世界最大の自動車部品サプライヤーとして知られる独ロバート・ボッシュの日本法人ボッシュは2019年6月25日、東京・渋谷の本社において2018年の業績報告と、今後の成長戦略を含む事業の見通しを説明する記者会見を開催した。
ボッシュ日本、2018年の売上高は前年比10%増の3250億円
この日、登壇したのは代表取締役社長であるクラウス・メーダー氏と、業績に関して説明した取締役副社長のアレクサンドレ・リーステラー氏の2名。
業績報告についてはリーステラー氏が行った。それによると、ボッシュの2018年の日本国内における売上高は3250億円で、前年比の約10%増となった。これは2017年から2年連続で2桁成長を遂げたことになり、日本を含むアジアパシフィック地域の成長は著しく、ボッシュグループ全体でも30%を占める。その原動力となったのはモビリティ・ソリューションズ事業で、主にパワートレイン関連製品、先進安全運転支援分野を含むセーフティーシステム向け製品、ボディエレクトロニクス製品の取引が拡大したのが大きかったようだ。事業報告を行った取締役副社長のアレクサンドレ・リーステラー氏
特に日本のモビリティ・ソリューションズ事業に限れば売上は前年比で11.6%増加となり、日本国内における自動車生産台数の成長率0.4%を大幅に超える。「世界で生産される車の3台に1台が日本の自動車メーカーによって生産されているという事実。これからもわかるように、日本の自動車メーカーは世界市場で強い存在感を持っており、ボッシュとしても日本の自動車メーカーとさらに取引を拡大したいと考えている」(リーステラー氏)とした。なお、この事業以外では中国向けの油圧および電動の産業機器用製品が大きく貢献したとの説明もあった。
事業の主役は次世代レーダーなどADAS関連や電動化
続いて、メーダー社長が今後の業績を左右する日本国内の事業について説明した。
まず説明したのは自動運転に取り組む意義について。「世界では年間120万人が交通事故で命を落としており、これは1秒間に25人が亡くなっていることを示す。インフラが整い、高性能な車両が普及している日本でも昨年は3532人が亡くなった。平均すれば1日に9人が亡くなっている計算。しかし、その90%は人為的な原因によって起きていることがわかっている。ボッシュは自動運転に取り組むのは、この数字を限りなくゼロに近づけるため」とモビリティの自動化に関する事業の意義について言及した。ボッシュ代表取締役社長クラウス・メーダー氏。30%小型化された次世代レーダー(向かって左側)を披露
その中で注目すべきなのがボッシュが年内にも量産する「次世代レーダー」だ。検知可能な距離・角度・高さを拡大させることで、広視野角での検知能力を高めたのが特徴で、機器自体のサイズも従来比で30%小型化されて車両搭載時のレイアウトの自由度も大幅に高められる。さらに次世代のカメラシステムも量産を開始。AI技術を活用することで白線のない環境でも路肩の駐車車両やアスファルト、砂利、草などによる道路の境界を認識することができる。今年はACCが軽自動車にも搭載されるようになったことで、これらの需要はますます高まっていくと見込む。
ステアリング技術では、電気系統に故障が発生しても電動アシストが継続させられる「サーボレクトリック」を開発し、これは自動運転のSAEレベル2から完全自動運転のレベル4/5まで対応できるというもの。すでに日本の自動車メーカーに採用されて量産が開始されている。また、自動バレーパーキングサービスの実現へ向けて、日本では2017年に専門組織を新設。これを応用した構内物流のユースケースとして低速無人搬送の実証実験を開始したところだという。
今後の事業の柱となりそうなのが電動化である。特に48Vハイブリッドシステム用コンポーネントは電動化を促進するのに大きな役割を果たしそうで、2030年には新たに全世界で生産される新車の26%に搭載されるとボッシュは予測。2019年後半にも日本の自動車メーカーから発売される予定の新型車に、ボッシュ製品が搭載されることが決まっている。また、ボッシュの電動化ビジネスの牽引役としてもうひとつの重要なコンポーネント「eAxle」の量産も年内に開始予定だ。モーター、インバーター、トランスミッションが一体化された電動アクスルで、これらの一体化によってパワートレインの効率が向上と低コスト化も実現。ボッシュはeAxleだけで数十億ユーロレベルの売上を見込む。
「パーフェクトリー キーレス」を日本初公開
この日、日本初公開となったのがスマートフォンを使った、安全性の高いキーレス エントリーシステム「パーフェクトリーキーレス」だ。Bluetoothを使って車両と交信することでスマートフォンを使ってキーレスエントリーを実現する。カーシェアリングやドライバーレスの配車サービスにより、日本が抱える交通問題の解決に重要な役割を果たす可能性があるという。最近はリレーアタックによる車両盗難が問題になっているが、従来のキーレス エントリーシステムができなかった安全性と利便性の両立を実現した。2021年には同システムを実装した新型車が発売されることも明らかにされた。