学ぶ
過給器には大きく分けてターボとスーパーチャージャーの2種類が存在する。そしてアフターパーツでは、もともとNAのエンジンのクルマに対してターボやスーパーチャージャーをあとから装着するキットも発売されている。 それらはどんな違いがあるのだろうか。
ターボは、排ガスのエネルギーを使ってエンジンに空気を押し込んでいる。エネルギーを使ってと言っているが、要するに排ガスの勢いで風車を回し、その力でエンジンに空気を押し込んでいる。特徴は排ガスの勢いを使っているので、エネルギーのロスが少ないこと。
ただアクセルを踏み込んでエンジンの回転が高まり、排ガスが勢い良く出てその勢いでタービンを回し、そこから過給をするので、アクセルを踏んでから実際にパワーが出るまでにタイムラグが起きやすい。
このタイムラグのことをターボラグと呼び、大きなパワーを出そうとするほどタービンは大きく回りにくくなるので、ターボラグが大きくなる。アクセルを踏んでもなかなかパワーが出ず、遅れて強烈なパワーが出る。ドッカンターボと呼ばれる特性になりやすい。
スーパーチャージャーはエンジンのクランクシャフトの回転力を使って燃焼室に空気を押し込む装置。ターボと違って、タービンをクランクシャフトでダイレクトに回しているので、タイムラグが少なくアクセルを踏むと素早く大きなパワーを取り出せるメリットがある。
だが、タービンがエンジンに空気を押し込む力は、すなわちクランクシャフトの回転数に比例するのでエンジンが高回転に回れば回るほどパワーが発生する特性になる。アクセル操作に対するタイムラグはほとんどないが、低中回転から大きなパワーを取り出すというよりも、高回転でのパワーアップに向いている。
とはいえ、エンジンに空気を押し込む力はもともとはクランクシャフトから来ているので、いわば抵抗である。なので、ある程度この抵抗によってパワーが相殺されるので、同等の大きさのタービンであればターボの方が大きなパワーを出せる。
◆コストによる違いはどれぐらいあるのか
このように構造の違いによってその特性は大きく異なっている。またコスト面でも違いが大きい。
ターボはエキゾーストマニホールドを専用品に交換し、そこにタービンを取り付ける必要がある。また素早く大きなパワーを取り出すにはできるだけエンジンに近い部分で、排ガスの勢いがあるうちに、タービンの羽に排気ガスをぶつけた方が良いのでレイアウト的な制約も大きい。コストがどうしても掛かりがちだ。
スーパーチャージャーはクランクシャフトにプーリーをつけてベルトを回すなど、多少の改造は必要になるが、ターボのように排気系には一切触れなくて良い。その分ターボよりもリーズナブルな価格で取り付けることができる。
HKSでは86/BRZ 向けにスーパーチャージャーキットとターボキットの両方をリリースしている。価格もリーズナブルで、取り付け工賃も安いのはスーパーチャージャー。価格はやや高くなるが、大きなパワーが出せるのがターボというキャラクラーだ。
その数値以上にパワーの出方は特性が異なっていて、スーパーチャージャーは回転に応じてパワーが高まっていくので、NAのまま排気量が大きくなったようなフィーリングになる。
ターボの場合は低中回転からドカンとトルクが立ち上がって、パワーがついてくるのでどちらかというと中回転域のトルクが大きくなり、高回転まで伸びるが印象的なのは中回転域のトルクの厚さだ。
なので、街乗りのパワー感としては正直ターボの方がその効果を感じやすい。サーキット走行などではコースによってギアのつながりなども関わるのでどちらが良いとは言えないが、一般的にミニサーキットではターボ車の方がタイムが出しやすく、国際レーシングコースのような大きなコースでは、スーパーチャージャーの方がマッチングが良いと言われている。また、高回転に従ってパワーが出るスーパーチャージャーはミッションに掛かる負担も少ないと言われる。
どちらもワンオフでショップで取り付けるとなるとかなり高額になってしまうが、トヨタ『86』など一部の車種では取り付けキットが販売されているので、そのキットを使えば取り付けとセッティング、工賃等込みでどちらも100万円以下で施行することができる。決して安い金額ではないが、NAエンジンのチューニングに比べれば同金額で大幅なパワーアップが可能だ。