「EV元年」迎えたインド、バッテリースワップを巡る規制と実態【ベンガルール通信 その20】

シェア獲得のカギは政府・行政との連携

EV元年を迎えたインド、二輪・三輪が9割を占める

積極的に提携関係を築いて拡大し続ける「サンモビリティ」

ベンガルールは今日も渋滞中。お行儀良く待っていたら順番が来る、ことはない
  • ベンガルールは今日も渋滞中。お行儀良く待っていたら順番が来る、ことはない

南インドより、ナマスカーラ!

2022年8月上旬、ホンダがベンガルールにてバッテリースワップのサービスを開始した、との報道に接した(※)。昨年、西インド・ムンバイ近郊で実証実験を行っているという話に続いて、年末にはベンガルールに現地法人Honda Power Pack Energy India Pvt Ltdを設立したという話は聞こえていた。本年3月にはインド政府系石油大手のHPCL(Hindustan Petroleum Corporation Limited)との提携がプレスリリースされ、着実に歩みを進めている様子は関連事業を手掛ける仲間内でも注目を集めていた。

◆シェア獲得のカギは政府・行政との連携

ローンチが報じられた「Honda e:swap services」 は写真を見る限り、日本のバッテリーパックや交換ステーションと外観は同じようだが、インドなりの試行錯誤が施されているに違いないインドで庶民の足を担うオートリキシャ(タクシーや軽貨物車として広く使われる3輪車)は、主にガソリン、ディーゼルの他、市街地では天然ガスを燃料とする車両も多いが、いずれにせよ基本的には内燃機関が動力源。当面はこれら既存モデルを交換式バッテリーパック 「Honda Mobile Power Pack e:」 に対応するよう改造・改修した車両が本サービスの対象となるのだろう。

HPCLの運営する全国約2万か所のガソリンスタンドを基盤に、向こう1年間で市内に70のサービス拠点設営を目指し、その後、他の主要都市へも順次展開していく計画だという。新設法人の経営陣によると、当面はベンガルール市内におけるサービス網の拡充、バッテリーパックや交換ステーションを含む統合システムの信頼性確保、そして、サービス対象となるHonda Mobile Power Pack e:採用車両の拡大、といった3点に注力する予定だという。またひとつ、ベンガルールを「震源地」としたイノベーションへの挑戦が始まろうとしている。

バッテリーや充電にまつわる課題は世界共通の技術革新が基礎となっている為、ようやくリチウムイオンバッテリーの国産化が始まろうか、という段階の今のインドが世界的に見て進んでいる地域とは言い難い。しかしながら、新規事業のコンセプトが受け入れられるか否か、どこまで市場で広くシェアを獲れるかは、技術以外の要因が大きいのも事実。

良くも悪しくも何もかもが発展途上、社会全体に未充足な部分が多い故に、企業・事業として戦略的自由度が圧倒的に高いのが今のインド。同じ時代の同じ雰囲気を業界プレイヤーやユーザー、消費者と共感しながら、半歩、一歩、二歩先の顕在・潜在ニーズを察知して、どのような現実解を提供できるかが勝負のしどころだ。その際、いかに政府・行政を味方につけて追い風を得るかも、大きく競争を分ける。


《大和 倫之》

大和 倫之

大和倫之|大和合同会社 代表 南インドを拠点に、日本の知恵や技術を「グローバル化」する事業・コンサルティングを展開。欧・米の戦略コンサル、日系大手4社の事業開発担当としての世界各地での多業種に渡る経験を踏まえ、シンガポールを経てベンガルール移住。大和合同会社は、インドと日本を中心に、国境を越えて文化を紡ぐイノベーションの実践機関。多業種で市場開拓の実務を率いた経験から「インドで試行錯誤するベースキャンプ」を提供。インドで事業を営む「外国人」として、政府・組織・個人への提言・助言をしている。

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