【VW up!GTI 試乗】いい歳したおじさんには、懐かしく痛快な1台…中村孝仁

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VW up!GTI
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ループを抜けて高速本線に合流。6000rpmまで引っ張って4速に。軽く首のあたりを後ろに引っ張られる感触を残して再び加速に入る。車速はあっという間に上限いっぱい。いやいや、こいつは中々痛快な加速感を持つ。クルマは『up!GTI』だ。

車両価格が219万9000円というのも、非常に現実的な気がする。導入は600台の限定だそうだから、ほどなく完売ということになるのだろう。VWは『ゴルフ』を頂点とするGTI3兄弟を、久しぶりにラインナップした。その末弟となるのが、このup!GTIだ。3サイズは全長3625×全幅1650×全高1485mm、ホイールベース2420mmというもの。これ、初代ゴルフ1のGTIと比較すると興味深い。

ゴルフ1時代のGTIは、3サイズ全長3705×全幅1630×全高1395mm、ホイールベース2400mm。ほぼ現代のup!が、初代ゴルフのサイズに匹敵することがわかる。トレッドもほぼ似たようなもので、若干up!の方が大きい。そしてパフォーマンス。

up!GTIが116ps、200Nmであるのに対し、ゴルフGTIは110ps、140Nm。ゴルフ1時代のGTIは正式導入されていなかったから、これに乗ったという人は限られるが、ならばゴルフ2は恐らく多くの人が乗り、その動力性能に魅了されたはずである。そのゴルフ2GTIでも、新しいup!GTIとほぼ互角に近い動力性能しか持たない。だから、今、up!GTIを真剣に走らせると、当時ゴルフGTIで味わったフィーリングが蘇る。だから、いい歳をしたおじさんには、実に懐かしくて痛快に感じられるのかもしれない。

エンジンは高々999ccの3気筒ターボである。初代ゴルフの方が性能的には見劣りするものの、車重では180kgもup!GTIより軽く、この分のアドバンテージを持って、性能的にはほぼ互角といえるのではないだろうか。それでも今のup!GTIだって、ピタリ1000kgなのだから、今風に言えば十分に軽い。

ボディは3ドアハッチバック。そして6速マニュアルのみの設定だ。因みに初代ゴルフGTIも3ドアハッチバックボディだった。というわけで、このクルマこそ、初代ゴルフGTIの直系子孫と言って良いのではないかと思う。

ステアリングコラムにキーシリンダーがあって、そこにキーを差し込むことからしてすでにかなりプリミティブ。いわゆる電子制御であれやこれやといじれる部分は皆無。ただひたすら、マニュアルミッションとクラッチを駆使し、応答性の良いスタリングで御するクルマである。それだけに操る本来の姿を味わえる。

挙動は至って素直で、制限速度が60km/hの一般国道なら発進加速で十分全開に回せる。そして高速道路なら3速あたりまで全開が可能。ワインディングは2速、3速、4速を駆使してスパッ、スパッと軽快な身のこなしを見せてくれる。何よりも、各ギアの繋がり感が良く、日本の道で使うにも非常に良いギアリングの設定だと感じられる。

もちろん、そんなにいつも攻めの気分で走っていたら疲れてしまうから、怠惰に走りたいこともあろう。そんな時は1500rpm程度回っていれば十分にそこからグイグイと加速をしてくれる柔軟さも備えている。如何にも剛性の高そうなアクセル、ブレーキ、クラッチの各ペダルは、若干アクセルとブレーキが離れ気味で、快適にヒール&トゥを決めることが出来ないが、それでも届かない距離ではない。そもそも、最近のクルマはマニュアルでもアクティブブリッピングなる機能が付いていて、ヒール&トゥなどという技は過去のものになりつつあるが、このクルマでは今もこの技を使って痛快に走ることが出来るのだ。

若干重心が高い印象を受けるが、ロールはきっちりと抑えられていて、荷重変化に対しても不安感は残らない。パフォーマンスは使い切れる…という印象である。パワージャンキーな人には、おおよそ物足りなさが残るだろうが、直線を飛ばすだけがクルマの醍醐味ではないことを教えてくれる1台。

とにかく、自分の技量の中で走りの愉しみを存分に得られるクルマとしては、今や貴重な存在であろう。大いに気にいった。スタイルとインテリアの趣味以外は。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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