【VW ID.4 新型試乗】VWが満を持して放つ!EV時代の新基準…南陽一浩

ポルシェ、アウディとともに充電ネットワークを整備

最大航続距離は561km

VWらしい合理的なインターフェース

『ポロ』よりも小回りが効く

VW ID.4 プロ・ローンチエディション
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欧州に遅れること約1年、ついに日本仕様のフォルクスワーゲン『ID.4』に日本の公道で試乗が叶った。

◆ポルシェ、アウディとともに充電ネットワークを整備

VW ID.4 プロ・ローンチエディションVW ID.4 プロ・ローンチエディション

2015年のパリ協定にもっとも早くコミットした自動車メーカーであるフォルクスワーゲン(以下VW)が電動化戦略に前のめりなのは周知の事実で、昨年は「加速ストラテジー」を発表して電動化やデジタル関連技術に180億ユーロ(約2.6兆円)を投資することを表明。2030年までに生産からリサイクルまでCO2排出量をマイナス40%、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという「Way to zero」を掲げている。

その柱をなすのが、EVを人々により身近なものとするID.シリーズの3/4/5/6/バズ、というラインナップだ。中でもID.4はVWのフルEV第1弾。欧州以外にもアメリカや中国で生産される世界戦略車で、日本市場は輸出先としてはもっとも早い導入先のひとつという。

日本仕様は当然、急速充電用にCHAdeMO(チャデモ)と家庭充電用に200Vの給電口を備え、急速充電の速さ目安としては残量警告灯点灯からリチャージして、90kW規格のCHAdeMOなら40分で約80%という。しかし何よりVWが強力に整えてきたのは、自社というかグループによる充電ネットワークだ。

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ポルシェやアウディと構成する「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」へ、VWジャパンがID.4発売と同時の11月22日より加盟し、サービス開始するのだ。PCAはオーナー専用の充電ネットワークとしておもにディーラーで全国158拠点に展開し、一方でID.4を新車購入時にセットとなる「VW充電カード」は、e-モビリティパワー社が提供する充電ネットワークにも乗り入れられ、1年間は90分/月まで急速充電利用料金と年会費が、こちらも無償提供となる。

のみならず、ローンチエディションなら最初の1年間はPCA年会費と同ネットワーク内の60分/月まで充電器利用料は無料。さらに家庭用普通充電器の設置費用10万円サポートに加え、5年後に専用の残価設定がなされる。つまり急速充電を30分ワンショットと思えば、VWグループ内ネットワークなら月2回使ってもゼロ、外のネットワークでも月3回まで最初の1年間は同じくゼロ。購入にあたって無論、公的補助金や助成金も手当されるが、自社プログラムでユーザーの初期投資やランニングコスト、買い替えのすべてにわたるフォロー体制を固めてきた。

◆最大航続距離は561km

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かくしてハードウェアとしてもID.4は入念に練られている。今回の試乗車は、バッテリー容量で52kWh・WLTCモードの最大航続距離が388kmある「ライト」と、77kWh・561kmに及ぶ「プロ」の2グレードあるうち、後者の「ローンチエディション」だった。装備の違いもあるものの車両価格はそれぞれ、499万9000円と635万5000円となる。

まず全長4585×全幅1850×全高1640mmの外寸は、VW『ティグアン』に近く欧州Cセグ相当のSUVだが、2770mmというホイールベースはティグアンの2675mmより95mmも長い。でもパッと見にも実車を前にしても、ID.4はティグアンほど大ぶりに見えないところがある。それもそのはず、ショルダーラインは高いが空力抵抗はCD値にして0.28と、ID.4の空力は恐ろしく磨き込まれている。

VW社内では「風が作ったような」と表現するそうだが、シャープさと緩やかさが同居しながら抑揚のある、滑らかなボンネットラインからボディサイドのキャラクターラインは、従来的なドイツ車らしからぬ、柔らかさに満ちている。Aピラーから厚めのCピラーにかけてのクローム使いは『Tロック』辺りに通じる最新のVWらしさで、効率と斬新さ、安心感を融合したVWのニュー・ルックをID.4はレベルの高いシルエットで実現している。

◆EV専用のMEBプラットフォームを採用

VW ID.4 プロ・ローンチエディションVW ID.4 プロ・ローンチエディション

EV専用のMEBプラットフォームを採用し、ボディワークにもひと癖ある。エンジンルームが無い分、室内長を広くとれるのがEVの特徴だが、VWは「スポーツバックに収まる」ほどコンパクトなPSMモーターによって、車両パッケージングの可能性を極限まで突き詰めてきた。モーターの搭載位置は後車軸の上で、昔日の『タイプI』ことビートルにも通じる後輪駆動だ。これとてノスタルジーで採用した訳ではなかろうが、もっと面白いのは、ボディの前後それぞれのセクションが繋がっておらず、車室のアンダーフロアを四隅の目いっぱいまで占拠するバッテリーのハウジング自体が、全体の剛性を兼ねている構造だ。

MQBプラットフォームでは前輪後輪のすぐ内側辺りを縦に、左右メンバーが前後方向に貫通していたが、MEBではホイールベース内で平べったい立方体のバッテリーハウジングから前後に、2本づつメンバーが生えているカタチとなる。真っ先に心配されるのは、ユーロNCAPが厳格化させてきた側方衝突だが、サイドメンバーに押し出し成型のアルミニウム構造材を用いることで衝撃からバッテリーを守るという。無論、乗員の生存空間をも同時に確保しつつ、バッテリーをとにかく変形させない発想といえる。当然、衝撃時に電流をカットオフする保護回路は備わるし、マスがホイールベース内に集められ低重心化する効能もついてくる。

バッテリーモジュールには、冷却水を循環させるフロアプレート状の温度管理システムが組み込まれており、あらゆる状況でバッテリーを約25度の理想的な温度に保とうとする。こればかりは乗り手の使い方や走らせ方次第、個体差も数年後にあるかもしれないが、いずれ走行中や急速充電時のマネージメントのみならず、日常的にバッテリー寿命をも念頭に温度管理することで兎に角、VWは8年または16万km走行後でも、バッテリー容量が元の70%維持されることを保証している。

◆VWらしい合理的なインターフェース

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外観から前置きが長くなったが、パッケージングの妙が強まるのは、室内に収まってからだ。ステッチパターンや素材は違うものの上位機種の『アルテオン』とほぼ同じ構造のシートで着座位置が高く、後席の足元含め室内も広々している。それでいてボンネットや左右両サイド、リアエンド方向への見切りがよくてサイズ感はつかみやすい。

人工皮革のレザレットとアートベロアと呼ばれる起毛素材のコンビも、ブラウンにグレーというシックなツートンで、最近のVW車としては飛びぬけて質感に優れた内装といえる。つまり結果的にひとクラス上のSUVに乗ったかのようでいてイージーに取り回せそうな、ほとんど矛盾した感覚すら覚えるのだ。

物理的ボタンは少ないが、押し込んでストロークするタイプではなく、静電気によるフェザータッチが大半。天井側、バックミラー手前のスライドを後方に指先でなぞれば、パノラミックガラスルーフから光がこぼれ、室内の広々感にブーストがかかる。ちなみにドライバーの右手側、ウインドウ開閉スイッチ左右はふたつのみ、前後の切替はタッチで行う必要があることに多少面食らうかもしれない。

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走り出す前にシステム電源をONにするには、ステアリングポスト右側のボタンを押すのだが、可笑しいのはICE(内燃機関車)のパーツが流用されていることで、なんと「START/ENGINE/STOP」と記される。

アクセルとブレーキそれぞれのペダルにもひと工夫あって、音楽プレーヤーよろしく▼(再生)とII(一時停止)が足裏の滑り止めとなる。ブレーキを踏んで電源をONにしても、センターコンソールの一等地はドリンクホルダーで、あとはシャッター付のコンソール収納が設けられているのみ。

シフトセレクタはステアリングの右側、眼前の5.31インチとやや小ぶりのメータークラスタと一体になっており、これとてステアリングコラムのテレスコピック調整とともに動く。メーターの視認性とシフト位置がステアリングに対して必ず一定になる構造といえる。

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最初は右ハンドル仕様のクルマで右手シフトすることに戸惑うが、メルセデスベンツ辺りは近年ずっとそうしている訳だし、それに前方向に回せばDレンジで前進、逆に手前方向に回せばRに入ってバック、あるいはPに入れる際だけボタンをストロークとともに押し込む例外的動作&感覚は、ロジックとして理解しやすい。フロアシフトは教習所でしか知らない若い世代ならば、より合理的な造りだろう。

◆『ポロ』よりも小回りが効く

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かくして横浜はみなとみらいの街から首都高にかけて、走り出してみた。加速感は、いかにもEVらしい瞬発力より、アクセル踏み込み始めの柔らかさ、その後に続くトルクの安定感と力強さが際立っていた。じつはライトでもプロでも、モーターの定格出力70kWと最大トルク値の310Nmは共通となっており、最高出力を170psと204psのどちらまで引っ張り上げるかプラス、バッテリー容量(=重量)の大小でプロの方が重量が嵩む分、単純な加速感ではライトの方が優るかもしれない。プロの0-100km/h加速は8.5秒と発表されている通り、強烈さとはほど遠い。

しかし登りの合流アプローチみたいな場面でも加速の持続感というか息の長さゆえ、易々と望む速度にのせられる。逆に長い下り坂のようなシーンでも、0.25Gまでは回生システムのみで減速できるため「交通の流れにのる」操り方では滅法、快適だ。しかもバンパーtoバンパーでは『ポロ』より優れる有効回転半径10.2mの小回り性ゆえ、街中でもきわめて取り回しやすい。

ただしEV特有のマスの巨大さは、時に感じさせられる。やや気になるのは低中速域の乗り心地だ。重心は低いが着座位置が相対的に高いせいか、EVっぽいといえばそれまでだが、もう少しフラットにいなしてほしい場面で細かなピッチングが入る。首都高の巡航速度域ぐらいでは、路面に吸いつく感覚がVWとしては薄い。本国仕様では用意された21インチでなく、20インチのパフォーマンスタイヤであるせいもあるかもだが、サイドウォール剛性のもっとしなやかなタイヤを履いたらパタつかなくなるのか、そんな興味は残る。

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また旋回フィールだが、車検証では前車軸1010kg:後車軸1130kgと、ほぼ前後重量配分は47:53で、回頭性にもたつきはない。むしろ低重心設計の恩恵で前マクファーソン、後マルチリンクのサスペンションも、固すぎない初期ロールでよく動き、コーナー前半の素直さはいい意味でEVらしくない。

だがリアタイヤがより太い(前235/50R20、後255/45R20)プロは直進安定性を意識したセッティングなのか、コーナー出口でアクセルオンを急ぐと外側へはらもうとする感覚が強く、多かれ少なかれステアリングで押さえ込む必要がある。ドライブモードを「スポーツ」に切り替えても、確かに力強くなるが劇的にハンドリング特性に大きな差はもたらされず、ステアリングも中立付近の手応えをやや増す程度。むしろこの手の芸当では、スポーツ版となる『ID.4 GTX』が911ライクになるのか。いずれ、そんな大人びた賢さといえる。

◆EVの時代にもピープルズ・カーの地平に挑むVW

いわばID.4の美点は、この大人しさというか、二重ガラス採用やサイドミラー形状に風切り音のコントロールなど、空力音響特性ごと磨かれた静粛性の高さにある。これまでのパーソナル移動体にはありえなかった、新しい質の居住空間でありながら、543~1575リットルという容量だけに終わらない実践的な荷室をも備え、乗用車としてパッケージごと進歩した点にある。

EVの時代にもピープルズ・カーの地平に挑むVWの姿が、ID.4で再確認もしくは発見できるはずだ。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。


《南陽一浩》

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