【マツダ 3 / アクセラ 新型】「ボンネットを低くするために、開発をやり直した」 開発主査インタビュー

マツダ 商品本部 別府耕太主査
  • マツダ 商品本部 別府耕太主査
  • マツダ 商品本部 別府耕太主査(右)とデザイン本部 土田康剛チーフデザイナー(左)
  • 新型 マツダ3 セダン
  • マツダ3/アクセラ・セダン 新型
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ロサンゼルスモーターショー2018でベールを脱いだ新型『マツダ3』。日本では『アクセラ』に相当するこの新型車はマツダのなかでも最量販車種の座を争う基幹モデルといえる存在で、会社の勢いすら左右する1台だ。

また、プラットフォームなどが刷新され、マツダの次の世代を担う技術の数々を初採用するモデルでもある。そんな新型マツダ3の開発をまとめた主査の別府耕太氏に話を聞いた。

ハッチバックやセダンは実用性も譲れない

マツダ3/アクセラ・セダン 新型

----:美しいデザインです。まずプロポーションがいいですよね。ピラーが後ろに寄り、ボンネットが長く見えるデザインだと気が付きました。

別府耕太氏(以下敬称略):その通りです。現行モデルに比べて、Aピラーは50mmほど下げています。そしてボンネットも約15mm低くしました。開発初期の計画では、ここまでボンネットを低くすることは考えていなかったのです。しかしデザイナーの土田が「プロポーションの進化なくして、新しいマツダ3なし」とこだわって、ここまで実現しました。実は、低いボンネットを実現するために、初期段階で決まりかけたエンジニアリング系を一度やり直しているんですよ。

---:それは、なかなか聞かない話ですね。

別府:普通ははないでしょうね。ボンネットを15mm低くするために、開発が振り出しに戻りましたから。

----:驚きましたが、デザイナーのこだわりを具現化するために設計側でも努力したから実現したと。

別府:そうです。特にフロント周りは、歩行者保護要件などでがんじがらめになるので特に大変でした。たとえばサストップ(ショックアブソーバーを取り付ける上側の部分)はもう設計上、低くすることができません。しかし空間を開けないと歩行者保護要件がクリアできない。だから、取り付けているボルトの位置を工夫して、苦労してボンネットフードがつぶれる空間を作ったんですよ。衝突シミュレーションを繰り返してなんとか方法を見つけました。

----:ハッチバックはキャビンが小さく見えますよね。居住性を多少犠牲にしてでもスタイリングを美しく見せるようなクルマ作りと考えて良いのでしょうか?

別府:小さく見せようとしているのは確かです。しかし、実際の室内は狭くないんですよ。室内空間を犠牲にするのはもうやめたのです。美しく見せるために室内空間を狭める方法をとれば話は早いのですが、それはクーペとかスポーツカーに任せればいい。ハッチバックやセダンはやっぱり実用性も譲れないですよね。だから室内寸法は先代とほぼ同じ水準を確保できるように組み立てました。

----:それは苦労したでしょうね。

別府:そのためにどんな工夫をしたかというと、たとえばAピラーは現行に比べるとかなり細いです。造形を工夫して細くすることで圧迫感をなくしたり、実際の空間を確保するのに役立っています。Aピラーの内部は、外側の鉄板と内装の間に空間があります。その空間をミリ単位で狭くしていったんですよ。同様にいろんなところで稼ぎながら少しずつ室内空間を広げ、先代同等の広さを実現しました。

----:ドアなどのパネルも美しいですね。

別府:実は今回、ハッチバックはドアにプレスラインを入れていないので生産現場での難易度が高い。しかしそれを実現できたのは、あまり飛び道具的な技術はなくてエンジニアとデザイナー、そして生産現場のコラボレーションの賜物です。新しい設備を入れたというわけではなく、みんなの努力で実現しました。

----:その努力とは、具体的には…?

別府:鉄をプレスしてパネルを作るのって、意外に思う人もいるかもしれませんが職人技なんですよ。どれだけ精巧な、図面どおりのプレスの型を作っても、鉄は思い通りに変形してくれるわけではない。成型時に反力がかかってわずかなズレがでてしまう。

----:そういうものなのですね。

別府:それを上手にコントロールすることで、マツダ3の絶妙な面が実現したのです。そのためにデザイナーの土田が、何度も何度も生産現場に通いました。自動車業界で、もっとも生産現場に足しげく通ったデザイナーじゃないでしょうか。

ハッチバックとセダンで別のクルマのようなデザインに

マツダ3/アクセラ 新型

----:ところで、ハッチバックとセダンではかなりデザインの雰囲気が違いますよね。

別府:ユーザーを観察すると、5ドア(ハッチバック)と4ドア(セダン)ではかなり使い方やライフスタイルに違いがあることがわかりました。そこで、ボディタイプによってガラリとデザインを変えて、どちらにも満足してもらえるマツダ3にしようと考えたのです。

----:リアフェンダーの造形も全然違いますしね。

別府:新型マツダ3は、外板ではハッチバックとセダンでほとんど共通部品がありません。共通なのは、ボンネットフードとフロントガラス、そしてシグネチャーグリルやヘッドライトくらいですね。

----:えっ! それだけですか? 本当に?

別府:驚きますよね? 普通はリアドアくらいまで共通にします。現行のアクセラはCピラー付近まで同じですからね。

----:信じられません。フロントフェンダーまでも別?

別府:フロントフェンダーも、ドアも別設計です。フロントフェンダーやドアはプレスラインが違うんですよ。製造のためにプレス型を作る投資が莫大になるので、マネジメント部門とは侃々諤々の議論を重ねました。そして押し切りました。デザイン的にはハッチバックとセダンでまったく違うんです。別のクルマですね。でも、新世代のマツダのクルマ作りを驚いてもらうにはこのくらいやらないと。(上の人間には)「お客様がこう求めていますから」といって、ここまでの差別化を通しました。お客様の声を利用しましたが、嘘は言っていません。

----:そして乗り込むと、上質なインテリアですね。『マツダ6』を超える勢いの作り込みがすごい。

別府:そうなのです。これもマネジメント部門からはかなり怒られましたよ。「コストをかけすぎだ」とか「マツダ3でここまでやると、(より上級の)マツダ6をどうするつもりだ?」と。

----:でも、マツダ3を買う人にとっては嬉しい話ですよね。

別府:そう、それが重要。買う人にとっては「これがマツダ」なんですよ。より上級の車種があるとか、そういうのは会社の事情であってお客様には関係ない。だからマツダ3でも「最高のマツダ」を味わってほしいのです。

新型 マツダ3 セダン

「Mハイブリッド」の「M」が意味するのは?

----:メカニズムの話も伺いましょう。このクルマを語るうえで避けて通れないのが量産車初の燃焼方法を実現した「スカイアクティブX」ですよね。これはどんな人に乗って欲しいですか?

別府:究極の人馬一体、究極の走りを体験したいマツダ上級者に乗ってもらうと、喜んでもらえると思います。アクセルを少し踏んだ時の細かい速度調整の際などにとても忠実に反応するんですよ。そんなシーンで特に気持ちいい。

----:それは楽しみですね。

別府:スカイアクティブXは味わい深くて、マツダの思想を理解して頂いている方には「これがマツダの求めていた味か、ついにここまで来たか」と実感していただけることでしょう。

----:ところでスカイアクティブXに組み合わせるハイブリッドシステムの名称は「Mハイブリッド」ですよね。これは「マイルドハイブリッド」なのですか? それとも「マツダ ハイブリッド」?

別府:思いとしては「マツダのM」です。「マツダ ハイブリッド」をシンプルにした呼び名ですよ。

----:今回、メカニズムやデザイン、そして考え方がいろいろ進化していますよね。その第一弾がマツダ3になった理由はあるんですか?

別府:ふたつの側面があります。ひとつは、ブランドとかビジネスの側面。マツダ3とかアクセラというクルマはマツダの中でエントリーポイント。はじめてマツダ車を買う人や、はじめてクルマを買う人が多く選ぶ“マツダ車の入り口”でもあるのです。だからこそ新しさを積極的に盛り込んでいくというのが一つの考え方。

----:もうひとつは?

別府:精神論ですが(笑)、新しい世代って私たちにとっては「伸るか反るか」なんです。これを失敗すると、私たちマツダの未来はない。どう勝負しようか? と考えた時に、だったら私たちの持っているものをすべて出せる「マツダ3」からはじめようよ、と。デザインも質感も、そして走りも、とにかく持てるものをすべて投入しました。

----:開発主査という立場にのしかかってくるものは大きいですよね。

別府:見てください、私の白髪を。実は、新型マツダ3の開発を始める前は、こんなに白くなかったんですよ(笑)。それだけ本気で取り組んできました。

《工藤貴宏》

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