パイオニアがメカレスLiDARによる自動運転試乗を実施、2020年量産化に向け…ITS世界会議2019

パイオニアは3D-LIDARでITS世界会議2019に参加。車両は自動運転のソフトウェアを開発するベンチャー企業「Moovita」とシンガポールの公共機関「SMRT」と協業した
  • パイオニアは3D-LIDARでITS世界会議2019に参加。車両は自動運転のソフトウェアを開発するベンチャー企業「Moovita」とシンガポールの公共機関「SMRT」と協業した
  • 前方左右に取り付けたパイオニア製3D-LIDAR「準広角タイプ」
  • 前方中央には中距離用のパイオニア製3D-LIDAR「標準タイプ」を設置
  • リア側にはパイオニア製3D-LIDAR「準広角タイプ」を1台設置した
  • 路側と車両のリフレクターを区別するには複数の画像から判別する。そのためにもソフトウェアの重要性は高まっているという
  • 2018年モデルと2020年モデルの性能比較
  • ITS世界会議でデモ走行していたシャトル。モニターを見ながら動作状態が確認できた
  • 歩行者を検知するとその動き合わせた制御が行われた

パイオニアは10月1日、自動運転関連の新たな事業会社「パイオニア・スマートセンシングイノベーションズ」を設立。シンガポールの自動運転技術開発企業MooVita社とともに、パイオニア製「3D-LiDAR」を搭載した自動運転シャトルバスをITS世界会議2019で公開した。

「3D-LiDAR」は、放出したレーザー光で対象物までの距離を測定し、遠方や周辺の状況をリアルタイムで立体的に把握でき、その特性は自動運転レベル3以上で貢献することで知られる。ただ、これまで主流となっていたのはレーザー光でスキャンするのに回転部があったため、小型化が難しく耐久性に乏しいという弱点があった。そこで新たな流れとなっているのが、その弱点を克服するためにレーザー光の走査に可動部を持たなくした“メカレス”LiDARである。

パイオニアが開発するのはこの中でも駆動部のないMEMSミラーを用いたラスタースキャン方式で、長距離測定用の「望遠タイプ」、中距離用の「標準タイプ」、近距離用の「準広角タイプ」の3種類をラインナップする。画角は準広角タイプでも最大60°程度だが、用途に合わせて異なるタイプを組み合わせることで使用環境に合わせた設定が可能になるという。そのためにもソフトウェアも合わせて開発し、使い勝手の良い3D-LiDARとして売り込んでいく考えだ。

パイオニアは開発当初よりMEMSミラーで走査するタイプにこだわってきた。その理由は、小型化と耐久性だけでなくコスト面でも明らかに有利だからだ。量産が進んでいない現状ではまだコスト面での優位性はないが、パイオニア・スマートセンシングイノベーションズ代表取締役社長の高木晴彦氏によれば「製品化の目標は2020年後半。当初は小規模な生産でスタートするが、早い時期に量産体制を整えて100米ドルで提供し、コスト競争力を発揮できるようにしたい」と述べた。

2020年の量産に向けて特に力を入れるのがセンサーの能力アップだ。2018年モデルでは「望遠タイプ」での測距範囲が画角15°で118mだったが、2020年モデルでは画角をそのままに168mにまで大幅に拡大。「標準タイプ」では画角30°のままで48mが80mへ、「準広角タイプ」で画角60°のままで25mが50mへと広げられることになっている。また、複数のレンズを組み合わせることで360°検知を可能にするLiDARの開発にも取り組んでいるという。さらにパイオニアはLiDARの需要を探る目的で、シンガポール科学技術研究庁からスンアウトしたベンチャー企業「MooVita Pte」と協業。現在は5台の実験車両が運用中だという。

ITS世界会議2019では、さらにシンガポールの公共交通事業者SMRT Corporationも参加したデモ走行を実施。10人ほどが乗車できるシャトルを使い、試乗会場として用意されたザ・フロートマリーナベイを高精度マップの下で走行した。コース上には緊急停止している車両や歩行者が準備され、信号機に対しても自動認識して走行をコントロール。今後はシンガポールの高等教育機関「ニーアン・ポリテクニック」の構内で実証実験を経て、製品の完成度を高めていく。

《会田肇》

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