日野・三菱ふそう経営統合に賭ける、親会社を含めた4社の思い

左から日野自動車の小木曽聡社長、トヨタ自動車の佐藤恒治社長、ダイムラートラックのマーティン・ダウムCEO、三菱ふそうトラック・バスのカール・デッペンCEO
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  • 豪ブリスベン・トラックショーで公開した三菱ふそうの電気小型トラック eキャンター新型
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  • ダイムラートラック、三菱ふそう、日野およびトヨタ、CASE技術開発の加速を目指すとともに、三菱ふそうと日野を統合する基本合意書を締結
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日野自動車三菱ふそうトラック・バスは5月30日、両社が経営統合すると発表した。その会見には両社の親会社であるトヨタ自動車と独ダイムラートラックのトップも出席した。

◆世界の自動車のCO2排出の4割

トヨタ自動車の佐藤恒治社長は「カーボンニュートラルに向けては、世界の自動車のCO2排出の4割を占める商用車を環境に優しいモビリティに進化させていくことが不可欠だ。すなわち商用車の新しい未来をつくっていく挑戦が豊かなモビリティ社会の創造に重要な役割を果たしていく。その鍵を握るのが電動化や自動運転などのCASE技術である」と話し、こう強調した。

「CASE時代を生き抜くには、日本の商用車企業は世界と比べて規模が小さく、各社が単独で戦うことは厳しい状況だ。豊かなモビリティ社会を実現していくためには、競争のみならず、みんなで力を合わせていくことが強く求められる。今回4社での協業を通じて、CASE技術の普及を加速していきたい」

◆日野と三菱ふそうのブランドは存置

トヨタ自動車とダイムラートラックは2024年12月までに株式公開を目指す持ち株会社を設立し、その傘下に日野と三菱ふそうが入る。統合後は日野がトヨタの連結子会社から外れる。設立する新会社の下で開発・調達・生産に至るまでの統合メリットを生かす。日野、三菱ふそうのブランドについてはそのまま残し、それぞれが競争力を磨いていくことになる。

「日野と三菱ふそうは成功してきた日本のブランドである。2つのブランドを維持し、販売も日本だけでなく、グローバルでそれぞれ別のブランドとしてこのまま維持する。一方、最大限のシナジーを実現するため、開発・調達・生産などは共通化していく。日本の商用車メーカーとしては最強になる。それが、ダイムラートラックとトヨタが希望することだ」とダイムラートラックのマーティン・ダウム最高経営責任者(CEO)は説明する。

◆商用車の世界は協業関係が複雑

ただ、トヨタはいすゞ自動車とも資本提携をしている。いすゞはスウェーデンのボルボと提携し、ボルボはダイムラートラックとも燃料電池車で協業している。このように商用車の世界は協業関係が複雑になっており、それらとの兼ね合いはどうなっていくのか。

それに対して佐藤社長は「いすゞとも今後しっかり協業を続ける。CASEの技術は規格、規模、インフラなど多面的に取り組む必要がある。各社のプロジェクトベースで連携しながら、具体化のスピードを速めていく。いすゞを含めた大きな連携で、CASE普及を加速していきたい」と説明する。

◆期待されるシナジー

では、日野と三菱ふそうは統合会社で今後どのような展開を進め、どんなシナジー効果を発揮していこうとしているのか。

「東南アジア市場でのシナジーを期待している。三菱ふそうと日野の2社は強いブランドとネットワークがあり、サービス網も強い。互いに補完し合って競争力を高め、厳しい東南アジアで戦っていける。東南アジアは規制が国ごとに異なり、力を合わせて東南アジアでのカーボンニュートラルに貢献できる」と三菱ふそうのカール・デッペンCEOは話す。

一方、日野の小木曽聡社長は「カーボンニュートラルに向け、水素、燃料電池、内燃機関、合成燃料などいろいろな検討をしているが、個社では厳しい。東南アジア市場でライバルだった三菱ふそうと一緒になって、新しい技術で顧客に対応していく。100年に1度の変革期なので、同じ志を持って、2社ではなく4社で枠組みを作って、カーボンニュートラルにつなげていく」と説明する。その日野は現在、エンジン認証不正問題で最大のピンチに陥っている。

今回の4社による協業は、水素を活用した電動化技術や自動運転などのCASE技術を共同開発して普及を加速していくことを狙っているが、その背景には中国メーカーの存在があると言っていいだろう。中国メーカーは燃料電池を含む商用車のEV化シフトを加速しており、東南アジアでその存在感が大きくなり、日本や欧州メーカーにとって脅威となりつつある。それを阻止する狙いもありそうだ。

《山田清志》

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