暴走事故に一手、ボルボの「速度制限」と「パーキングブレーキ」を試した【岩貞るみこの人道車医】

ボルボの制限付きリモートコントロールキー「レッドキー」。車両の速度制限を設定できる。
  • ボルボの制限付きリモートコントロールキー「レッドキー」。車両の速度制限を設定できる。
  • レッドキーはボルボ XC60(写真)のほか、90シリーズ、60シリーズにオプションで設定(2019年10月時点)
  • 速度制限を設定するとメーターに表示が
  • レッドキー
  • ドライバープロファイル画面
  • レッドキーの設定画面
  • 速度警告の設定画面
  • 緊急時、同乗者がパーキングブレーキを作動させることで急ブレーキをかけることができる。

【暴走事故を防ぐ技術】高齢者が起こす交通事故の報道合戦が落ち着いてきたけれど、事故がなくなったわけではないし、今年、立て続けに起きた池袋と福岡の死亡事故は、思い出すたびにつらくなる。

衝突被害軽減ブレーキや、発進時ペダル踏み間違え加速抑制装置がついた、いわゆる「サポカー」は、あの二つの事故防止には“まったく”効果がないことは、以前、このコラムでも書いたとおり。では、いまの自動車技術では、このふたつの事故は防げなかったのか?

池袋と福岡の事故には、共通点がある。ひとつは、速度を上げて暴走したこと。もうひとつは、同乗者がいたこと。つまり、速度を押さえられ、同乗者が対応できる機能がついていれば、この事故をなんとかできた可能性があることになる。

その二つの機能がついているクルマの好例として挙げたいのは、ボルボの『90シリーズ』と『60シリーズ』だ。

レッドキーはボルボ XC60(写真)のほか、90シリーズ、60シリーズにオプションで設定(2019年10月時点)

速度を制限してくれる「レッドキー」

ひとつめは、速度制限。これは、オプションで購入できる「レッドキー」が効果を発揮する。レッドキーとは、その名のとおり赤いキー。本名は制限付きリモートコントロールキー。50km/h~250km/hの範囲で自由に設定できる。今回、その効果を試させてもらった。

レッドキーの設定は、クルマのなかでメインキーといっしょに行う。つまり、レッドキー単体では制限速度の変更ができないため、レッドキー利用者は、設定した制限速度内でしか走れない。

興味深いのは、速度のほか、速度警告、さらに、ステレオの音量とACC作動時の車間距離も設定できること。このレッドキー、もともとは高齢者用ではなく、音量をがんがん上げて、ノリノリで走っちゃう若い世代のために、親が「家のクルマに乗ってもいいから、安全運転しろ!」とわたすための鍵として開発されたわけだ。

レッドキーの設定画面

レッドキーを使って走ってみる。アクセルを踏んでも加速しない状況は怖くないのだろうか。

以前、180km/hまで上げたとたん燃料がカットされてそれ以上速度が出なくなったときは(国産車は最高速度を180km/hに設定してある)、ぶふぉっという空気の抜けたような音とともにタイヤの接地感がなくなる怖さを感じたものだ(テストコースです!)。

そんな不安でばくばくで高速道路に入り、実際に設定した80km/hに到達……したのだが、あら、怖くない。レッドキーは過去に体験した感覚とはまったく違うのだ。単にパワーダウンして、踏んでも前に加速しないだけ。要するに怖さはまったくなく、安定した状態で速度だけ頭打ちするのである。

速度制限を設定するとメーターに表示が
今回は、速度警告音を75km/hに設定してみた。すると、その速度になるたびにリンリンと音が教えてくれる。これが、正直なところかなり、うざい。結果として、その速度にならないように走るようになる(私の場合)。レッドキーは、自ら速度を出さなくなるし、アクセルを踏んでも出ないし、さらに、自分の意思とは別に間違ってアクセルをべた踏みしても速度が出ない。安全に速度を抑えることが可能なのだ。

とはいっても、ボルボの90シリーズや60シリーズは高級だよねという声もある。ただ、2021年からは、音や車間距離の設定はできないけれど、速度制限の「ケア・キー」が全車に標準搭載されるというので期待したい。

同乗者が「パーキングブレーキ」のスイッチを入れる

ふたつめの機能は、同乗者が緊急ブレーキをかけられる技術。

クルマが暴走を始めたとき、同乗者はなにができるのか。これは、ボルボの場合、EPB=エレクトロニック・パーキング・ブレーキが緊急ブレーキになる(90シリーズ、60シリーズと『XC40』)。走行中に、運転席と助手席のあいだにあるパーキングブレーキのスイッチを入れると、緊急停止してくれるのだ。

走行中に、パーキングブレーキをかけると、どういうことになるか。若かりし頃、サイドブレーキをひいて車両が180度向きを変えてあせった身からすると(サイドブレーキ・ターンなんだけど)、怖くてとても走行中のパーキングブレーキを触ろうという気にはならない。

緊急時、同乗者がパーキングブレーキを作動させることで急ブレーキをかけることができる。
けれど、この機能も実際に試してみると、うおお! というほどがっつり止まる。その制動ぶりといったら、助手席の上に置いたバッグが勢いよく前方に転がり落ちるほどだ。

しかも、車両からはガガガとか、ギィイイといったヘンな音は一切せず、ピーピーというやさしい警告音のみが車内に響く。なんて安心。これならいざというとき、躊躇せず使おうという気になる。

速度を押さえられ、同乗者が対応できる機能。このふたつの機能が、もしも池袋と福岡の事故の車両に採用されていたら、事故の結果は違ったと思う。早くこの技術が、多くのクルマに載るようになって、量産効果で価格も安くなって、コンパクトカーにも搭載されるといいのに。心からそう思う。

※現在、レッドキーのような機能は、ボルボしかないけれど、車両ごとに設定できるシステムが採用されているクルマもあり。EPBが緊急ブレーキとして使える車両は、輸入車や国産車の一部に存在する。ただ、緊急ブレーキとして使うときは、路面状況によっては不安定な挙動をすることもあるので、取扱説明書を熟読の上、活用してください!

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

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