安全な自動車社会を目指す、ZFの近未来戦略…小型高性能カメラ強みに自動化を推進

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ZFブース(人とくるまのテクノロジー展2018横浜)
  • ZFブース(人とくるまのテクノロジー展2018横浜)
  • ZF 飯田浩喜シニア・エンジニアリング・マネージャー
  • ZFブース(人とくるまのテクノロジー展2018横浜)
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  • ZF アドバンスド・センター・エアバッグ
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ドイツのフリードリヒスハーフェンに本拠を構えるZFは1915年に創業した長い歴史を誇るグローバルサプライヤーだ。トランスミッションメーカーとしてスタートを切ったため、駆動系のサプライヤーとしてのイメージが強い。

もちろん、駆動系やシャシー・テクノロジーの分野では今も世界をリードし続けている。が、21世紀のZFは、アクティブとパッシブ、両方のセーフティ・テクノロジーの分野の研究と開発においても、これまで以上に力を入れるようになった。ZFは最善のソリューションを素早く開発することにより、環境汚染をなくすゼロエミッションの実現など、将来の課題に対応していく。

◆技術分野の知見を活かし、自動化を目指す


先日開催された「人とくるまのテクノロジー展2018横浜」では、ZFが掲げている「見て、考えて、動かす(See-Think-Act)」をテーマに、安全で快適なクルマを生み出すための取り組みを紹介した。効率的なドライブトレインの開発とともに目を引いたのが、事故のない世界と利便性の向上を目指したADAS(先進運転システム)に対する取り組みだ。

ZFグループのアクティブ&パッシブセーフティ・テクノロジー事業部、グローバル・エレクトロニクスの研究と開発を行い、ADAS技術を統括している日本の責任者でもある飯田浩喜シニア・エンジニアリング・マネージャーは、

「現在のZFの方針は、排気ガスや事故の無い「ビジョン・ゼロ」を通じ電動化を積極的に推し進めることです。そのひとつが自動運転。ZFは、見て、検知・認知し、それを判断して動作する“See-Think-Act”をテーマに、クルマを自動化することに向けた研究と開発を行っています。ZFは技術分野の裾野が広く、技術資産もたくさんある会社です。ですから、この技術資産を基にクルマの自動化に向けた開発を行っているのです。

技術者としては、クルマの周辺の情報は見えれば見えるほどいい環境になると思っています。情報が少なかったり、見えていないと何もできません。でも見えていれば、持っている情報を使ったり、そのなかのものを選んでいろいろなことができます」

と、自動化への取り組みについて述べた。

ブースでのプレゼンテーションでは、自動運転技術につながるインテグレーテッドセーフティ(統合型安全)について、パッシブセーフティ分野からの視点で提案を行っている。現在、取り組んでいるのは、より安全なドライビングだ。路上で起こる事故の多くは、ドライバーの不注意が原因となっている。このミスをなくすために、注力しているのが自動運転化の技術だ。センシング技術がさらに高度なものになれば、より安全なクルマを誕生させることが可能になる。

アクティブセーフティというのは、センシングによる自動運転につながる技術だ。が、万一の事故の瞬間にはパッシブセーフティの技術を駆使して、乗員が負傷しないように防ぐのである。この技術をさらに高度なものにしないと、ゼロアクシデントの達成は不可能だ。

自動運転化のレベルが進み、自動運転による制御の範囲が広がれば、運転のためのインターフェイスも変わってくる。当然、よりリラックスした状態で乗るようになるはずだ。ステアリングから手を離すことが可能になるし、同乗者と会話の機会も増えるから、インテリアは今までと違うものになるだろう。インパネはもちろん、ステアリング、シートレイアウト、SRSエアバッグシステムなどは大きく変わる。ZFが提案したのは、どのような姿勢で座っても乗員を保護できる新しい発想のエアバッグシステムだ。ブースにも「アドバンスド・センター・エアバッグ」が展示されていた。

◆“見る”技術を磨き、可能性を広げる


また、ZFが得意とするカメラやセンサーの新しい提案も目を引いた。飯田氏はこれからの展望と期待を下記のように語る。

「ZFは、従来あるActに加え、Seeの分野に力を入れています。そのなかではカメラに強く、これを得意としています。カメラ、レーダー、ライダーと3つありますが、一番の強みはカメラですね。今、もっともニーズが高いのは、前方を見る、検知するカメラですが、これからは横や後方をただ検知するだけではなく『認識する』カメラも需要が多くなると考えています。緊急ブレーキに絶対に必要ですので。

ZFが力を入れているのは、コストの面で有利なモノカメラ、つまり単眼カメラと呼ばれているものです。2015年くらいから量産を開始しています。単眼カメラを使った緊急ブレーキステムは、日本の自動車メーカーにも採用頂いております。単眼カメラでというと、性能が低いと思われる人もいるでしょう。しかし、ひとつのカメラだけで、ZFが掲げる3つのテーマ、すべてを満たすことができます。

私たちが目指しているのは、世界最小のカメラです。参考出品した、このカメラも世界最小だと自負しています。パッケージングで小さいのはクルマに搭載するとき有利です。が、クルマは使用条件が過酷なので、搭載には苦労しますね。強い日光が当たるので、とくに温度と光の入り方には注意を払っています。車内が高温になるのも悩みです。

実績を積んだ単眼カメラに加え、3つのカメラを使ったものも開発を進めています。カメラは見える角度が50度くらいと意外にも範囲が狭いのです。私たちは、見える角度を横方向に2倍、100度まで広げました。3個のカメラを使えば、見える範囲は大きく広がります。しかし、コストアップになるし、処理能力も2段階くらいあげないといけない。当然、熱の問題もあるので、今は徹底的に耐久信頼性のテストを行っています。死の谷と呼ばれているデスバレイに持ち込んで過酷なテストも行いました。車内は高温になるので、カメラ自体の放熱性をいかに抑えるかの設計放熱性に対する設計も大切なのです」。

「Tri-Cam マルチ・レンズ・カメラ」は3つのレンズを使っているが、それぞれに意味がある。隣のカメラは遠くを見るレンズ、もうひとつの大きなものは魚眼レンズのように視野を広げた。このカメラシステムを使えば、1車線だけでなく、複数のレーンの状況を把握することが可能だ。いち早く周囲のクルマの動きを知ることができれば対処しやすいし、Rのきつい回り込んだコーナーも検知し、最適に制御できるようになる。今まで制御するのが難しかった、高速道路のランプの乗り降りも上手にレーンキープすることが可能だという。

「カメラが増えれば、センサーから情報だけを取って判断するようになると思います。これからはパッシブセーフティもアクティブセーフティも変わっていきます。カメラが増えると、取り付けるスペースも増やさないといけないし、一番いい場所に取り付けるので、自動車メーカーとも連携して開発するようになります。ウインドシールドの取り付けられる場所の規制もあるので悩ましいところですが、今後の発展に期待してください。

Actの技術では、バイワイヤリングがさらに推し進められるでしょう。自動運転の時代にはバイワイヤ技術が不可欠。自動運転を進めるというのは、安全技術を極めるということになると思います。安全にしたい、事故をゼロにしたいための手段、それが自動運転技術なのです。いずれは情報が見える時代になると思います」。

ここ数年、ADAS系の技術を採用するクルマが一気に増えた。今後は前だけでなく、横や後方、斜めなどを検知するカメラも追加されるだろう。ZFは100m先、150m先まで正確に検知するだけではなく『認識する』カメラのニーズも増えてくると見ている。カメラの数が多くなれば、画像のチップを入れないでデータを送信するリモートカメラのような形態になることも考えられるだろう。検知能力はレーダーなどに及ばないが、人間を正確に識別できる認識能力に関して大きくリードしているのがカメラの特徴であり魅力だ。まだまだ発展性がある技術なのである。

驚くほど裾野が広く、10年先、20年先を見据えた技術開発を行っているのがZFだ。「人とくるまのテクノロジー展2018横浜」では、その一端を垣間見ることができた。

ZFジャパンのホームページはこちら

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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