自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]

自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]
  • 自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]
  • 自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]
  • 自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]
  • 自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]
  • 自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]
  • 自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]

来たる4月21日、オンラインセミナー「自動運転L4実装に向けたビジネスと法的対応~BOLDLY・ティアフォー~」が開催される。

セミナーに登壇するTIER IV(ティアフォー)は、自動運転のためのオープンソースソフトウェア「Autoware(オートウェア)」の開発を主導しているスタートアップ企業だ。マルチプラットフォーム上で動作するAutoware定義の自動運転キット(ADK*)をベースに、自動運転車両の商用化に向けたフルスタックソリューションの提供、そして自動運転の実証実験への数多くの参画で、自動運転ソフトウェアのトップ企業のひとつとして存在感を示している。

*ADK - Autonomous Driving Kit / 自動運転キット

4月21日開催のオンラインセミナー「自動運転L4実装に向けたビジネスと法的対応~BOLDLY・ティアフォー~」に登壇するプロダクトオーナーの飯田祐希氏に、セミナーの見どころを聞いた。

セミナーの詳細はこちらから

■オープンソースの自動運転ソフトウェアを軸にビジネスを展開

---:まずティアフォーのプロダクトについて教えていただけますか?

飯田氏:基本となるのが、弊社が開発を主導している自動運転ソフトウェアの「Autoware」です。AutowareはLinuxのようなオープンソースソフトウェアで、誰もが利用可能なソフトウェアです。そしてPilot.Autoは、Red Hat Enterprise Linux のようにエンタープライズ向けにカスタマイズされたものになります。

---:なるほど。基本的な機能はオープンソースのAutowareで、用途に応じてカスタマイズが必要な場合はPilot.Autoを利用する、ということですね。

飯田氏:そうですね。オープンソースの状態では、例えば富士山の5合目までしかいけませんが、ティアフォーのプラットフォームをご使用いただくことで、9合目まで行くことができ、最後の1合はお客様と一緒に開発することが可能です。

自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]

---:なぜ最後の部分をお客様と一緒に開発する必要があるのですか?

飯田氏:自動運転車両に求められる要件は、運用場所や走行環境によって大きく異なります。そのため、初めからお客様の要求を100%満たすことのできる製品はなかなか作れません。最後の部分はお客様と一緒に開発しなければならないため、そのような説明をしています。

---:Pilot.Autoにはどのような機能がありますか。

飯田氏:Pilot.Autoは車両側のソフトウェアで、5つのリファレンスデザインを用意しています。まず、アイサイトやテスラなど、一般的な自家用車向けの運転支援の用途です。そしていわゆるロボットタクシー、宅配用の小型ロボット 、自動運転のバス、物流用の自動搬送車両向けというようなものがあります。

自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]

例えば自動運転バスを作りたい場合、ロボバス・シャトル向けリファレンスデザインをベースにカスタマイズしていきます。ベースがあるため、とりあえず走行するところまで、すぐにできるようになっています。

---:リファレンスデザインを利用すれば、ある程度の機能はすぐに実装できるということですね。

飯田氏:はい。一方で、自動運転のシステムだけでは継続した開発・運用を行うことはできません。これをクラウド側でサポートするプラットフォームが「Web.Auto」です。

Web.Autoは、自動運転ソフトの開発支援と評価、地図データやシミュレーターの用意、テストシナリオの作成、運行管理システムやOTA(ワイヤレスによるソフトウェア更新)をサポートします。

自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]

また、自動運転にディープランニングを活用する場合、日々の学習が必要であり、そのためにはデータアセットの収集や管理、ディープランニングのためのツールが必要になります。Web.Autoは、このような課題をサポートするプラットフォームです。

■構内の自律移動カートは商用事例多数

---:ティアフォーの自動運転ソフトウェアを利用したプロダクトもあるようですね。

飯田氏:はい、小型のロボット向けからタクシーやバス向けまで、様々な難易度にODD(*)ごとに対応できるパッケージを用意しています。例えば、成田空港を走行している複数台遠隔型自動運転バス実証実験や、新宿やお台場を走行する自動運転タクシー実証実験のベースとなるものがあります。

*ODD - Operational Design Domainの略。自動運転システムが作動する前提となる走行環境条件のこと。

また、ヤマハ発動機とティアフォーの合弁会社であるeve autonomy(イヴ・オートノミー)が開発・提供している自動搬送ロボットもあります。これは商用リリース済みで、日本国内や海外で展開しようとしています。工場内の搬送ロボットで、電磁誘導型のものとは異なり、LiDARを搭載した自律移動型のロボットです。

自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]

このプロダクトは電磁誘導型のようにインフラ側を整備する必要がないため、工場の配送ルートなどを動的に変更できます。工場の製造ラインは日々変化することがあるため、柔軟に対応できる能力が非常に重要です。

このような特徴は、電磁誘導線型のAGVとの差別化要因になります。既に20~30の工場に導入され、商用プロダクトとしてリリースされています。

■ハードウェアにも関わってノウハウを蓄積

---:車両は既存のものを使うのでしょうか?センサーやアクチュエーターとの連携はどのように行われていますか?

飯田氏:既存の車両を改造して使用しています。基本的にはOEM様から車両の設計データ、CAN情報を開示していただき、その情報を基に必要に応じて追加改造を施します。eve autoでは、ヤマハ様が自動運転向け車両を開発した後に、車両の情報を開示していただき、その情報を基に自動運転車両を開発・構築しました。

研究開発目的だけであれば、既存の車両をハックすればいいのかもしれませんが、本気でレベル4を目指す場合、情報開示なしに対応するのはリスクが高いです。ティアフォーはソフトウェア会社ですが、自動運転レベル4に対応したベース車両が現状市場にほとんどないないため、自ら自動車の中のソフトや冗長化対応などを行っています。

それが本業ではないのですが(笑)、こういう活動をすることでレベル4を達成するために必要なノウハウを蓄積できているという側面もありますね。

自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]自動運転開発を10合目まで支援…ティアフォー プロダクトオーナー 飯田祐希氏[インタビュー]

ADKのみでは、自動運転車両としての安全性を保つことは難しく、本当に必要な要件が見えてこないことがあります。例えば、ブレーキの冗長系については、ブレーキメーカー様と話をしていますが、現在の市場の乗用車はレベル2で、冗長化は求められていないため、当然ですが既成品はありません。そのため、自分たちでノウハウを蓄積しながら対応せざるを得ないという状況です。

■配送カートとシャトルからレベル4が普及する

---:自動運転レベル4はどのような形で実現されていくのでしょうか。

飯田氏:難しい質問ですね。構内の配送カートは実用化されているので、まずはカートと低速走行のシャトルが先に来るでしょう。ただ、センサーの単価が非常に高いため、輸送能力とコストパフォーマンスが重要になってきます。

例えば、自動運転車両がセンサーやソフトも合わせて2000万円だとすると、30人乗りのバスであれば可能性はあるでしょうが、4人乗りの車両ではコストに見合わないでしょう。また、市場の需要性や過疎地の交通課題を解決する観点から考えると、自動運転バスと構内の配送カートが、2025年の段階では注目されるのではないでしょうか。

---:宅配ロボットや自動運転タクシーはどうでしょうか?

飯田氏:宅配ロボットは技術的に可能だと思いますが、採算面や実用性には課題が残ります。センサーが高価であり、都市部のマンションなどへの配達には依然として技術的な壁があります。

自動運転タクシーに関しては、都市部では人が運転するタクシーが現時点で存在するため、困っている人が少ない状況なので、相対的に必要性は低いと思われます。その視点で考えると、やはりシャトル型の自動運転サービスが先行して普及するのではないでしょうか。

飯田氏が登壇するオンラインセミナー「自動運転L4実装に向けたビジネスと法的対応~BOLDLY・ティアフォー~」は4月19日申込締切。

詳細・お申込はこちらから

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

+ 続きを読む

編集部おすすめのニュース

特集