国交省「MaaS関連データのガイドライン」の留意点まとめ…モビリティジャーナリスト 楠田悦子氏

国交省「MaaS関連データ検討会」

国交省が「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」を2019年度内にとりまとめようと動いている。

高齢者や観光客の移動問題を解決策として、日本でも注目されているMaaS。スマートフォンなどのインターフェースを使って、プラットフォームに鉄道、バス、タクシーさらには自動運転などの移動に関するデータを集めて、ユーザーニーズに対してサービスを提供する概念だ。そのため「MaaSアプリ」「MaaSプラットフォーマー」「MaaSオペレーター」「オープンデータ」「オープンAPI」といった言葉が着目されている。これらに関連する検討会として、2019年9月からはじめた国交省の「MaaS関連データ検討会」は注目されている。

楠田氏は、 3月25日開催セミナー「CASE・MaaSの最前線」に登壇し、MaaS関連データの連携に関するガイドラインついて解説する。セミナーはオンラインでも開催する。

日本固有の課題

MaaSのデータ関連について、一般的に多く人が関心を寄せていることは、オープンデータ(特定のデータが、すべての人が望むように利用・再掲載できるアイディア)の行方だろう。MaaS先進国フィンランドでは、オープンデータやオープンAPIを義務づける「輸送サービスに関する法律」を段階的に施行するなど、オープンデータは、世界的な潮流だからだ。

しかし、交通事業者にとっては耳の痛い話でもある。フィンランドなどの欧州では公共セクターが公共交通を担う一方で、日本は民間が担い企業活動として運行させている違いがある。

そのため、日本の民間企業の多くは、自社でシステムを購入し、自社の事業用にシステムを組んでおり、社外へ出す目的で作っていない。社外へ出すためには、システムを変えたり、他社とフォーマットを合わせる必要もあるだろうし、そのコストもかかる。

またバス業界など小規模事業者では、GTFSをベースとした標準的なバス情報フォーマットを活用してデジタル化しつつあるものの、デジタルデータ活用に対して縁遠い会社も少なくない。

このように、日本におけるMaaSを検討するためには、日本の実情に合わせて、中長期的な視野で粘り強く取組む姿勢が問われる。

ステークホルダーも出席して議論

国交省の「MaaS関連データ検討会」は、国内でMaaSの事例が私鉄を中心に出始めた頃に開催された。上記の日本独自の実情を踏まえながら、MaaSの取組みが全国的にいっそう広まる前にある一定のルールや方向性を出す必要性があると判断されたからだ。

検討会の委員は、MaaSの国内の第一人者である日高洋祐・MaaS Tech Japan 代表取締役、データ連携などが先行して進んでいるフィンテック関係も専門とする落合孝文・渥美坂井法律事務所弁護士などで構成され、スマートシティなどとの兼ね合いもあるため座長はその第一人者である越塚登氏・東京大学大学院情報学環教授が務めた。

またオブザーバーとして、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)、小田急電鉄、東急、日本バス協会、全国ハイヤー・タクシー連合会など鉄道、バス、タクシー、レンタカー、旅客船、航空を代表する企業や業界団体が出席。東急、小田急、WILLER、高松市など実際にMaaSを推進する企業や自治体などの事例をベースに議論が行われた。

ガイドラインとして留意点をまとめる

上記の欧州と異なる公共交通の実情があるため、MaaSのデータ関連についてどのようにまとめるかが、検討会に委員として出席した筆者が注目した点だ。

国交省は、これからMaaSに取組もうとする者や、すでにMaaSに取組んでいる者に対して、データ連携を円滑にそして安全に行うための”留意すべき項目を整理”しガイドラインとしてまとめることとした。

つまり、国交省は留意点にとどめ、ある特定のデータや事業者に対して、オープンデータ化を義務づけるような姿勢ではないとしたわけだ。オープンデータ化を期待する人は残念に思っただろうが、MaaS推進を減退させることにもなりかねない交通事業者の反発は抑えることができたのではないだろうか。またルールで縛らず、市場にゆだねられたとも解釈できる。留意点をまとめる整理の方法は、現時点での実情を踏まえた適切な策ではないだろうか。

ガイドラインに記されたこと

「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」は、内閣府などでまとめるSociety5.0実現に向けたスマートシティのリファレンスアーキテクチャモデルをもとに、MaaSにおけるレイヤーごと(戦略・政策、ルール、組織、ビジネス、機能、データ、データ連携、アセット)に留意点が整理された。

MaaS関連データについては、想定される公共交通関連データ、MaaS予約・決済データ、移動関連データ、関連分野データ(生活・観光サービス、道路・インフラ、車両位置など)を列挙し、MaaS基盤データに必要なもの、協調的データとすることが望ましいデータなどに分類された。

今後のガイドラインの活用

今後は国の予算を使ってMaaSに取組む場合は、このガイドラインの活用が求められるだろう。また動きの早いデジタル技術にともない、ガイドラインの見直しも行われることだろう。

このガイドラインは、先行的にMaaSを行った企業の事例をもとに作られている。今後はこの事例から導かれた、よきMaaSのつくり方を示したこのガイドラインをもとに、後発のMaaSが日本全国に数多く誕生し、暮らしや観光の移動の質がより一層高まることを期待したい。

楠田氏が登壇する3月25日開催セミナー「CASE・MaaSの最前線」はこちらから(オンラインセミナーも開催)。

《楠田悦子》

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