【VW パサート 新型試乗】昔ながらの質実剛健は今、個性となるか…中村孝仁

質実剛健、ぶれないクルマ作りのVW

フルモデルチェンジ、には至らなかったが

パサートの個性とは

VW パサート TDI エレガンス・アドバンス
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質実剛健、ぶれないクルマ作りのVW

フォルクスワーゲン(VW)と言えば、昔から質実剛健。敢えて言葉を解説するのもなんだが、飾り気がなく、中身は充実したまるで逞しい肝っ玉母さん的クルマである。

日本のモータリゼーション勃興期から今日に至るまでそのクルマ作りは全くぶれず、常に確かな性能と飾り気はないが高い性能と質感を誇ってきたのがVWだ。

そんなVWだが、今年に入ってどうも販売がかなり急降下している。勿論裏に事情はあるのかもしれないが、数字だけを見ると1月が対前年比-34.9%。2月-42.2%。3月-32.6%。これ、結構深刻な数値のような気がするのは多分僕だけではないはず。因みに数値はJAIA(日本自動車輸入組合)調べだ。2015年末に起きたディーゼルエンジンの違法問題に絡む信用失墜の影響かと思いきや、世界販売は回復しているからこの傾向は日本だけのようだ。

VWはその昔『ビートル』だけの単一車種ブランドで、それが災いして低迷したが、FWDの『ゴルフ』を投入して息を吹き返し、その後は世界ナンバー1の座を争う巨大メーカーに成長したのはご存知の通り。幾度かの危機も乗り越えて今日に至るから、長期的に見れば楽観的で良いのかもしれない。そして今は完全に電動化に舵を切っている印象が顕著で、「ID.」の名を冠したBEVが次から次へと発表されている。

フルモデルチェンジ、には至らなかったが

VW パサート TDI エレガンス・アドバンスVW パサート TDI エレガンス・アドバンス
そんな中、日本でマイナーチェンジが施された新しい『パサート』が発表された。FWDフォルクスワーゲンの祖がゴルフだと思っている読者が多いかもしれないが、純粋にVWが開発した最初のFWDモデルは、実はこのパサートである。つまりパサートこそ、現VWモデルレンジの中で最も長い歴史を誇るモデルであるのだ。

そのパサート、現行モデルはB8のコードネームを持つ8世代目で、誕生したのは2015年だから本来ならばフルチェンジされてしかるべき年頃。マイナーチェンジでお茶を濁された背景には、やはり電動化とセダン系の販売不振が影響しているのではないかと思われる。

そうは言ってもヨーロッパ系の、特にドイツ系ハイエンド車は相変わらずセダン系も良く売れている印象がある。今回のパサートにしても実際に試乗してみるとまさに冒頭述べた通り本当に質実剛健で、ほとんどけなすところというか、批判されるべきポイントなど見当たらない本当に良くできたセダンである。

今回力を入れて手直しした点はガソリンエンジン版が新たに1.5リットルに格上げされたこと。そしてDSGが従来の6速から7速に進化したこと。さらにADAS系とインフォテイメント系が進化したことなどである。といっても今回試乗したモデルはディーゼルで、こちらは従来通りEA288を搭載していて変わりはないのだが、DSGが変わったことで少し変化がある。

VW パサート TDI エレガンス・アドバンスVW パサート TDI エレガンス・アドバンス

パサートの個性とは

恐らく一番最初に量産のDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を世に出したのはVWのDSGのはず。初期は色々と問題もあった(僕はゴルフで5年間乗った)が、今のDSGは本当に良くできていて、渋滞モードでもほぼステップAT並のスムーズさを手に入れている。1速ギアが増えたことによるものだろうか、新しいパサートはパーシャルからの加速感が従来モデルよりも良くなっている印象が強い。

力強さという点では十分なのだが、静粛性という点ではまだ改善の余地があって、すでに体験しているEA288evoが搭載されればそこは俄然改善されるはずである。もっともパワーは下がるかもしれないが…。

残念ながら新しくなったLEDライトやインフォテイメント系は今回試す機会がなかった。少なくともパサートは本当に広々とした空間を乗員に提供し、快適さと安心感を与える典型的な良いクルマである。冒頭の質実剛健は機械製品としての良さについてはほぼ満点。

問題は近年富に個性を重視したクルマ選びがされる中で、パサートにはどのような個性があるのか?という点を考えた時の答えが見つけ出せなかった点だ。

VW パサート TDI エレガンス・アドバンスVW パサート TDI エレガンス・アドバンス

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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