【ダイハツ ロッキー 450km試乗】「これ1台でOK」を実現した低価格&普通車SUV、売れるのも道理だ

凹凸の大きな箇所ではではサスペンションストロークの小ささが気になるものの、未舗装路も結構いけるダイハツロッキー
  • 凹凸の大きな箇所ではではサスペンションストロークの小ささが気になるものの、未舗装路も結構いけるダイハツロッキー
  • ダイハツ ロッキー「X」FWDのフロントビュー。
  • ダイハツ ロッキー「X」FWDのリアビュー。
  • ダイハツ ロッキー「X」FWDのサイドビュー。
  • フロントフェイス。OEM供給先のトヨタ『ライズ』とは顔の印象が結構異なる。
  • テールエンド。小さいクルマだが小さく見せない、なかなか巧みなデザインだった。
  • ロッキーのエンブレム。
  • 少し下からあおって撮ってみた。かなり張り出しの強いデザインであることがわかる。

ダイハツのミニSUV『ロッキー』で450kmほどショートツーリングを行う機会があったので、インプレッションをお届けする。

ロッキーは全長4m級の5ナンバーサイズミニSUVである。大きさ的にはBセグメントだが、ダイハツ開発陣はAセグメントの認識。軽自動車用の新世代アーキテクチャ「DNGA」を使うことで短期間、低コストで開発したのが特徴。

最も安価な「L」グレード・FWD(前輪駆動)の消費税込み価格は170万5000円、運転席に高さ調節機構が付いた実質最低グレードの「X」FWDで184万8000円と、買いやすい価格に抑えられている。また、ダイハツコネクトというコネクティビティサービスを使えるスマホ連携オーディオも装備できるなど、技術的には結構アップデートな感じである。

ダイハツ ロッキー「X」FWDのフロントビュー。
試乗車は下から2番目のXのFWD。シーケンシャルターンシグナルや先行車、対向車などを避けて照射するアクティブハイビームなどが装備されないシンプル仕様だが、アクティブハイビームはともかく流れるウィンカーなどあってもなくてもクルマの本質はもとより装飾性にもほとんど関係ないというのが個人的な考えなので、むしろ試すには願ったりである。

コースは東京・板橋を起点とした北関東周遊で、群馬の渡良瀬渓谷から日光に抜け、筑波山などをドライブするというもので、総走行距離は450.8km。1~2名乗車、エアコンAUTO。

では、ロッキーの長所と短所を5つずつピックアップしてみよう。

■長所
1. 良路では市街地から高速まで乗り心地が十分に良く、静粛性も案外高い。
2. 軽量車体と応答性の良いCVTのおかげでダッシュ力は思いのほか良い。
3. 軽ベースのおかげで室内、荷室とも非常に広い。
4. ダイハツコネクト+スマホナビは好印象。
5. 見切りが良く、小回り性も軽感覚。

■短所
1. LEDヘッドランプの照射範囲が狭く、照射ムラも大きい。
2. 山岳路での安定性は低く、操縦感覚もやや不自然。
3. 道が荒れてくると乗り心地が大きく低下する。
4. シートのフィット感が平凡で長時間ドライブでは疲労蓄積が大きめ。
5. 下り斜面での速度抑制装置などSUVライクな装備は持たない。

これ1台で済ませられる、という価値観

フロントフェイス。OEM供給先のトヨタ『ライズ』とは顔の印象が結構異なる。
ロッキーで1泊2日、450kmのショートツーリングを行ってみたトータルの感想だが、とにかく安値でSUVっぽい新車に乗ってみたいという顧客にとっては、ど真ん中ストライクではないかという感じであった。

車室、荷室ともに広大なのでこれ1台で十分ファミリーカーとして使えるし、小回り性能やボンネットの見切りが非常にいいので取り回しも楽々。パワー感も思ったよりあるし、乗り心地も悪くないし、ほどほどに静か。ダイハツコネクトが使えるディスプレイオーディオを使えば、ショッピングモールの広大な駐車場でクルマをどこに置いたかわからなくなっても場所を教えてくれたりといった便利機能も使える。

クルマとしての性能は軽自動車プラットフォームということもあってか限定的だ。良路では滑らかだが舗装の荒れた山道や老朽化の著しい高速区間などでは乗り心地が顕著に落ち、山岳路では操縦性も若干不自然だ。ディセンドブレーキなどのオフロード装備もXグレードだけでなくシリーズ全体で欠いている。オフロードではサスペンションストロークが短いためサスペンションの追従性は良くなかった。そしてヘッドランプの性能が悪く、真っ暗な山道では走ること自体が恐怖だった。

だが、これらの欠点は平均的なファミリーユースにおいてはほとんど気にされることはないであろう。この手のベーシックなSUVでサスペンションのストローク不足による路面追従性の悪さが気になるようなオフロードを走る人は皆無だろう。増してやディセントブレーキなど使うはずもなし。最低地上高自体は185mmもあるので、積雪路などはこれでもりもり走れるはずだ。ヘッドランプの光量不足や照射範囲の狭さも、照明のある場所ではさしたる問題にはならないだろう。

クルマの商品企画で難しいのは、そのクルマを買うであろう顧客がどんなものを欲しているかを見切ることだ。コストに制約がないのなら高機能・高性能であればあるほどいいに決まっているのだが、それだとクルマが際限なく高くなる。クルマが高くなるようなファクターを全部切り捨て、ちょっとイカツいデザインで実用性は満点という“これ1台”ですませられる普通車SUVを安価に買えることがロッキーの目指した価値。それを実現させるための見切りは見事の一言で、OEMモデルのトヨタ『ライズ』ともども売れるのも道理と思った。

絶対性能的には大したことなくても日常的には十分

ダイハツ ロッキー「X」FWDのサイドビュー。
では、もう少し細かく見ていこう。シャシーは軽自動車ベースというロッキーのサスペンションは、絶対性能的には大したことはない。ボンネットを開けるとストラットタワーのトップはかなり低い位置にあり、SUVだからといってストロークを延長したりといった手術は行われていないことがわかる。最低地上高185mmは基本的に軽自動車とのタイヤの半径差で稼いだものだ。

そんな簡便な作りながら、普段使いについては結構満足のいくチューニングになっている。低中速の市街地走行では乗り心地はわりと良いほうで、低コストなわりにガサガサ感は小さい。高速道路も今回走った関越自動車道の関東平野区間くらいの路盤状況であれば悪くない。

そうでないモデルもあることはあるが、ダイハツ車はおしなべて高速巡航性が意外に良く、前輪が路面を掴む感触に優れている。ロッキーもそうであった。日頃はお買い物や送り迎え、用足しなどで市街地を走り回り、休日はクルマでちょっぴり遠くへお出かけするというパターンなら、不満はほとんど出ないであろう。

少し下からあおって撮ってみた。かなり張り出しの強いデザインであることがわかる。
シャシーのポテンシャル不足が露呈するのは第1に山岳路、第2にラフロード。山岳路ではロールの安定性が低く、コーナリング中にちょっとアンジュレーション(路面のうねり)や段差舗装があるとぐらつきが発生する。重心の高いSUVとはいえ、もう少し安定させてほしいところ。

その性能不足を車両安定装置で補おうとしているのが頻々と感じられたが、その制御の介入がいまひとつナチュラルでなく、アンダーステアの予想に対して鼻先がコーナーのイン側に引っ張られるような、ヨー過剰の傾向があった。軽量車体のおかげでコーナリングスピードは結構速いが、緊急回避などは少し苦手かもしれない。

もう一点はラフロード。こちらはサスペンションのストロークが短いことがネックで、うねりが少し大きくなるとしなやかな動きにならず、揺すられ感が出る。ただし、最低地上高自体は185mmあるので、未舗装路でフロアパンやボディ底面を擦るリスクは通常の乗用車に比べてずっと低い。

日本ではラフロード走行といえば4x4というイメージが強いが、ロッキーでロック(岩場)やマッド(泥濘路)にチャレンジしようという人はいるまい。雪道はともかくグラベルやダート程度ならFWDでも十分で、何より大事なのは最低地上高だ。ショートストロークのネガが出ないようゆっくり走れば、山奥の林道くらいは十分行けると感じられた。

最低地上高に余裕があり、少々悪い程度の道ならフロアなどを擦る心配はなかった。

実用燃費で20km/リットルも

パワートレインは98ps/140Nm(14.3kgm)の1リットル3気筒ターボ+CVT。エンジンのほうは直噴でも何でもない普通のターボだが、CVTは低回転でのクルーズ時にベルト駆動ではなく損失の少ないギア駆動をするという新鋭ユニット。そのCVTのレスポンスの良さと車検証記載重量970kgという軽さのおかげか、なかなか速い。今回は0-100km/h加速タイムなどを測る機会がなかったが、タイム的にも悪くないものと推察された。

燃費は状況次第だが、総じて悪くなかった。燃費計測区間は429.7kmで給油量は22.10リットル、満タン法による実測燃費は19.4km/リットルとなった。山岳路がなければ20km/リットルラインは十分に超えられただろう。ステージごとの燃費は測っていないが、燃費計の推移から類推して平地の郊外や高速では20km/リットル強、市街地も混雑時は15kmを割り込むが、そうでなければ上手く走れば17、8km/リットルくらいは行くという感じであった。

全長4m以内のSUVとしてはかなり広い室内

前席まわり。
次に室内だが、エンジンルームがコンパクトな軽自動車ベースであることがプラスに作用して、スペース的には全長4m以内のSUVとしてはこのうえなく広い。運転席のポジションを適正に取っても後席の膝元空間は余裕たっぷりで、窮屈さは皆無。後席はシートスライドを持たないが、そもそも必要性を感じないくらいのゆとりだった。

居住区のスペースをそれだけ広々と確保しながら、荷室も十分に広いのも特徴。キャビン/ラゲッジの配分の良さで高評価を受けているSUVとして、1クラス上のホンダ『ヴェゼル』がある。開発陣がそのヴェゼルの比率を手本にしたというだけあって、ユーティリティはモロにミニヴェゼルという感じだった。

荷室容量は369リットルで、それとは別に床下にもサブトランクスペースが確保されている。奥行きはそれほどでもないが深さがあり、長期旅行用大型トランクを重ね積みで2個、さらに小型キャリーやボストンバッグを相当量積めそうだった。

荷室は大容量。奥行きはないが深さがあり、大型トランクを複数積み込むことができるだけのキャパシティ。
ダイハツコネクト機能が使えるディスプレイオーディオは、その豊富な機能を全部試すにはとても至らなかったが、基本的には非常に満足度が高かった。カーナビは普段使いのスマホのナビ画面をセンタークラスタのディスプレイに表示可能。操作は使い慣れたスマホでやるように、音声認識でやれば事足りる。

それ以外の操作もボイスによるコマンド起動(筆者の場合はOK Google)ででき、手を触れなくても何でもできる。クルマに乗っているときしか使わない車載端末より24時間自分の生活に密着しているスマホのほうが、本質的には断然使いやすい。

カーナビについては道の検索や複数ルートの選択など、クルマを動かすことの本質を知るカーメーカーやナビメーカーの独自の工夫のほうが優れている部分もあるが、そのアドバンテージもスマホナビの今後の進化ですぐに詰まってくるだろう。それをミラーリングできるディスプレイオーディオを使ってみて、ナビ専用機よりこっちのほうが全然いいとあらためて思った次第だった。

スマホナビをミラーリング表示できるディスプレイオーディオ。車載機としてもスマホのほうが使いやすい時代がすでに到来しつつあることを実感した。

最大の不満点はヘッドランプ

安全装備はダイハツの「スマートアシストIII」。ステアリング介入なしの、今どきのクルマとしてはそれほど高機能ではないタイプだが、いざというときの被害軽減には役立つであろう。上級グレードでは先行車追従クルーズコントロールが装備されているが、Xグレードは未装備。筆者はクルーズコントロールを多用するほうではないので気にならなかった。

ヘッドランプは上級グレードがアクティブハイビームであるのに対して、Xグレードはシンプルなハイ/ロービーム自動切換え式だが、それでもないよりは断然便利だ。残念なのは機能性ではなく、ヘッドランプの性能自体。配光特性が良くないうえに照射ムラも大きかった。それに気が付いたのは群馬の足尾から日光へと抜けたとき。

ヘッドランプは照射ムラが大きく、光量は不足気味、さらに配光特性が悪く、夜間の山道では恐怖すら覚えた。ロッキーの中で唯一、これはダメと言える部分だった。
ここは現在、日足トンネルという通りやすい道ができているのだが、ちょっと夜の山道を体感しておくかと、旧国道122号線の細尾峠越えルートを走ってみた。照明がまったくない漆黒の闇であるうえ、路盤の傷みが激しく、さらに落木、落石が多数あるので、先が見えないと先に進むどころの騒ぎではない。路肩方向への配光がまったく足りなかったため、コーナリングでは15km/hまでスピードを落とし、それでもなおビビりながら走った。

上級グレードのアクティブハイビームならもう少しマシであろうが、普通のヘッドランプでも素晴らしいものはいくらでもある。ロッキーの平均的な顧客はこんな暗闇の道は滅多に走らないのだろうが、やはりもっとしっかり作ってほしいところである。このライティングシステムがロッキーの最大の不満点だった。

まとめ

ダイハツ ロッキー「X」FWD。
ロッキーはライトや山岳路でのハンドリングなど不満点も少なからずあるが、それでも使い勝手や平坦路の乗り心地をはじめ、ファミリーカーとしての普段使いではほとんど不満のない仕立てであった。トールワゴンに比べるとさすがに収容力は劣るものの、これだけファミリーカーとして使えるのなら面白そうだからこっちにしてみようかなと顧客に思わせるだけの商品力をしっかり持ち合わせていた。

視界も結構SUVっぽく、ドライバー視点もそこそこ高いなど、普通のクルマに飽きたベーシックカークラスの顧客にモロ刺さりする魅力もあるので、冒険的なドライブや極端なロングドライブをしないのであれば、長年飽きずに満足して使うことができそうな気がした。

ミニSUVという観点での直接的なライバルは何といってもスズキ『クロスビー』であろう。新興国向けAセグメントミニカー用のプラットフォームを用いたサスペンションストロークの短いムード派ミニSUVという点は似ているのだが、車体はロッキーよりずっと短く、荷室は後席シートスライドを使っても狭い。実用性ではロッキーの圧勝だろう。

一方でパワートレインはマイルドハイブリッド+6速有段ATと、ヨーロッパライクな仕様だ。実際に使うことは稀だろうが、下り急勾配での速度抑制装置もついている。差し色を多用したインテリアは非常にポップで明るい。所帯じみていないというキャラクターは、それはそれで存在価値がある。

実用派ファッションSUVとして見ると、もっと上のクラスを食うポテンシャルもある。開発陣が手本として挙げたホンダ・ヴェゼルなどにとっては、似たような商品性でもっと価格の安いロッキーはアッパークラスイーターとして脅威であろう。トヨタ『C-HR』がトヨタ版のライズに食われるなどということもあろう。

一方で、ロッキーのほうが防衛側に回るのは軽クロスオーバーSUV相手だ。6月に発売された同じダイハツの『タフト』はグラストップが標準装備であるなど、ロッキーともまた違う付加価値の出し方で攻めてきている。第2世代に切り替わったスズキ『ハスラー』も商品力は高く、新車効果の落ち付きとともに競合が目立つようになるだろう。

ダイハツ ロッキー「X」FWD。

《井元康一郎》

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