【日産 GT-R50 by イタルデザイン】究極のGT-Rには過去のデザインモチーフも…プロジェクトブランディングマネージャー[インタビュー]

日産 GT-R50 by イタルデザイン
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日産クロッシング(東京都中央区)に3月31日まで展示している日産『GT-R50 by イタルデザイン(テストカー)』。GT-R生誕50周年と同時にイタリアのカロッツェリア、イタルデザイン創設50周年であることで、両社協業で作られたモデルである。そこで、担当者に詳細を聞いてみた。

日産がデザインし、イタルデザインで製造

----:まず初めに伺いたいのは、このクルマがどういう経緯で誕生したかです。なぜ日産とイタルデザインがコラボレーションして、このクルマを作成したのでしょうか。

エスシーアイ/GTR-50プロジェクトブランディングマネージャーのジャスティン・ガーディナーさん(以下敬称略):イタルデザインの創設50周年(1968年創業)と、GT-Rの50周年(1969年誕生)ということで、一緒に何かを作ろうとなりました。

最初はイタルデザインから日産にアプローチがありました。その時は『フェアレディZ』を考えていたのです。つまり“アルティメットZ”を作ろうということでした。しかし日産としては、世界的に見てもアルティメットということであれば、フェアレディZではなくGT-Rではないか提案しGT-Rとなったのです。

----:イタルデザインから日産にアプローチがあったとのことですが、なぜイタルデザインは日産を選んだのでしょう。

ジャスティン:イタルデザイン内部の人で、フェアレディZをものすごく好きな人がいたのです。そういった人間関係から始まり、それぞれ50年ですのでやろうとなりました。

----:このクルマのデザインはどちらが行ったのですか。

ジャスティン:このクルマのデザインはイタルデザインではなく、日産社内です。ロンドンやパリ、イタリア、厚木などを含めた全世界のデザイナーに対し、アルティメットGT-Rを提案してほしいというコンペティションでした。その中からロサンジェルスの若いデザイナーが提案したものが選ばれました。彼はそれまではドアハンドルや細かいところのデザインが多かったのですが、彼のプロジェクトとしてイタルデザインとともに稼働したわけです。

2008年にR35が出ましたが、その初期のデザインスケッチを見るとルーフが低くAピラーも短くなっていました。しかし実物はかなり高くなってしまった。その点に気づいた若いデザイナーが、本来はこうだろうとルーフを低くして、Aピラーを短くしたのです。それだけでもかなりクルマの印象が変わりました。しかしシートを入れてもヘッドルームクリアランスはしっかり確保しています。日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン

また、リアフェンダー周りは“ケンメリ”のイメージを持たせています。つまり、R35だけではなくいろいろなところに過去のGT-Rのオマージュが込められているのですね。ですからまさにベストオブGT-Rといえるでしょう。デザインコンセプトは“The Ultimate GT-R”です。日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン

----:では製造がイタルデザインということですね。

ジャスティン:はい。日産も20年から30年前であれば自ら製造も可能だったかもしれません。しかし、今はコストカットなどでカロッツェリアのようなことが出来なくなってしまいました。このクルマは1台ずつ手作りなので、そこはイタルデザインに任せられたのです。もちろん協業ですので、ここは難しいからこのようにしてはどうかなどイタルデザインからの提案等もあり、そういったことを話し合いながら進めました。

因みにこのクルマには日産の車体番号が打たれています。JN、つまりジャパン日産ですね。しかし、もうひとつ車体番号があり、これはイタルデザインのもので、イタリアの車体番号です。従いまして、これから日本で登録する時は日産ではなくイタルデザインとなり、車検証もイタルデザイン名が記載されます。

ルーフが低くハッチバックタイプのボディ

----:足回り等の変更は行われているのでしょうか。

ジャスティン:全幅も広がっていますので、サスペンションのストロークレシオからスプリングレートなど全て違っています。

これまでのプロトタイプ車はショーカーですので、本当に作れるのかと思った人はたくさんいたでしょう。しかしきちんとテストカーを作り、一般道で走れるようにしています。因みにこのクルマ(展示車)はイタリアのナンバープレートをつけています。日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン

----:このGT-R50 by イタルデザインの特徴を教えてください。

ジャスティン:最大の魅力は他のGT-Rと違い、ルーフの低さです。また、細かいところではヘッドライトはシンプルな作りに見えますが、正面から見ると光っていて上から見ると光が見えないという未来的な印象を与えているところもあります。日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン

またGT-Rのエンブレムも昔のものと現在のものの両方を使っていることも特徴ですね。これでベストオブGT-Rということが簡単にわかるでしょう。日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン

また細かいところでは、ハイマウントストップランプがルーフに取り付けられているのですが、とてもシンプルに出来ています。横から見ると点灯しているようには見えないのですが、真後ろから見るとしっかり光っている。きっと他メーカーも真似をしてくるでしょうね(笑)。日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン

もうひとつ大きな特徴として、GT-Rはクーペタイプでトランクが独立していますが、このクルマはハッチバックタイプです。油圧式可変ウイングの為若干スペースは限られていますが結構深いものが備わっています。日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン

インテリアでは、ドアトリムもグロスかマット仕様などのカーボンが選べます。カーボンに薄いカラーを乗せることも可能です。金属部分も銅やプラチナなど様々なものが選べますし、ルーフライナーはアルカンターラも選べます。日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン日産 GT-R50 by イタルデザイン

----:基本的に選べるのはマテリアル系のカラーのみですね。

ジャスティン:そうです。例えばルーフを切ったりということは出来ません。

----:ボディはフルカーボンですか。

ジャスティン:いえ、フルカーボンではありません。ボンネットやフェンダー等はカーボンですがリアフェンダー等はスチールです。

----:このクルマは左ハンドルですが、ステアリングの位置は全て左なのでしょうか。

ジャスティン。両方選べます。日本からのオーダーは現在半々ですね。

メンテナンスは日産パフォーマンスセンターで

----:製造はイタルデザインで行われ、日本の業務(輸入代行や車検取得など)はエスシーアイですね。その後の整備、メンテナンスはどのようになりますか。

ジャスティン:基本はニスモGT-Rと同じなので、日産ディーラーのパフォーマンスセンターにおいてエンジンやミッション、足回りの整備は可能です。そういったところに関して我々はノータッチです。

しかし事故が起きた場合などは、イタリアに送り返すことも含めて我々が対応し、また、保証やリコール等の対応も我々が行います。

----:全生産台数は50台ですね。

ジャスティン:そうです。現在まだあと数台残っています。

----:日本で正式に発売を開始したのはいつですか。

ジャスティン:発売したのは去年です。ハンドビルドでワンオフのクルマですので、本当はイタルデザインからデザイナーがお客様の家まで来て、iPadなどでこの部分は何色にするか、カーボンはどのように見せるかなど、細かく仕様を決めていく予定でした。しかし、新型コロナウイルスの影響で、イタリアから来日することが出来ませんでした。そこでそういったことも我々の仕事となり、ウェブミーティングなどで日本中のお客様に対応しています。

お客様の中には、ショーカーのままで良いという方から、日産の歴史にまつわるレースカーのようなカラーリングを望む方まで様々です。まずはiPadでラフデザインを作り、その後CADで3Dデータが送られてきて確認をしていく流れです。

生産枠が取れ次第抽選販売

----:現在の日本での販売方法を教えてください。

エスシーアイ/GT-R50プロジェクトGT-R専任営業マネージャーの新開厚之さん(以下敬称略):我々が販売に携わる以前は、日産の協力のもと、日本のお客様とイタルデザインで直接オーダーという形で進めていました。しかし、実際に日本への輸入業務、つまりナンバーをつけたりする業務に関しては日産社内でも出来るようですが、少々商品特性上難しいところもあり、縁があって我々が行うことが決まりました。

現在我々が販売するようになってからは生産枠が取れ次第、抽選販売を行っています。ある一定期間、例えば昨年のオートサロンへの出展や、今回のように日産クロッシングでの展示などをすると問い合わせがある程度集約しますので、その翌月などに現在我々が確保している生産枠を抽選販売する形を取っています。

----:50台の生産ですから、最初に枠を決めるということはしなかったのですか。

新開:当初はかなり大きな市場として中国を見ていたのですが、新型コロナウイルスの影響でなかなかプロモーションが進まず、その市場へ行くはずだったクルマを我々で販売出来るのであればということで、都度分けてもらっている状況です。

----:そうするとある程度国ごとに分けてあって、そこで厳しい台数に関しては改めて振り分けられているということですか。

新開:中国市場も手放したということではなく、実際に動き出してしまえば桁違いな大きな市場ですので、台数はほとんど捌けてしまうでしょう。しかし、そこが動き出す前に半分誕生の地である日本において、購入したいというお客様がいらっしゃるのであれば、出来れば販売したいという話になっているのです。

----:日本には何台ぐらい来る予定なのでしょう。

ジャスティン:正確な台数は発表出来ませんが2桁になるでしょう。ヨーロッパ、アメリカ、日本がほぼイーブンです。あとはミドルイースト、UAEなどが多いようです。

----:納車は既に始まっているのですか。

新開:生産予定が遅延しており、生産自体はこれからです。予定では今回の枠に関しては2月26日を申し込み締め切り日としており、そこから抽選販売します。そのクルマたちは今年の8月以降に生産する予定のものです。

いまのところ年内には早いクルマだと到着が始まるかもしれませんが、それから日本仕様への改善やガス検等の取得手続きを踏んでいきますので、年明け位に納車が始まるでしょう。

----:購入したユーザはどういった人たちなのでしょうか。

ジャスティン:実際にサーキットを走りたいという人から、登録も必要なく自分のコレクションに加えたいという人まで様々です。

新開:保守的なお客様では、自分でずっと所有して子供にこのクルマを譲っていきたいという考えを持っていたり、あるいは法人の場合は、このクルマを会社所有の博物館などに展示して、他のクラッシックカーやヒストリックカーと同様に現地の人たちに見てもらう機会にしたいという方たちもいます。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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