【メルセデスベンツ Cクラス 新型試乗】サイズも値段も、成長曲線まっしぐら!…中村孝仁

ある意味では神が降臨してきた

先代MHEVが登場し3年、見事に実現したISG

輸入車がまた「憧れの存在」になってしまう

メルセデスベンツ Cクラス(C200)
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この数十年で、日本人の体形は見違えるほど大きくなった。その影響ではないだろうが、車も年を追うごとに肥大化している。メルセデスベンツ『Cクラス』も例外ではない。3サイズ=全長4793×全幅1820×全高1440mm。ホイールベース2865mm。まあ、ふた昔ほど前の『Eクラス』と肩を並べるサイズである。

そしてこのサイズ拡大は当然ながら、室内空間の拡大をもたらし、先日3人乗車でプチドライブを敢行した際に、後席の住人から独り言のように「広いなぁ」という言葉が漏れていた。

ある意味では神が降臨してきた

メルセデスベンツ Cクラス(C200)メルセデスベンツ Cクラス(C200)

それはともかくとして、新しいCクラスはこれまでのメルセデスの法則に則ってというべきだろうが、先行してデビューしている最新の『Sクラス』の技術をふんだんに盛り込んだ作りとされている。元々Cクラスの源流となった『190シリーズ』の作り方がそうだった。

当時はまだこれほどコンパクト(当時は)なモデルを作った経験がメルセデスにはなかったことから、とりあえずSクラスをそのまま縮めた車作りをした結果、オーバークォリティーという指摘を受けたものだった。しかし、考えてみればそれこそが、メルセデスの良心であり、車作りの真骨頂であったようにも思うわけである。

翻って今、メルセデスの車作りも随分と変化してきた。ある意味では神が降臨してきた。だから、元々は下々だった(失礼)アウディやBMWなどが、メルセデスに肩を並べる車種を投入してライバルと呼べる存在になったのだ…と私自身は思っている。それほどメルセデスベンツの車作りは特別感があった。

そして新しいCクラスである。インテリアを見渡すと巨大なディスプレイが二つ並ぶ様はまさにSクラスの生き写し。そしてオプションながらリアアクスルがステアする機構もやはりSクラス譲りである。ただし、どちらも差別化されていてディスプレイサイズは若干小型化し、リアアクスルの切れ角も4.5度から2.5度へと大人し目の設定である。

先代MHEVが登場し3年、見事に実現したISG

メルセデスベンツ Cクラス(C200)メルセデスベンツ Cクラス(C200)

同じだと思っていたエンジンも異なっていた。排気量そのものは1.5リットルで同じだが、48Vのマイルドハイブリッドシステムは従来のベルト駆動からSクラスと同じISGと呼ばれる組み込み型に変わっていた。先代のMHEVに試乗した時、

「ベルトレスでスマートかつ非常に効率的でスムーズな動き。だから、S450に乗った時はこれぞ革新的!と思ったものである。しかし考えてみればあっちは直6、こっちは直4で、そもそもスムーズネスでは断然あちらが上。それにあっちは電動スーパーチャージャーにターボの2本立てだが、さすがにこっちはスーパーチャージャーまでは無理。しかもISGではなくベルト駆動だというから、そうか、確かにコスト考えるとSクラスのようにはいかないな、と頭ではわかっていても、どうしても期待はしてしまう」

と書いたのだが、3年たったらそれが見事に実現した。各ベルト類が省かれて全長も短くなるというメリットだけではなく、アイドリングストップで気になるエンジンの「ブルン」がまるでない。そのかかり始めは気にしていればわかるものの、ほぼ振動なしにエンジンがかかる。こいつはスムーズだし有り難い。

次にこの電動モーターのアシスト自体も強力である。だから、確かに内燃機そのもののパフォーマンスも上がっているのだが、加速時にはそれ以上の強力な加速感を体感できる。残念ながら直4が奏でるサウンドは魅力的とは言い難い。これは昔からメルセデスが気を使わない部分でもある。BMWだったら確実に疑似音を作って魅力的なエンジンサウンドを作り上げるだろう。この辺りはメーカーの基本コンセプトの違いである。

最大2.5度のリアステアは写真に撮ってもほとんどわからないレベルなのだが、実際に走らせてみると確かに狭い曲がり角などではグイっと切れ込む印象が感じ取れるし、最小回転半径も小さくなっている。ボディが大きくなっても扱いやすさは従来以上で取り回しは楽である。

メルセデスベンツ Cクラス(C200)メルセデスベンツ Cクラス(C200)

輸入車がまた「憧れの存在」になってしまう

どうも最近少し気になるのはメルセデスの乗り心地だ。かつてはまるで鏡面を走るような快適さを誇ったものだが、どうもそのあたりに陰りが見える。今回のC200も快適であることは間違いないのだが、1歩突出した印象はなかった。ライバルたちもかつてのドイツ車とは違って、快適さに神経をとがらせていて、フラット感のある乗り味を演出することがうまくなっているので、まあ横並びかな?という印象。この辺りは本来降臨して欲しくなかった部分でもある。

面白かったのは、シート位置自動調整機構。身長を入力して「位置調整を開始」を押すと、ドライバーの体形に合ったシート位置に調整してくれるというもの。ただし、サバを読んで大きめの身長を入力すると痛い目に合う。それにかなり背もたれを倒したリラックス姿勢で調整してくれるから、個人的には合わなかったので微調整が必要だったが、大雑把という以上に的確なシートポジションを提供してくれる。

C200のお値段は車両本体価格が654万円(税込み)。これにリアアクスルステアリングを含むオプションを加えた合計価格は751万7000円。物価上昇と所得の上昇が一致しているヨーロッパやアメリカは妥当な値段なのかもしれないが、物価も所得も下がり気味の日本でこの値段はつらい。輸入車が憧れの存在になる感がまた強くなりそうな印象だった。

メルセデスベンツ Cクラス(C200)メルセデスベンツ Cクラス(C200)

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)

1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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