【池原照雄の単眼複眼】CASEが新たな求心力に…ゴーン後の日産・ルノー・三菱アライアンス

当社やパートナーシップに影響を与える事案ではない

ガバナンスを見直す好機が訪れた

アライアンスを崩す余裕などない

逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者
  • 逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者
  • 1999年3月、日産とルノーが提携。前列向かって左端がゴーン。 (c) Getty Inmages
  • 日産自動車のカルロス・ゴーン社長と三菱自動車工業の益子修会長

当社やパートナーシップに影響を与える事案ではない

自動車産業における21世紀のカリスマ経営者が、金銭をめぐる犯罪容疑で突如の失脚となった。いずれもカルロス・ゴーン容疑者を会長に頂いている日産自動車、仏ルノー、三菱自動車工業のアライアンス3社は、「求心力」の欠如が懸念されている。

しかし、例えば日産の種々の業務オペレーションを取材すると、すでにゴーン依存にはないと実感することが多い。アライアンスにしても、3社が直ちに個々の道を歩む可能性は希薄だ。「CASE」と略される自動車産業のテクノロジーやサービスの変革期にあって、離散するリスクの方が大きく、むしろCASEが3社の新たな求心力になっていくだろう。

19日夜に緊急記者会見を開いた日産の西川廣人社長は、ゴーン容疑者の逮捕について「当社への業務の影響はない。現時点で執行体制を見直すことはない」と、社内外の動揺に先手を打つように冷静な受け止め方を示した。3社アライアンスについても同様で「ルノー、日産、三菱のパートナーシップに何ら影響を与える事案ではない。アライアンスに影響が出ないよう努力していきたい」と、強調した。

ガバナンスを見直す好機が訪れた

ただ、そう簡単ではなく、仏政府が15%を出資して筆頭株主となっているルノーと、そのルノーが43.4%を出資する日産と仏政府の関係は、3年ほど前にギクシャクした経緯がある。

仏政府が自国での雇用や生産活動を強化するため、ルノーと日産の経営統合を画策したのだ。これには日産が猛反発し、交渉を担った西川氏が仏政府から日産の経営には介入しないとの約束を取り付けた。両社の会長を務めるゴーン容疑者が退任すれば、再び、混乱する可能性がないわけではない。

一方で、3社アライアンスの新しいガバナンスの姿については、「ポスト・ゴーン」時代を見据えて模索が始まっていた。ゴーン容疑者は2022年までルノーの会長兼CEOの任期があるが、それまでに新たなアライアンス体制をつくろうと3社で協議を進めていたのだ。当事者の突然の失脚で展開が早まるわけだが、それはむしろ日産をはじめ3社にとって歓迎すべきことだ。激変の時代に、3年も4年もかけて新しいガバナンスを探るなどといった余裕はなかった。

西川社長も「将来に向けては極端に個人に依存していた体制を見直し、持続可能な体制にしたい。その良い機会になるのではないかと見ている」と、タイミングが早まったことに歓迎の意向を示した。また、部品共通化などがもたらすアライアンスのシナジーの成果については、これまで毎年金額で示され、中期目標も掲げられてきた。だが、数字先行の感は否めず、これらについても実質重視での見直しが行われるのではないか。

アライアンスを崩す余裕などない

1999年に日産の経営再建から始まったルノーと日産のアライアンスは、それぞれのブランドで一定の経営の自主性が担保されたことが成果を生んだ。これは、目標を公約に掲げる「コミットメント経営」と並ぶ「ゴーン改革」の柱だった。西川社長は今回、「ゴーン時代の負の側面」が噴出したが、同時にこの19年間にもたらされたもので、「守れるべきものは、守っていきたい」とも指摘した。

3社アライアンスは、最優先で守るべきものといえよう。自動車産業は、巨額の投資や緻密な提携戦略が必要な電動化や自動運転技術、さらにシェアリングなどによる新たなモビリティサービスの加速というCASEの時代に直面している。それは生存をかけた闘いであり、日産はじめ各社に、今のアライアンスの枠組みを崩す余裕などない。それがカリスマ経営者に変わる、3社の新たな求心力となっていく。

《池原照雄》

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