【池原照雄の単眼複眼】今期折り返しの業績は明暗…トヨタなど4社が通期予想を上方修正

第2四半期決算を発表する豊田章男社長(オンライン会見から)
  • 第2四半期決算を発表する豊田章男社長(オンライン会見から)
  • トヨタ・ハリアー新型(写真はハイブリッド)
  • ホンダCR-V(中国仕様)
  • スバル・レヴォーグ新型と中村社長

米中好調のトヨタとホンダは販売減を2割に抑制

トヨタ自動車など乗用車7社の今期第2四半期(4~9月)累計業績が11月12日までに出揃った。コロナ禍で先の見えないスタートとなった今期だが、4社が黒字を確保し、赤字予想企業を含む4社が通期予想を上方修正するなど確かな回復を引き寄せてきた。一方で赤字3社のうち2社は、通期の見通しを上向きに修正するに至らず、明暗を分ける動きとなっている。

業績回復を支えているのは世界1、2位の新車市場である中国と米国だ。中国は今期スタートの4月に前年同月比でプラスに転じ、以降も連続で増加を維持している。米国はコロナの感染者数が最も多いものの、9月にはようやくプラスになった。元々、両市場で強みをもっている企業の販売や業績の回復が明瞭だ。

通期予想を上方修正した3社の第2四半期グローバル販売実績を見ると、トヨタとホンダが20%減、またスバルは28%減となった。トヨタとホンダは米中で、スバルは米国で強さを発揮している。これに対し、赤字の三菱自動車の第2四半期実績は回復が遅いアジアを主力とすることもあって最も低調な41%減、日産自動車も三菱自に次ぐ32%減と苦戦した。

◎乗用車7社の21年3月期連結営業利益(単位:億円、%)
企 業 第2四半期  21年3月期 今回の修正
トヨタ 5,199(▲63)1兆3,000(▲46)上方
ホンダ1,692(▲64)  4,200(▲34) 上方
日 産▲1,588(-) ▲3,400(-)  上方
スズキ 749(▲37)  1,600(▲26)初公表
スバル 306(▲68)  1,100(▲48)上方
マツダ▲529(-)   ▲400(-) なし
三菱自▲826(-)  ▲1,400(-) なし
*カッコ内は前年同期比増減率、▲はマイナスまたは赤字

トヨタは過去最高ペースの生産続く

ホンダとスバルは第1四半期決算で赤字に陥っていたものの、第2四半期で黒字に転じ、通期予想も修正するなど、市場回復の追い風を一気に収益に取り込んでいる。トヨタは、米中に次ぐ市場規模の日本でも際立った回復力を見せ、商品力や供給力など奥行きの深さを示している。

同社は、不透明感が支配した今年5月時点で唯一、通期予想を「業界のひとつの道しるべ」(豊田章男社長)として提示した。それが営業利益5000億円だったが、第2四半期(5199億円)でクリアし、通期予想は2.6倍の1兆3000億円に修正した。SUVを中心とする新モデル効果もあって内外で多くのバックオーダーを抱えており、今後の生産回復が課題となる。

トヨタは生産が低迷していた4~5月に、国内工場で「日量50台の生産を増やせるよう改善を図り、人員を増員せずに増産できるようになった」(豊田社長)という。回復期の機会を逃さない体制につなげており、9月にはグローバルの生産が月次で過去最高になった。来年初めまでの生産も過去最高ペースの計画を組んでおり、順調に進めば業績上ぶれも期待できる。

絶好調という感覚はなく不透明さ続く

黒字企業ではスズキの業績回復も著しい。第1四半期の営業利益は13億円とかろうじて水面上にあったが、第2四半期では749億円に回復、インド市場の不透明さから公表を見送ってきた通期予想(1600億円)も初めて提示した。

同社の場合、販売のほぼ半数を依存するインド市場の動向で業績が大ぶれする。4月には現地の販売がゼロとなったものの、7~9月期は前年同期を20%上回っており、決算会見では「インド(への依存)があって良かった」(鈴木俊宏社長)と言わしめた。

下期の展開は、欧米でコロナの感染拡大が春以来の規模に膨らむなど不安定要素も少なくなく、各社とも警戒を続ける構えだ。足元の米国市場を「想定以上の回復」(中村知美社長)というスバルも「日本から米国を見る感覚とは異なり、現地では絶好調という感覚はない。現時点で先行きは不透明であり、リスクも抱える」(同)と指摘している。

《池原照雄》

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