水に浮いて移動できるEV、FOMMを2020年春に日本導入…東京モーターショー2019

FOMMの鶴巻日出夫社長と『FOMM One』
  • FOMMの鶴巻日出夫社長と『FOMM One』
  • タイで『FOMM One』が水に浮いている映像
  • 『AWD SPORTS Concept』
  • 『AWD SPORTS Concept』のコックピット
  • FOMMのブース

「東京モーターショー2019」では、多くの企業からさまざまな電気自動車(EV)が展示された。その中で、水に浮いて水面を移動できるEVを展示したのが、神奈川県川崎市に本社を構えるFOMM(フォム)というベンチャー企業だ。

社長は鶴巻日出夫氏で、1982年スズキに入社し、二輪車のエンジンから車体まで多岐にわたる設計を担当。97年にアラコに移り、一人乗りEV『コムス』などの開発に携わり、その後のトヨタ車体でも新型コムスの企画・開発に従事。トヨタ自動車のパーソナルモビリティ『i-unit』の開発にも携わったという。

2012年にはSIM-Driveで超小型EV の東南アジア展開を企画し、13年に超小型EVの実現を目指すためにFOMMを設立した。そして、翌14年に世界最小クラスの4人乗り小型モビリティの自社開発に成功。前輪駆動のインホイールモーターを採用するなど、内部機構を徹底的に省スペース化したことによって実現した。それが水に浮いて水面を移動できるEV『FOMM One』だったわけだ。

でも、なぜEVが水に浮いて水面を移動できるのか。それは車台がバスタブのようになっていて水に浮く構造になっていること。そして、前輪駆動のインホイールモーターが前方の水を吸い込み、後方にはき出して推進力を得ているからだ。そのうえ、オートバイのように手でアクセル操作をし、足でブレーキの操作を行うので、踏み間違いが起こらないという。

しかし、国内では規制などの問題からなかなか量産化できなかった。そこで海外で生産することを決断し、雨期に洪水が頻発するタイのプラユット・チャンオーチャー首相に直談判。同国で走行できる認可を得て、2019年3月から量産化を始めた。

「5回の試作を重ねて、やっと量産化できるようになり、ようやく200台弱をタイ市場に出したところ。やはり日本人なので日本で走っている姿を見たいので、2020年3月か4月に日本のお客にデリバリーをしようと考えている」と鶴巻社長は話し、「水に浮いて水面を移動する機能はあくまでもエマージェンシー的なもの」と付け加える。ちなみにタイでの価格は日本円にして約220万円だ。

同社のブースにはもう1台EVが展示してある。それは『AWD SPORTS Concept』という2人乗りのスポーツカーだ。ほぼ軽自動車と同じ大きさで、4輪駆動。昨年のタイモーターショーと今年のラスベガスで開催されたCESで、ベストカーの1台に選ばれたそうだ。

「このクルマを見た多くの人から、いつ出るのかと言われているので、早く商品化したいが、なにぶんスタートアップのような企業なので資源が限られている。まずはFOMM Oneを成功させるために全力を傾けたい」と鶴巻社長は話していた。

《山田清志》

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